現物支給・自家消費の経理処理|家事消費の計上ルールを解説
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税務

自家消費(家事消費)と現物支給は、お金が動かなくても収入として計上が必要です。計上金額は原則として通常の販売価額が基準で、所得税ではおおむね70%以上、消費税の課税事業者では50%以上かつ仕入価額以上が目安になります。
飲食店や小売店、美容室などを営んでいると、自分で仕入れた食材や商品を、つい自分や家族で消費したり、従業員にまかないや商品として渡したりする場面が出てきます。お金のやり取りがないため「特に記帳しなくてもいいのでは」と感じる方も多いのですが、実はこれらは税務上きちんと処理が必要な取引です。
☑ 自分のお店の商品を自分や家族で食べたとき、帳簿にどう書けばよいかわからない
☑ 従業員にまかないや商品を現物で渡したときの経理処理が不安だ
☑ 「家事消費は売上に計上する」と聞いたが、いくらで計上すればよいのか迷っている
ここでは、個人事業主が押さえておきたい「自家消費(家事消費)」と「現物支給」の経理処理を、計上する金額のルールや消費税の扱いも含めて整理します。お金が動かない取引でも帳簿に載せる理由と、具体的な処理方法が見えてくるはずです。
自家消費・家事消費とは何かをまず整理しましょう
「お金が動かない取引」も帳簿に載せる理由
自家消費(家事消費)とは、事業のために仕入れた商品や製品を、事業主自身やその家族が消費することをいいます。たとえば飲食店の店主が自分のお店の料理を食べる、八百屋が売り物の野菜を夕食に使う、といったケースが典型例です。
ここでポイントになるのが、仕入れたときに「仕入」として経費に計上しているという点です。経費に入れたまま自分で消費すると、本来は事業の利益にならないものまで経費として差し引かれ、所得が実際より小さくなってしまいます。これを防ぐため、消費した分を「売上(自家消費)」として収入に計上し、経費との帳尻を合わせる必要があるのです。
現物支給との違い
一方の現物支給は、本来お金で支払うべきものを、商品やサービスなどの「現物」で支払うことをいいます。代表例が、飲食店で従業員に提供する「まかない」や、小売店が従業員に渡す自社商品です。給与の一部や福利厚生として現物を渡している、というイメージです。
自家消費は「事業主本人や家族の消費」、現物支給は「従業員などへの支給」という違いがあります。どちらもお金のやり取りがない取引ですが、計上の仕方や絡んでくる税金が異なるため、分けて理解しておくことが大切です。飲食店や小売店、美容室など「仕入れたものを売る」業種ほど発生しやすく、飲食店の原価と在庫の管理は、飲食店の原価管理もあわせて確認しておくと理解が深まります。仕入れがほとんどないサービス業では論点になりにくい傾向があります。
自家消費はいくらで計上する?金額のルール
原則は「販売価額(通常の売値)」
自家消費を計上する金額は、原則として通常お客様に販売している価額(販売価額)とされています。仕入れた値段ではなく、売っている値段が基準になる、という点がまず大切なポイントです。
たとえば仕入れ300円のお弁当を通常800円で売っているお店で、その弁当を店主が食べた場合、原則は800円を自家消費の売上として計上することになります。「自分で食べただけなのに、売値で計上するのか」と感じるかもしれませんが、これが基本の考え方です。
所得税では「販売価額の70%」までの特例
とはいえ、自分用に消費したものまで満額の売値で計上するのは負担が大きいため、所得税では一定の取り扱いが認められています。具体的には、販売価額のおおむね70%以上の金額で計上していれば、原則として認められるとされています。
つまり、先ほどの800円の弁当であれば、800円×70%=560円で計上しても差し支えない、という考え方です。ただし、その金額が仕入価額(原価)を下回ってしまう場合は、仕入価額で計上する必要があります。「仕入値は割らない」という点だけは押さえておきましょう。
計上金額のまとめと注意点
原則:通常の販売価額で計上する
所得税の取り扱い:販売価額の70%以上であれば認められる
下限:その金額が仕入価額を下回るときは仕入価額で計上する
細かな割合や運用は状況によって変わることがあります。迷ったときは、年間を通じて同じ基準で一貫して処理することを意識しておくと安心です。
具体的な仕訳と帳簿への書き方
自家消費の基本的な仕訳
自家消費は、収入として「家事消費」や「自家消費」といった売上の科目で計上します。お金を受け取っているわけではないので、相手科目には事業主への引き出しを意味する「事業主貸」を使うのが一般的です。
たとえば、販売価額800円の商品を70%の560円で自家消費として計上する場合は、次のようなイメージになります。
借方:事業主貸 560円 / 貸方:家事消費等(売上) 560円
この処理により、自分で消費した分が収入として帳簿に反映され、仕入として経費に入れた分とのバランスが取れます。クラウド会計ソフトには「家事消費」や「自家消費」といった専用の科目が用意されていることが多いので、それを活用すると入力がスムーズです。
まとめて計上するか、その都度計上するか
自家消費は毎回その都度仕訳を起こすのが理想ですが、件数が多いと現実的でない場合もあります。そのため、1か月ごとや1年分をまとめて計上する方法も実務ではよく使われます。「1日1食分を自家消費」とみなし、年間で集計して年末に一括計上する、といった形です。自家消費のような判断に迷う処理まで任せたいときは、記帳代行の活用も選択肢になります。
大切なのは、合理的な基準を決めて毎年同じやり方で続けることです。ある年だけ計上して翌年は計上しない、といった処理は避けましょう。
青色申告決算書・収支内訳書での扱い
自家消費の金額は、最終的に売上(収入)の一部として申告書類に反映されます。青色申告決算書や収支内訳書には「家事消費」を記入する欄があり、通常の売上と区別して記載できます。記帳の段階で科目を分けておけば、決算のときにそのまま転記でき、計上漏れも防ぎやすくなります。
従業員への現物支給(まかない・商品)の処理
まかないは「給与」か「福利厚生費」か
従業員に提供するまかないは、提供の仕方によって給与(現物給与)として扱われるか、福利厚生費として扱われるかが変わります。一定の条件を満たして従業員にも一部負担してもらっている場合などは福利厚生費として処理でき、給与として源泉徴収の対象にしなくてよいケースがあります。食事代を経費にするときの区分は、食事代・会議費・交際費の経費区分が参考になります。
一方、会社(事業)が全額負担して無償で提供しているような場合は、現物給与とみなされ、給与として扱う必要が出てくることがあります。まかないの扱いは条件が細かいため、提供ルールを決める段階で、税理士など専門家に確認しておくと安心です。
従業員に自社商品を渡したとき
従業員に自社の商品を無償または割安で渡した場合も、その経済的な利益が現物給与とみなされることがあります。この場合は、渡した商品の価額を給与として計上し、源泉徴収の対象に含めるかどうかを判断します。取引先や顧客に景品・サンプルを渡したときの経費処理は、景品・サンプルの経費処理で扱っています。全従業員に一律で行うものか、特定の人への支給かによっても扱いが変わるため、支給のルールを明確にしておくことが重要です。
現物支給で気をつけたい記帳のポイント
支給した内容と金額がわかる記録を残す
給与として扱う場合は源泉徴収・年末調整への反映を忘れない
福利厚生費とする場合は、その根拠となる社内ルールを整えておく
現物支給は「お金が動かないから記録しなくてよい」と思われがちですが、後から見て内容を説明できる記録を残しておくことが、税務上のトラブルを避ける一番の備えになります。
消費税が課税事業者の場合の注意点
自家消費・現物支給は消費税の対象になることがある
消費税の課税事業者である場合、自家消費や現物支給は「みなし譲渡」として消費税の課税対象になることがあります。みなし譲渡とは、実際にはお金のやり取りがなくても、商品を販売したものとみなして消費税を計算する仕組みです。消費税の基本的なしくみは、国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」で確認できます。免税事業者の方は基本的にこの論点は関係ありません。
消費税の課税標準の考え方
消費税を計算する際の金額(課税標準)も、原則として通常の販売価額が基準になります。ただし所得税と同様の取り扱いがあり、棚卸資産については販売価額の50%以上、かつ仕入価額以上であれば認められる、といった考え方があります。所得税の70%基準とは割合が異なる点に注意しましょう。
所得税と消費税で基準となる割合が違うため、課税事業者の方は両方を意識して金額を決める必要があります。クラウド会計ソフトの自家消費用の科目を使うと消費税の区分も自動で設定されることが多いので、入力時に確認しておきましょう。
自分の事業区分を確認しておく
まずは、自分が消費税の課税事業者なのか免税事業者なのかを確認しましょう。インボイス制度をきっかけに課税事業者になった方は、これまで気にしていなかった自家消費の消費税についても処理が必要になります。判断に迷う場合は、確定申告のタイミングで専門家に相談しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 自家消費の計上を忘れていた場合、どうすればよいですか?
計上漏れに気づいた場合は、できるだけ早めに修正しましょう。申告期限内であれば正しい内容で申告書を出し直せますし、期限後でも修正申告で対応できます。自家消費は収入の計上漏れにあたるため、放置すると本来より所得を少なく申告していることになります。気づいた時点で早めに対応するのが安心です。
Q. 売れ残って廃棄した商品も自家消費になりますか?
いいえ、廃棄は自家消費にはあたりません。自家消費はあくまで事業主や家族が「消費した」場合の取り扱いです。傷んで売り物にならなくなった商品を廃棄した場合は、自家消費ではなく、別途、廃棄の記録を残して処理します。消費したのか廃棄したのかで扱いが変わるため、混同しないようにしましょう。
Q. 飲食店で毎日まかないを食べていますが、毎回仕訳が必要ですか?
毎回その都度仕訳をする必要はなく、1か月分や1年分をまとめて計上する方法でも問題ありません。たとえば「1日あたりの自家消費額」を決めておき、営業日数を掛けて年間でまとめて計上する、といった方法が実務ではよく使われます。大切なのは、自分なりの基準を決めて毎年一貫した方法で処理することです。
まとめ|お金が動かない取引こそ、ルールを知っておく
自家消費(家事消費)と現物支給は、お金のやり取りがないため見落とされがちですが、仕入として経費に入れた分とのバランスを取るために、きちんと収入として計上する必要があります。計上金額は原則として通常の販売価額が基準で、所得税ではおおむね70%以上、消費税の課税事業者では50%以上かつ仕入価額以上が目安です。従業員へのまかないや商品の現物支給は、給与か福利厚生費かの判断がポイントになります。
とはいえ、自家消費の金額の決め方や消費税の扱い、まかないの判定などは、業種や状況によって細かく変わります。日々の営業をこなしながら、これらを正確に判断して記帳まで行うのは大変な作業です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








