個人事業主に福利厚生費は使える?健康診断や食事代の扱いを解説
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税金

個人事業主の福利厚生費は「従業員のための費用」であり、一人事業主が自分の健康診断や食事代を計上することは原則できません。福利厚生費の基本から、本人分が対象外になる理由、従業員を雇った場合の使い方までを整理します。
会社勤めをしていた頃に「福利厚生」という言葉に親しんだ方ほど、独立後に「自分の健康診断やジム代も経費にできるのでは」と考えることがあるかもしれません。けれども、個人事業主の福利厚生費には、会社員時代とは異なる独特のルールがあります。ここを誤解したまま処理すると、後から経費として認められないこともあります。
☑ 「福利厚生費」という言葉は聞くけれど、個人事業主に関係あるのか分からない
☑ 自分の健康診断や食事代を経費にできるのか気になっている
☑ 従業員を雇ったら、どんな費用を福利厚生費にできるのか知りたい
以下では、個人事業主にとって福利厚生費がどこまで使えるのか、自分自身の健康診断や食事代の扱い、そして従業員を雇った場合の考え方までを、順に整理します。
福利厚生費とはそもそも何か
福利厚生費とは、従業員の健康管理や生活の充実、働きやすい環境づくりのために事業主が負担する費用のことです。あくまで「従業員のための支出」という点がポイントです。
福利厚生費の代表的な例
従業員の健康診断費用
従業員の慰安旅行やレクリエーションの費用
従業員に提供する食事代の一部
慶弔見舞金(結婚祝い・香典など)
「従業員のため」が大前提
福利厚生費は、従業員が複数いる場合に、特定の人だけでなく全員を対象に公平に行われることが前提になります。一部の人だけが受けられる特別な待遇は、福利厚生費ではなく給与とみなされることもあります。この「公平性」という考え方が、福利厚生費を理解するうえでの土台になります。誰のための、どんな目的の支出なのかをまず確認することが、正しい処理への第一歩です。
個人事業主本人には原則として使えない
ここが最も誤解されやすいポイントです。一人で事業を営む個人事業主が、自分自身のために福利厚生費を計上することは、原則としてできません。
なぜ事業主本人は対象外なのか
福利厚生費は「事業主が従業員に対して提供するもの」という性質を持っています。事業主本人は従業員ではないため、自分自身への福利厚生という考え方が成り立ちません。自分への支出は、事業のお金を自分のために使っただけと見られ、経費として認められないのが基本です。自分自身の福利厚生費は計上できませんが、将来への備えは所得控除のある制度を使って進められます。制度の組み合わせ方はフリーランスが将来に備えながら節税する制度の組み合わせ方で解説しています。
従業員がいない場合は特に注意
従業員を雇っていない一人事業主の場合、福利厚生費という費目を使う場面はほとんどありません。「福利厚生費だから経費になる」と安易に考えず、その支出が事業に必要なものかどうかで判断することが大切です。会社員時代の感覚で「福利厚生として処理できるはず」と考えてしまうと、思わぬ誤りにつながることがあるため注意しましょう。
家族を従業員にしている場合
生計を同じくする家族を従業員(専従者)として働いてもらっている場合、その家族への福利厚生費の扱いには独自のルールがあり、必ずしも一般の従業員と同じにはなりません。家族への給与や世帯全体での税負担の考え方は、夫婦で事業と給与がある世帯の手取り最適化と控除の配分も参考になります。家族従業員がいるケースでは判断が複雑になりやすいため、迷ったときは専門家に確認すると安心です。詳しい取り扱いは国税庁サイト等でもご確認ください。
自分の健康診断・食事代はどうなるか
多くの方が気になる、自分自身の健康診断費用や食事代について整理します。
自分の健康診断費用
事業主本人の健康診断費用は、原則として福利厚生費にはできません。健康診断は事業のためというより、本人の健康管理という個人的な支出と考えられるためです。従業員に対して行う健康診断であれば福利厚生費にできますが、本人分は対象外と覚えておきましょう。
自分の食事代
事業主自身の日常的な食事代は、福利厚生費にも経費にもなりません。食事は事業をしていなくても必要なものだからです。ただし、取引先との会食であれば交際費、打ち合わせ時の飲食であれば会議費として扱える場合があります。あくまで「相手がいて、事業に関係する」食事かどうかが分かれ目です。事業のための支出を正しく経費にする考え方は、事業性ローンの利息を経費化する考え方と按分のように、費目ごとに整理して覚えておくと迷いにくくなります。こうした経費になるか迷う支出の判断から申告書の作成まで任せたい場合は、確定申告を代行するサービスに丸ごと預ける方法もあります。
本人の健康診断:原則として経費にならない
本人の日常的な食事:経費にならない
取引先との会食:交際費などになる可能性がある
従業員を雇っている場合の福利厚生費
従業員を雇うと、福利厚生費を活用できる場面が出てきます。働きやすい環境づくりは、人材の定着にもつながります。
福利厚生費にできる主なもの
従業員の健康診断費用、全員参加を前提とした慰安旅行やレクリエーションの費用、一定の条件を満たす食事の補助、慶弔見舞金などが福利厚生費の対象になり得ます。いずれも「従業員全体を対象に、公平に行われる」ことが重要です。こうした取り組みは、単に経費になるというだけでなく、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながり、結果として事業を支える力になります。
給与とみなされないための注意
福利厚生は、現金を直接渡すような形にすると給与とみなされやすくなります。また、一部の人だけを優遇する内容も給与扱いになることがあります。誰もが平等に受けられる仕組みにすること、社会通念上の常識的な範囲に収めることが、福利厚生費として扱うためのポイントです。給与と福利厚生費の区分は年度や内容によって細かく定められているため、最新の取り扱いは国税庁サイト等でご確認ください。
制度として整えておくと安心
福利厚生を行う際は、どのような場合に・誰を対象に・どこまで負担するのかを、あらかじめルールとして決めておくと安心です。口約束やその場の判断で行うよりも、内容を整理しておくことで、従業員にとっても分かりやすく、後から説明を求められた際にも対応しやすくなります。無理のない範囲で、続けられる仕組みにすることが長く運用するコツです。
よくある質問
Q. 一人で事業をしている場合、自分のジム代やスポーツクラブ代は経費になりますか?
原則として、事業主本人のジム代やスポーツクラブ代は福利厚生費にも経費にもなりません。健康維持は個人的な支出と考えられるためです。従業員のために設ける制度であれば福利厚生費として扱える場合がありますが、本人分は対象外と考えましょう。
Q. 従業員と一緒に食事に行った費用は福利厚生費になりますか?
従業員全員を対象とした慰労や交流が目的であれば、福利厚生費として扱える場合があります。一方、特定の従業員とだけ、あるいは事業主の個人的な目的で行く食事は対象になりにくいです。目的と対象範囲を意識して判断しましょう。
Q. 自分が加入する民間の医療保険は福利厚生費にできますか?
事業主本人が加入する民間の医療保険は、福利厚生費にはできません。なお、生命保険料控除など別の制度で所得控除の対象になる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.1140「生命保険料控除」)。保険の取り扱いは内容によって異なるため、詳しくは国税庁サイト等でご確認ください。
結論|福利厚生費は「従業員のための費用」
福利厚生費は、あくまで従業員の健康や生活を支えるための費用です。一人で事業を営む個人事業主が、自分自身の健康診断や食事代を福利厚生費にすることは、原則としてできません。この点を押さえておくだけで、多くの誤解を防ぐことができます。会社員時代との違いを意識しておくことが、特に独立して間もない方には大切です。
従業員を雇った場合は、全員を公平に対象とし、常識的な範囲で行うことを意識すれば、福利厚生費を活用して働きやすい環境づくりができます。判断に迷う支出は、「誰のための費用か」「事業に必要か」という視点で見直してみましょう。福利厚生費は線引きが難しい費目だからこそ、一つひとつの支出をていねいに見ていく姿勢が大切です。
福利厚生費に限らず、その支出が経費になるかどうかの線引きは、個人事業主が一人で判断し続けるには骨の折れる作業です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








