赤字の年こそ使いたい節税の備え|共済の掛金調整と繰越を解説
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税金

赤字の年こそ、青色申告なら純損失を翌年以降に繰り越して将来の節税に変えられ、共済やiDeCoの掛金は利益に合わせて柔軟に調整できます。利益が出ない年に整えておきたい備えを解説します。
個人事業を続けていると、売上が落ち込んだり大きな設備投資をしたりして、年間の収支が赤字になる年は誰にでも起こり得ます。そんなとき「赤字なのだから税金はかからない、節税対策も関係ない」と考えがちですが、実はその発想が損につながることがあります。赤字の年だからこそ整えておきたい「備え」があるのです。
☑ 今年は赤字になりそうだけれど、赤字の年に節税なんて意味があるのか疑問だ
☑ 小規模企業共済やiDeCoの掛金を、利益が出ない年は払い続けるべきか迷っている
☑ 赤字を翌年以降に持ち越せると聞いたが、具体的なやり方がわからない
赤字の年に見直したい共済や保険の掛金調整、そして赤字そのものを将来の節税に変える「繰越」の仕組みを、個人事業主・フリーランスに向けて整理します。利益が出ない年に何を整えておけばよいかがイメージできるように進めます。
赤字の年に「節税」を意識すべき理由
赤字でも税金がゼロになるわけではない
まず押さえておきたいのは、事業所得が赤字でも、必ずしも税負担がゼロになるとは限らない点です。個人事業主は、事業所得のほかに給与所得や副業の所得など複数の所得を持つケースが少なくありません。事業が赤字でも、ほかの黒字の所得と損益通算することで全体の所得が圧縮され、給与から源泉徴収された税金の還付につながることもあります。「赤字だから何もしなくていい」と決めつけず、申告を通じて数字を整理することが手取りを守ることにつながります。
赤字の年は申告を「やめない」ことが大切
赤字の年は「どうせ税金がかからないなら申告しなくてもいいのでは」と感じるかもしれません。しかし、特に青色申告をしている方にとって、赤字の年こそ確定申告を行う意味は大きいものです。後ほど説明する赤字の繰越は、申告書を提出して初めて使える制度だからです。
赤字の年に申告を省いてしまうと、将来の黒字年で取り戻せたはずの節税メリットを自ら手放すことになりかねません。利益が出ない年ほど、申告まで完結させる姿勢が大切です。日々の記帳が滞っていると申告まで届かないため、記帳代行というやり方で帳簿を整えておくのも一つの方法です。
赤字の中身を正しく把握する
ひとくちに赤字といっても、その中身はさまざまです。一時的な売上減による赤字なのか、設備投資や経費の前倒しによる赤字なのかで、取るべき対応は変わります。まずは決算書を見て、何が原因で赤字になっているのかを把握することが、適切な備えの出発点になります。
赤字を将来の節税に変える「純損失の繰越控除」
繰越控除とはどんな仕組みか
青色申告をしている個人事業主には、その年の事業所得などの赤字(純損失)を、原則として翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の黒字の所得から差し引ける「純損失の繰越控除」という制度があります。この制度は青色申告が前提で、青色申告制度の全体像は国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。たとえば今年100万円の赤字が出て翌年に120万円の黒字になった場合、繰り越した100万円を差し引いて課税対象を圧縮できる、というイメージです。
これは「今年の赤字を、将来黒字になったときの節税材料として取っておける」仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。繰越の具体的な進め方は青色申告の赤字繰越の活用で詳しく解説しています。赤字の年に苦労した分を、回復した年の税負担軽減という形で取り戻せる制度です。
繰越を使うための条件
その年に青色申告をしていること
赤字が出た年の確定申告書を期限内に提出していること
その後の各年も連続して確定申告をしていること
ここで重要なのは、繰越控除は青色申告が前提だという点です。白色申告の場合は、原則として変動所得や被災事業用資産の損失など限られたケースを除き、純損失の繰越は使えません。赤字になりそうな年があらかじめ見込めるなら、早めに青色申告の承認申請を済ませておくことが大切です。
繰り越したあとの実務の流れ
赤字を繰り越すには、確定申告書に加えて純損失に関する明細を記載して提出します。そして翌年以降、黒字が出た年の申告で、繰り越しておいた赤字を所得から差し引いて申告します。注意したいのは、途中で申告を忘れると繰越が途切れてしまう点です。黒字・赤字にかかわらず、繰越期間中は毎年きちんと申告を続けることが制度を活かす絶対条件です。前年から繰り越した金額は帳簿や控えで管理し、転記漏れがないようにしましょう。
共済の掛金は「赤字の年こそ」調整する
小規模企業共済の掛金は柔軟に変えられる
個人事業主の節税と退職金準備を兼ねる代表的な制度が小規模企業共済です。掛金は全額が所得控除の対象になるため、黒字の年は大きな節税効果を発揮します。どのくらいの節税になるかは小規模企業共済の節税シミュレーションで確認できます。一方、赤字の年は所得控除を使い切れず、節税メリットが薄くなる場面もあります。
ここで知っておきたいのが、小規模企業共済の掛金は月額の範囲内で増額・減額が可能な点です。利益が出ない年は掛金を一時的に下げて資金繰りを守り、黒字に回復した年に増額して節税効果を取りに行くといった調整ができます。赤字だからと解約してしまうと、掛けてきた期間によっては受け取る金額が払い込んだ額を下回ることもあるため、まずは減額で対応するのが基本です。
掛止め・前納という選択肢
資金繰りがどうしても苦しいときは、一定の手続きのもとで掛金の支払いを一時的に止める「掛止め」という方法もあります。逆に、年末に来年分をまとめて前払いする「前納」を使えば、黒字の年に控除を前倒しで取ることも可能です。掛金の柔軟さは、赤字・黒字の波が大きい個人事業主にとって大きな利点です。
赤字の年に新規加入を急がない
節税効果だけで見ると、所得控除を活かしきれない赤字の年に小規模企業共済へ新規加入しても、その年の節税メリットは限定的です。とはいえ共済は退職金準備という側面も持つため、将来への備えとして無理のない範囲で始める意味はあります。焦って大きな掛金で加入せず、黒字年と赤字年の両方を見据えた金額設定を意識しましょう。
iDeCo・保険の掛金も無理のない範囲に
iDeCoの掛金と所得控除の関係
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金も全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、老後資金づくりと節税を両立できます。ただし、こちらも所得控除である以上、課税所得が小さい赤字の年は節税効果が出にくくなります。受け取るときの課税はiDeCoの出口(受け取り)と税金で解説しています。
とはいえ、iDeCoは老後資金の積立てが本来の目的であり、長期で続けることに意味があります。赤字の年は掛金額を見直して負担を軽くしつつも、可能な範囲で積立て自体は継続するのが現実的です。掛金は年に一定の範囲で変更できるため、利益の状況に合わせて調整しましょう。
生命保険料控除・経営セーフティ共済の扱い
生命保険料控除も、赤字で課税所得が小さい年は効果が限定的です。一方、取引先の倒産に備える経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は、所得控除ではなく事業の必要経費にできる点が特徴です。掛金と節税の関係は経営セーフティ共済の掛金と節税で整理しています。ただし経費に算入するとその分さらに赤字が膨らむため、必要経費を増やす意味があるかは損益通算や繰越とのバランスをよく考えて判断しましょう。
「控除の使い切れない分」を意識する
赤字の年に共済や保険の掛金を満額払っても、所得控除を使い切れず効果が宙に浮いてしまうことがあります。所得控除は赤字の繰越のように翌年へ持ち越せるものではないため、利益が出ない年に控除を厚くしすぎても、その分の節税メリットは戻ってきません。「黒字の年に控除を厚く、赤字の年は身軽に」という発想で掛金を配分すると、長い目で見た節税効果を高めやすくなります。
赤字の年に整えておきたい帳簿と次年度への準備
赤字の原因を帳簿で見える化する
赤字の年こそ、帳簿をきちんと整えておく価値があります。売上の減少なのか、経費の増加なのか、設備投資の影響なのかを科目ごとに見える化しておけば、翌年以降の経営判断や繰越控除を使う際の根拠資料として役立ちます。記帳が曖昧だと、せっかくの繰越制度を正しく使えないおそれもあります。
黒字回復の年を見据えた仕込み
赤字の年は、次に黒字へ転じたときに備えて節税の「仕込み」をしておく時期でもあります。青色申告の承認申請や帳簿体制の整備、共済・iDeCoの掛金プランの見直しなどは、利益が出ていない時期だからこそ落ち着いて取り組めます。黒字になってから慌てるより、赤字の年のうちに土台を整えておく方が大きな差につながります。
専門家に相談するタイミング
赤字の年は、損益通算や繰越控除、共済の掛金調整など、判断に迷う論点が一度に重なりやすい時期です。自己流で進めて繰越の申告を漏らすと将来の節税メリットを失いかねないため、少しでも不安があれば申告の前に専門家へ相談しておくと安心です。
よくある質問
Q. 赤字なら確定申告はしなくても問題ありませんか?
事業所得が赤字の場合、申告義務がないケースもありますが、青色申告で赤字を翌年以降に繰り越したいなら確定申告は必須です。繰越控除は申告書を期限内に提出して初めて使える制度で、申告を省くとこのメリットを失います。また、ほかに給与所得などがある方は、損益通算によって源泉徴収された税金の還付を受けられることもあります。赤字の年でも、申告まで完結させましょう。
Q. 赤字の年に小規模企業共済を解約した方がよいですか?
資金繰りが苦しいからとすぐに解約するのは慎重に判断したいところです。小規模企業共済は掛けてきた期間によっては、受け取る金額が払い込んだ額を下回ることがあります。まずは掛金の減額や、一時的に支払いを止める掛止めで対応できないかを検討しましょう。解約は最後の手段と考えましょう。
Q. 繰り越した赤字は何年使えますか?
青色申告をしている個人事業主の純損失は、原則として赤字が出た年の翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の黒字の所得から差し引けます。ただし、繰越期間中は黒字・赤字にかかわらず連続して確定申告を続けることが条件です。途中で申告を忘れると繰越が途切れるため、毎年きちんと申告する習慣が欠かせません。
赤字の年は「備え」を整える絶好のタイミング|まとめ
赤字の年は、税金がかからないからと何もしないのではなく、将来の黒字に向けて備えを整える絶好のタイミングです。青色申告による純損失の繰越控除を使えば赤字を将来の節税に変えられますし、小規模企業共済やiDeCoの掛金は利益の状況に合わせて柔軟に調整できます。「黒字の年に控除を厚く、赤字の年は身軽に」という発想で、長い目で見た税負担の最適化を意識しましょう。
とはいえ、損益通算・繰越控除・掛金調整といった判断を、本業をこなしながら一人で正確に進めるのは負担が大きいものです。とくに赤字の年は、繰越の申告を漏らすと将来の節税メリットを失うため、帳簿づけと申告を確実に完結させることが大切です。領収書丸投げドットコムでは、領収書や請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から確定申告書類の作成までを税理士監修のもとで代行しています。赤字の年の処理を任せて次の黒字に備えられるか相談する。相談は無料です。料金の目安は枚数無制限の料金プランでご確認ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








