確定申告の「収入」と「所得」の違いをやさしく解説
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確定申告

確定申告の「収入」と「所得」は別物で、所得は収入から必要経費を差し引いた実質的なもうけを指します。この違いを押さえると、税額の計算や扶養の判定で迷わなくなります。所得が決まる流れと申告書の記入欄まで、具体例で確認していきます。
日常会話ではどちらも「稼ぎ」のような意味で使われますが、税金の世界では収入と所得はまったく別の数字として扱われます。あいまいなまま申告すると、税額がずれたり、提出する数字を取り違えたりする原因になります。まずは2つの違いを、身近な例で整理していきましょう。
☑ 確定申告書を書いていて「収入」と「所得」の欄が分かれていて混乱した
☑ 売上はそこそこあるのに「所得」がぐっと小さくなる理由が分からない
☑ 「年収」と「所得」は同じものだと思っていて、提出書類でつまずいた
「収入」と「所得」はそもそも何が違うのか
収入は「入ってきたお金の総額」
「収入」とは、その年に商売やサービスの対価として入ってきたお金の総額です。フリーランスや個人事業主の場合、お客さまや取引先からもらった売上の合計が収入にあたります。経費や税金を差し引く前の、いわば「入口の金額」です。
たとえばWebデザインの仕事で1年間に合計400万円を受け取ったなら、その400万円が「収入(売上)」です。ここにはまだ、仕事のために使ったパソコン代も通信費も、何も引かれていません。ドッグトレーナーの施術収入と用品費の扱いのように、業種が違っても収入から経費を引いて所得を出す流れは同じです。
所得は「収入から経費を引いた残り(もうけ)」
一方で「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた後に残る金額、つまり実質的なもうけのことです。事業で得た所得であれば、計算式はとてもシンプルです。
所得 = 収入(売上) - 必要経費
先ほどの例で、年間400万円の収入に対して経費が120万円かかっていたとすると、所得は「400万円 - 120万円 = 280万円」になります。税金は原則として、この「所得」をもとに計算されます。収入が多くても経費が多ければ所得は小さくなり、逆に経費が少なければ所得は収入に近づきます。
「年収」「手取り」とも混同しやすい
会社員の方が言う「年収」は、給与の額面金額(税金や社会保険料を引く前)を指すことが多く、これは収入に近い考え方です。一方「手取り」は、そこから税金や社会保険料が引かれた後に実際に受け取る金額で、税金の計算で使う「所得」とは別物です。言葉が似ているぶん混同しやすいので、確定申告では「収入」と「所得」をはっきり区別して考えることが大切です。
所得が計算される流れを順番に見てみよう
ステップ1:1年分の売上(収入)を集計する
まずは1月1日から12月31日までの1年間に発生した売上を合計します。ここでのポイントは、実際にお金が振り込まれた日ではなく、原則として商品やサービスを提供した時点で売上に計上するという考え方(発生主義)です。12月に納品して翌年1月に入金された分も、その年の収入に含めるのが基本です。
ステップ2:必要経費を集計する
次に、その売上を得るために使った費用を集計します。事業に関係する支出が必要経費にあたります。代表的なものを挙げてみましょう。
仕入れや外注費
事務所・店舗の家賃や水道光熱費
通信費(インターネット・携帯電話料金)
交通費・旅費
消耗品費(文房具・少額の備品など)
仕事用のパソコンやソフトの購入費
自宅を仕事場にしている場合は、家賃や光熱費のうち事業に使っている割合分だけを経費にできる「家事按分」という考え方もあります。プライベートと事業が混ざる支出は、合理的な基準で分けて計上します。たとえば語学・英会話講師のレッスン料収入と教材費の分け方や、同人作家の頒布収入と印刷費の処理のように、業種ごとに収入と経費の中身は変わります。どんな支出が経費になるかの考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」でも確認できます。
とはいえ、1年分の領収書を種類ごとに拾い、事業分とプライベート分を分ける作業に手が回らないという方は少なくありません。集計そのものを任せたい場合は、経費の集計から記帳まで任せる記帳代行という方法もあります。記帳代行の現場でも、収入と所得の区別や経費の拾い出しに悩む個人事業主の方からのご相談は多くいただきます。
ステップ3:収入から経費を引いて「所得」を出す
ステップ1の収入からステップ2の経費を差し引くと、その事業の「所得(事業所得)」が求められます。確定申告書では、この所得をもとにさらに各種の控除を引いて、税金がかかる金額(課税所得)を計算していきます。「収入 → 所得 → 課税所得 → 税額」という順番で数字が絞られていくイメージを持っておくと、書類全体の流れが理解しやすくなります。
なぜ「収入」と「所得」の違いが申告で重要なのか
税額は「所得」をもとに決まる
所得税は収入そのものにかかるのではなく、経費や控除を引いた後の所得にかかります。だからこそ、収入だけを見て「これだけ税金がかかりそう」と心配する必要はありません。きちんと経費を計上すれば所得は適正に小さくなり、結果として税額も実態に合ったものになります。逆に、経費を集計せずに収入をそのまま所得のように扱ってしまうと、本来より多く税金を払うことになりかねません。
各種控除や手続きでも「所得」が基準になる
「収入」と「所得」の区別は、税額計算だけの話ではありません。さまざまな場面で「所得」が判定基準として使われます。たとえば次のようなケースです。
配偶者控除・扶養控除を受けられるかどうかの判定
各種の行政サービスや手当の所得制限
国民健康保険料の算定
これらは「収入」ではなく「所得」の金額で線引きされることが多いため、自分の所得がいくらなのかを正しく把握しておくことが、思わぬ判定ミスを防ぐことにつながります。家族の扶養に入れるかどうかなどを考えるときも、収入ではなく所得で考えるのが基本です。
申告書の記入欄も「収入金額」と「所得金額」で分かれている
確定申告書では、「収入金額等」の欄と「所得金額等」の欄が別々に用意されています。事業の収入は「収入金額等」の事業欄に、経費を引いた後の事業所得は「所得金額等」の事業欄に記入します。この2つの欄の意味を取り違えると、書類全体の数字がちぐはぐになってしまいます。両者の違いを理解していれば、どこに何を書けばよいか迷わなくなります。
青色申告特別控除は「所得」をさらに小さくしてくれる
控除は経費とは別に所得から引ける
事業所得には、経費とは別に「青色申告特別控除」という仕組みがあります。これは、複式簿記による記帳など一定の要件を満たして青色申告をした場合に、所得から最大で65万円を差し引けるというものです。要件によって控除額は変わりますが、収入から経費を引いた後の所得を、さらに小さくできる点が大きなメリットです。控除額と要件は、国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
計算のイメージ
たとえば収入400万円・経費120万円・青色申告特別控除65万円の場合、税金の計算のもとになる所得は次のように小さくなります。
400万円(収入) - 120万円(経費) - 65万円(控除) = 215万円
このように、収入と所得の違いを理解したうえで、経費と控除を正しく積み上げていくことが、無理のない節税につながります。なお65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳や、原則として申告期限内(原則2月16日〜3月15日)の電子申告など、いくつかの要件があります。日々の帳簿づけをきちんと続けておくことが、結果として控除を取りこぼさないコツです。
収入と所得をめぐるよくある勘違い
「収入が少ないから申告しなくてよい」とは限らない
「収入が少ないから関係ない」と考えてしまう方もいますが、判断のもとになるのは収入ではなく所得です。所得が一定額を超える場合は申告が必要になりますし、たとえ納める税金がなくても、申告しておくことで所得の証明ができ、各種手続きで役立つことがあります。収入の大小だけで「申告不要」と決めつけないようにしましょう。確定申告が必要になる人の範囲は、国税庁のタックスアンサーもあわせて確認しておくと安心です。
経費を入れ忘れると所得が大きくなりすぎる
所得は「収入 - 経費」で決まるため、本来は経費にできる支出を見落とすと、所得が実際より大きく計算され、税金も余計にかかってしまいます。レシートや領収書をこまめに保管し、もれなく集計することが、適正な所得を出すための基本です。逆に、事業と関係のない支出まで経費に入れてしまうのも問題なので、「事業のための支出かどうか」を基準に区別することが大切です。
よくある質問
Q. 「収入」と「売上」は同じ意味ですか?
事業を営む個人事業主・フリーランスの方にとっては、ほぼ同じ意味と考えて差し支えありません。確定申告では、事業で得た売上の合計が「事業収入(収入金額)」となり、そこから必要経費を引いたものが「事業所得」になります。ただし、不動産収入や給与など事業以外の収入がある場合は、それぞれ種類ごとに収入と所得を分けて計算する点には注意が必要です。
Q. 副業の場合も「収入」と「所得」を分けて考えるのですか?
はい、副業でも考え方は同じです。副業で得たお金が「収入」、そこから副業のためにかかった経費を引いた残りが「所得」です。会社員の方が副業をしている場合は、本業の給与所得とは別に、副業の所得を計算して合算する形になります。副業でも経費はきちんと集計しておくと、所得を適正に把握できます。
Q. 経費が収入を上回って所得がマイナスになったらどうなりますか?
事業所得が赤字(マイナス)になることもあります。青色申告をしている場合は、一定の要件のもとでその赤字を翌年以降の所得と相殺できる仕組みがあるなど、申告しておくことで受けられる扱いもあります。赤字だからといって申告を放置せず、状況を整理しておくことが大切です。
まとめ|収入と所得を分けて考えれば申告で迷わない
「収入」は入ってきたお金の総額、「所得」はそこから経費を引いた実質的なもうけです。税金は所得をもとに計算され、扶養の判定や各種手続きでも所得が基準になります。さらに青色申告特別控除を使えば、所得をより小さくできます。「収入 → 所得 → 課税所得 → 税額」という流れを理解しておけば、確定申告書のどこに何を書けばよいか迷わなくなり、経費の入れ忘れによる払いすぎも防げます。
とはいえ、1年分の売上を集計し、経費をもれなく拾い、収入と所得を正しく区別して帳簿や申告書に落とし込む作業は、本業が忙しい中では想像以上に時間も神経も使うものです。数字の意味は分かっても、実際の集計や仕訳に手が回らない、という声は少なくありません。
収入と所得の区別に不安を残したまま申告期を迎えたくない、という方へ。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








