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売上に季節の波がある事業の所得平準化|期...

2026/7/19

売上に季節の波がある事業の所得平準化|期をまたぐ調整を解説

  • 税金

売上に季節の波がある事業は、累進課税のもとで利益が一年に偏るほど税負担が重くなります。売上・経費の計上時期の整理や、青色申告の繰越控除・繰戻し還付、共済、専従者給与を組み合わせて所得の山と谷をならす方法を解説します。

季節性のある事業ほど「稼いだ年だけ極端に税金が重い」という悩みを抱えがちです。これは制度の宿命のように見えて、実は売上や経費の計上時期の整理と制度の使い分けで、かなりの部分を和らげられます。順を追って見取り図を描いていきましょう。

☑ 繁忙期と閑散期で売上の差が大きく、稼いだ年の税金だけが極端に重い

☑ 年末にまとまった入金があり、その分だけ所得税や国保が跳ね上がって困っている

☑ 好調な年と赤字の年が交互に来るので、税負担をならす方法を知りたい

観光業や季節商品、イベント関連の仕事など、売上に季節の波がある事業では、1年間の稼ぎが特定の月に集中しがちです。ところが所得税は「稼いだほど税率が高くなる」累進課税のため、同じ生涯収入でも、一年に利益が偏るほど税金の総額は重くなってしまいます。閑散期にコツコツ稼ぐ人と、繁忙期に一気に稼ぐ人とで、手取りに差が出てしまうのはこのためです。

以下では、季節性のある事業がなぜ税負担で不利になりやすいのかという仕組みから、期をまたぐ調整で所得の山と谷をならす(平準化する)考え方、そして個人事業主が実際に使える制度までを順に説明します。「稼いだ年の税金だけが重い」という悩みへの対処の見取り図をつかんでいきましょう。

なぜ季節の波が大きいと税金で不利になるのか

累進課税は「利益の偏り」に弱い

所得税は、課税される所得金額が大きくなるほど税率が段階的に上がる超過累進課税という仕組みです。所得税率は5%から45%まで段階的に区切られており、所得が上の区分に入るほど、その超えた部分に高い税率がかかります。区分ごとの税率は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認できます。

ここで大切なのは、税率が「その年ごとの所得」で決まる点です。たとえば2年間の利益の合計が同じでも、1年目600万円・2年目0円と、1年目300万円・2年目300万円とでは、前者のほうが高い税率区分に届いてしまい、2年分の税金の合計が重くなります。季節の波が大きい事業ほど、この「一年への偏り」が起きやすいのです。

税金以外の負担も所得に連動する

不利になるのは所得税だけではありません。国民健康保険料や、保育料、各種の所得制限のある給付なども、その年の所得を基準に決まる場合が多いためです。

  • 国民健康保険料:前年の所得が高いと、翌年度の保険料が大きく上がる

  • 住民税:前年の所得に対して原則一律の税率でかかる

  • 保育料や各種給付:所得の水準で金額や対象が変わることがある

つまり、利益が一年に集中すると、所得税だけでなくこれらの負担も同じ年に重なってのしかかります。所得の山をならすことには、税金だけでなく暮らし全体の負担を平らにする意味があるのです。

「期をまたぐ調整」で所得をならす基本の考え方

所得平準化とは「山と谷を近づける」こと

所得平準化とは、特定の年に偏った利益を、複数年でできるだけ均等に近づけていく考え方です。イメージとしては、繁忙期の利益という「山」を少し削り、閑散期や赤字の年という「谷」に少し回して、全体の凸凹をならしていく作業です。

やり方は大きく2つに分かれます。ひとつは、収入や経費を計上するタイミングを調整して、利益の山そのものを低くする方法。もうひとつは、赤字(損失)を別の年の黒字とぶつける制度を使って、結果的に税負担をならす方法です。順番に見ていきましょう。

個人事業主は「暦年」で区切られる

法人は決算月を自由に決められますが、個人事業主の所得は1月1日から12月31日までの暦年で区切られ、これを変えることはできません。そのため、期をまたぐ調整とは実質的に「12月と翌年1月の境目をどう扱うか」という話になります。

年末近くの取引が、今年の所得になるのか翌年の所得になるのかで、その年の税率区分が変わることがあります。だからこそ、季節性のある事業では年末の売上や支払いの計上時期を意識することが、平準化の第一歩になります。

タイミングを調整して利益の山を低くする

売上の計上時期を正しく把握する

まず前提として、売上をいつ計上するかには税務上のルールがあり、入金の日で自由に選べるわけではありません。原則として、商品を引き渡した日やサービスの提供が完了した日に売上を計上します(発生主義)。「まだ入金されていないから今年の売上ではない」と考えるのは誤りになりやすいため注意が必要です。

裏を返せば、年末ぎりぎりに納品やサービス提供の完了時期が来る取引は、その完了時期がどちらの年に入るかで所得の年度が決まります。無理な操作は禁物ですが、繁忙期の仕事の区切りが年末年始にまたがる場合、実態に沿ってどちらの年の売上になるかを正しく整理しておくことが大切です。

前受金・前払金は「その年の利益」にならない

季節性のある事業では、繁忙期に向けて前もって代金を受け取ったり、仕入れの前払いをしたりすることがあります。ここで押さえたいのが、先にもらったお金がそのまま今年の売上になるわけではないという点です。

  • 前受金:サービス提供や納品が済んでいない段階で受け取ったお金は、受け取った年の売上にはならず、実際に提供した年の売上になる

  • 前払金:来期分として先に払った費用は、その年の経費ではなく、対応する期の経費になる

年末に大きな前受金があっても、それを今年の利益と勘違いして慌てて対策をとる必要はありません。逆に、前払いをすれば当然に今年の経費が増える、というわけでもないのです。この区別を知っておくだけで、余計な負担感を避けられます。

年払い経費の特例を検討する

利益が出すぎた年に活用を検討できるのが、家賃や保険料などを1年分まとめて年払いにしたときに、その支払額をその年の経費にできる短期前払費用の特例です。一定の要件を満たせば、本来は翌年分にあたる部分もその年の経費にできるため、利益の山が高い年の所得を抑える効果があります。

ただし、これは「支払いを前倒しする」対策なので、翌年以降に同じ経費を計上できなくなる点や、手元資金が先に出ていく点には注意が必要です。要件も細かいため、使う前に内容をよく確認しましょう。

赤字を使って複数年の税負担をならす

青色申告なら赤字を3年間繰り越せる

季節性のある事業や、好調な年と不調な年が交互に来る事業でこそ力を発揮するのが、青色申告の純損失の繰越控除です。ある年に赤字(純損失)が出た場合、その赤字を翌年以後3年間にわたって繰り越し、黒字の年の所得から差し引くことができます。この繰越控除は青色申告の特典で、制度の全体像は国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。

たとえば、閑散が続いて赤字だった年の損失を、翌年の繁忙期で大きく黒字になった年の所得から差し引ければ、その黒字の年に届いていた高い税率区分を下げられます。まさに「谷」を「山」にぶつけて、税負担をならす方法です。この制度を使うには、赤字の年に青色申告で確定申告をしておくことが前提になります。

前年が黒字なら「繰戻し還付」も選べる

逆に、前年は黒字で所得税を納めていたのに、今年は赤字になったという場合には、純損失の繰戻し還付という方法があります。今年の赤字を前年の黒字にさかのぼってぶつけ、前年に納めた所得税の一部を還付してもらう制度です。

繰越控除が「これからの黒字」と相殺するのに対し、繰戻し還付は「すでに納めた税金」を取り戻すもので、資金繰りが厳しい年に手元資金を確保したいときに向いています。どちらもその年の状況に応じて選べるので、赤字の年こそ申告をあきらめないことが大切です。

白色申告では使える範囲が限られる

ここで注意したいのが、赤字を繰り越して将来の黒字と相殺する仕組みは、原則として青色申告をしている人が使える制度だという点です。白色申告では、こうした損失の繰越しが使える範囲が大きく限られます。

売上の波が大きく、赤字の年が出やすい事業ほど、青色申告にしておくメリットは大きくなります。事前の届出が必要ですが、平準化を意識するなら、まず青色申告の準備を整えておくことが土台になります。

制度を組み合わせて所得を均す

共済や小規模企業共済で「山」の年に備える

利益の山が高い年に、その一部を将来のために積み立てながら所得を下げる方法もあります。代表的なのが小規模企業共済経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。

  • 小規模企業共済:掛金が全額所得控除になり、将来の廃業や引退時に受け取れる。繁忙で利益が多い年に多めに納めることで、その年の所得を抑えられる

  • 経営セーフティ共済:掛金を経費にでき、取引先の倒産に備えられる。前納の仕組みを使えば、利益が出すぎた年にまとめて経費化することも検討できる

いずれも「使ったら消える経費」ではなく、将来に戻ってくるお金として積み立てながら山の年の所得を下げられる点が特徴です。ただし加入や解約には条件があるため、仕組みを理解したうえで無理のない掛金にしましょう。

家族への専従者給与で所得を分ける

家族が事業を手伝っている場合、青色申告なら青色事業専従者給与として、支払った給与を経費にできます。ひとりに集中していた所得を家族へ分けることで、事業主本人の高い税率区分を下げられる可能性があります。制度のしくみは青色事業専従者給与とはで確認しておくと安心です。

ただし、実際に働いている実態や、労働内容に見合った金額であることが求められ、事前の届出も必要です。形だけの給与は認められないため、あくまで実態に沿って運用することが前提になります。いくらに設定すると世帯で効果的かは専従者給与の金額の決め方で試算の考え方を確認できます。

まずは「一年の見通し」を早めに立てる

ここまでの対策の多くは、年末や申告期になってからでは間に合わないものが少なくありません。共済への加入も、青色申告の届出も、あらかじめ準備が必要だからです。

そのため、季節性のある事業ほど、繁忙期が終わる前の段階で「今年はどれくらいの利益になりそうか」をつかんでおくことが重要です。日々の帳簿がきちんとついていれば、利益の見通しは早めに立てられます。逆に、記帳が後回しになっていると、対策を打つタイミングを逃してしまいます。

利益の見通しを早めにつかめるかどうかは、日々の記帳が整っているかにかかっています。繁忙期に記帳が滞りがちなら、日々の記帳を預けて数字を見える化する方法を検討すると、対策のタイミングを逃しにくくなります。

平準化を考えるときの注意点

「税金を減らすための赤字」は本末転倒

所得をならすことは大切ですが、税金を減らしたいがために無理に経費を膨らませたり、必要のない支出をしたりするのは本末転倒です。1万円の経費を増やしても、減る税金はその一部にすぎず、手元のお金はかえって減ってしまいます。

平準化の目的は、あくまで「同じ稼ぎなら、なるべく負担をならして手取りを守る」ことです。事業として意味のある支出かどうかを軸に判断しましょう。手間と効果のバランスの見極め方は節税策の費用対効果を見極める考え方が参考になります。

資金繰りとのバランスを忘れない

年払いや前納で経費を前倒しすると、その年の所得は下がりますが、手元の資金は先に出ていきます。季節性のある事業では、閑散期を乗り切るための現金が命綱になることも少なくありません。所得をならすことばかりを優先して、肝心の運転資金が足りなくなっては元も子もありません。

税負担の平準化と資金繰りのバランスは、事業の状況によって最適な形が変わります。判断に迷うときは、早めに専門家へ相談するのが安心です。

よくある質問

Q. 個人事業主でも決算月をずらして所得の山を分けられますか?

いいえ、個人事業主の所得は1月1日から12月31日までの暦年で区切ることが決まっており、決算月をずらすことはできません。所得の山を分けたい場合は、法人化して決算月を選べるようにする方法もありますが、社会保険や設立・運営の手間などのデメリットもあります。まずは暦年を前提に、青色申告の繰越控除や各種制度で調整するのが現実的です。

Q. 繁忙期の入金を翌年に遅らせれば、今年の税金を減らせますか?

入金を遅らせても、税金が減るとは限りません。売上を計上する年は、原則として商品を引き渡した日やサービスの提供が完了した日で決まるためです。入金の時期を後ろにずらしても、提供が今年済んでいれば今年の売上になります。無理に入金を遅らせるより、正しい計上ルールにもとづいて所得を整理することが大切です。

Q. 赤字の年は、確定申告をしなくてもよいですか?

税額が出ない年でも、確定申告をしておくことを強くおすすめします。特に青色申告では、その年の赤字を確定申告しておくことで、翌年以後3年間の黒字と相殺できる純損失の繰越控除が使えます。申告をしないと、この平準化の効果を受けられなくなってしまうため、赤字の年こそ申告を忘れないようにしましょう。

所得の平準化は早めの準備がすべて

売上に季節の波がある事業は、累進課税の仕組み上、利益が一年に偏るほど税負担が重くなりやすいという弱点があります。しかし、売上や経費の計上時期を正しく整理し、青色申告の繰越控除や繰戻し還付、共済制度、専従者給与などを組み合わせれば、所得の山と谷をならして負担を平らに近づけていくことは十分に可能です。ポイントは、繁忙期が終わる前に一年の見通しを立て、早めに手を打つことにあります。

日々の売上や経費を記帳し、利益の見通しを立てながら制度を使い分ける——季節性のある事業でこれを本業と両立するのは、想像以上に骨が折れます。繁忙期は仕事に追われて記帳が後回しになり、気づけば平準化のタイミングを逃していた、ということも起こりがちです。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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