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2026/8/11

障害福祉サービス事業を営む個人事業主の確定申告|給付費収入と人件費の処理を解説

  • 確定申告

障害福祉サービス事業の確定申告は、国保連からの給付費をサービス提供月の売上に計上し、大きな割合を占める人件費を給与と外注費に正しく分けるのがカギです。年末の未収分や源泉徴収の実務まで整理します。

就労継続支援や放課後等デイサービス、居宅介護といった障害福祉サービス事業を個人で営んでいると、収入の中心が国民健康保険団体連合会(国保連)からの給付費になります。一般的な商売とはお金の流れが異なるため、「この入金はいつの売上?」「人件費はどう分ければいい?」と確定申告の場面で手が止まってしまう方は少なくありません。

☑ 国保連から振り込まれる給付費を、いつの売上として計上すればよいかわからない

☑ 支援員やサービス管理責任者への給与・外注費の処理が正しくできているか不安だ

☑ 補助金や利用者負担金、自費サービスの収入をどう分けて記帳すればよいか迷っている

障害福祉サービス事業を営む個人事業主に向けて、給付費収入の計上タイミングや、事業の大きな割合を占める人件費の処理、そして確定申告でつまずきやすいポイントを整理しました。自分の事業の数字をどう整理して申告すればよいか、全体の流れがつかめるよう順に見ていきます。

障害福祉サービス事業の収入はどう構成されているか

収入の中心は国保連からの「給付費」

障害福祉サービス事業の収入で最も大きいのが、国保連を通じて支払われる介護給付費・訓練等給付費です。サービスを提供した月の実績を翌月に請求し、おおむね2か月後に入金される、という流れが一般的です。

たとえば1月に提供したサービス分を2月に国保連へ請求し、入金は3月になる、というイメージです。このようにサービス提供月・請求月・入金月がずれるのが障害福祉サービス事業の収入の特徴で、確定申告ではこのズレの扱いが重要になります。放課後等デイサービスなど児童向けの事業を営む場合の申告の考え方は児童・学童支援事業の確定申告もあわせて参考になります。

給付費以外の収入も忘れずに

収入は給付費だけではありません。事業内容によって、次のようなものも収入として計上する必要があります。

  • 利用者負担金(利用者ご本人や保護者から受け取る自己負担分)

  • 食事提供加算や送迎にかかる実費など、利用者から受け取る実費収入

  • 就労継続支援B型などで、利用者へ支払う工賃のもととなる生産活動収入(製品の販売やサービスの対価)

  • 自治体からの補助金・助成金

これらは性質が異なるため、帳簿の上でも科目や補助科目を分けて記録しておくと、後の集計や確認がぐっと楽になります。特に生産活動による物品販売の収入は、給付費とはまったく別の売上として扱う点に注意しましょう。

補助金・助成金の扱いには注意

事業の立ち上げや設備整備に対して補助金・助成金を受け取ることがあります。これらは原則として受け取った年の収入になりますが、内容によっては課税の取り扱いが異なる場合があります。判断に迷うものは、自己判断で決めつけず、交付元や税務署、専門家に確認しておくと安心です。固定資産の購入にあてた補助金については、圧縮記帳という特別な処理が関係することもあります。

給付費収入はいつの売上に計上するのか

原則は「発生主義」で考える

所得税の計算では、入金された日ではなく収入すべき金額が確定した時点で売上を計上するのが原則です。これを発生主義といいます。障害福祉サービスの給付費でいえば、入金された月ではなく、サービスを提供した月(売上が確定した月)に収入として計上するのが基本的な考え方です。

つまり、入金が翌々月にずれ込んでも、その売上はサービスを提供した月のものとして記帳します。実際の現金の動きと売上の計上月がずれるため、通帳の入金だけを追っていると正しい申告にならない、という点をおさえておきましょう。

年末をまたぐ「未収の給付費」に気をつける

確定申告でとくに間違えやすいのが、12月にサービスを提供した分です。12月分の給付費は翌年に入金されますが、売上が確定したのは12月なので、その年の収入として計上します。入金がまだでも申告対象に含める、ということです。確定申告の全体像は国税庁タックスアンサー「No.2020 確定申告」(国税庁)でも確認できます。

この「年末時点でまだ入金されていない売上」は、帳簿上は売掛金(未収入金)として記録します。青色申告で正しい帳簿をつけるうえでも、月ごとの請求額をきちんと把握し、年をまたぐ給付費を漏らさないことが大切です。

返戻・査定減があったときの考え方

国保連へ請求した給付費は、内容に不備があると返戻(差し戻し)されたり、査定によって減額されたりすることがあります。いったん売上に計上した金額が後から変わる場合は、確定した金額に合わせて調整します。請求額と入金額が合わないときは原因を確認し、最終的に確定した金額で収入を計上するようにしましょう。返戻分を翌月に再請求した場合の扱いも含め、請求関係の記録は月別に整理しておくと安心です。

人件費の処理が事業の利益を左右する

障害福祉サービス事業は人件費の割合が高い

障害福祉サービス事業は、支援員、サービス管理責任者、世話人、看護職員など、人の手によって成り立つ事業です。そのため経費に占める人件費の割合が非常に高いのが特徴で、人件費の処理を正しく行うことが、適正な所得計算の鍵になります。

従業員に支払う給与は「給料賃金」、パート・アルバイトへの賃金もここに含めて計上します。社会保険料の事業主負担分は「法定福利費」、退職金の積み立てや福利厚生にかかる費用は別の科目で整理するなど、内容に応じて科目を分けて記帳しましょう。仕訳の判断ごと預けたいときは、確定申告代行の内容を知っておくと申告期の見通しが立ちます。

給与と外注費は明確に区別する

送迎の委託や、スポット的にお願いする専門職など、外部に業務を依頼する場合の支払いは「外注工賃(外注費)」になります。一方、雇用契約に基づいて働いてもらう人への支払いは給与です。給与か外注費かは、契約の実態で判断します。指揮命令の有無や勤務時間の拘束、報酬の決め方などから総合的に決まるもので、名目だけで自由に選べるわけではありません。

この区別はとても重要です。給与にあたる支払いには源泉徴収の義務が生じ、年末調整も必要になります。実態は雇用なのに外注費として処理していると、後の税務調査で指摘される原因になりかねません。判断に迷う場合は、契約内容を整理したうえで専門家に相談することをおすすめします。

源泉徴収と年末調整を忘れずに

従業員に給与を支払う事業主は、毎月の給与から所得税を天引き(源泉徴収)し、原則として翌月10日までに国へ納める義務があります。そして年末には、1年間の給与をもとに正しい税額を精算する年末調整を行います。これは事業主自身の確定申告とは別の手続きですが、人を雇っている以上は避けて通れません。賞与を支給したときの源泉徴収の実務は賞与・寸志の源泉徴収と記帳にまとめています。

従業員の人数が一定以下であれば、源泉所得税をまとめて年2回納める「納期の特例」を利用できる場合があります。事務負担を減らせる仕組みなので、該当しそうな方は届出を検討するとよいでしょう。

そのほか確定申告でおさえたい経費と申告のポイント

事業所運営でかかる主な経費

人件費のほかにも、障害福祉サービス事業ではさまざまな経費が発生します。代表的なものを整理しておきましょう。

  • 事業所の家賃・水道光熱費(地代家賃、水道光熱費)

  • 送迎車のガソリン代・車検・保険料(車両費、旅費交通費など)

  • 消耗品費(事務用品、衛生用品、活動に使う材料費 など)

  • 通信費、リース料、研修費、損害保険料

自宅の一部を事務所として使っている場合や、自家用車を送迎に使っている場合は、事業で使っている割合分だけを経費にする「家事按分」が必要です。使用割合の根拠を説明できるようにしておくと、後から確認を求められても安心です。介護分野から独立した方の申告の流れは介護職から独立・開業したときの確定申告も参考になります。

青色申告のメリットを活かす

障害福祉サービス事業のように収入も経費も金額が大きくなりやすい事業では、青色申告のメリットが特に活きてきます。複式簿記で正しく記帳し、必要書類を期限内に提出すれば、最大で青色申告特別控除65万円を受けられます。さらに、家族に支払う給与を経費にできる「青色事業専従者給与」や、赤字を翌年以降に繰り越せる仕組みなど、節税につながる制度が用意されています。青色事業専従者給与のしくみは国税庁タックスアンサー「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」(国税庁)で確認できます。

提出期間と必要書類

確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。事業所得がある方は、確定申告書とあわせて青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)を提出します。給付費の請求・入金記録、給与に関する書類、領収書や請求書などをもとに、1年分の収支を確定させてから申告書の作成に進むとスムーズです。

よくある質問

Q. 国保連からの入金額と帳簿の売上が合いません。どうすればよいですか?

入金額と売上が合わない主な原因は、サービス提供月と入金月のズレ、利用者負担金との合算、返戻や査定減です。まずは月ごとに「提供月の請求額」「実際の入金額」「利用者負担分」を並べて突き合わせてみましょう。売上は提供月に計上し、年末時点で未入金の分は売掛金として記録するのが基本です。原因を一つずつ確認していけば、ほとんどのズレは整理できます。

Q. 開業して間もないので赤字です。それでも確定申告は必要ですか?

赤字であっても、青色申告をしておくことをおすすめします。青色申告では、その年の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる繰越控除が使えるため、軌道に乗ったあとの税負担を軽くできる可能性があります。立ち上げ時は設備投資などで赤字になりやすいからこそ、きちんと申告して制度を活用しておくと有利です。

Q. 法人化(NPO法人や株式会社など)を考えています。個人事業のままとどう違いますか?

規模が大きくなると、個人事業より法人のほうが税制面や社会的信用の面で有利になる場面が出てきます。一方で、法人は設立や運営の手続き、決算・申告の負担が増えます。障害福祉サービスは指定の主体によって手続きも変わるため、収入規模や今後の事業計画をふまえ、税理士など専門家に相談したうえで判断するのが安心です。

結論:収入のズレと人件費の整理が申告成功のカギ

障害福祉サービス事業の確定申告は、給付費をサービス提供月の売上として計上すること、年末をまたぐ未収分を漏らさないこと、そして大きな割合を占める人件費を給与と外注費に正しく分けて源泉徴収まで行うこと、この3点をおさえれば全体の流れがつかめます。あわせて青色申告のメリットを活かせば、節税にもつながります。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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