まとまった借入を返済する年の資金繰りと節税の両立を解説
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税金

まとまった借入を返済した年でも、経費になるのは利息だけで元本は経費にならないため、税金は思うほど減りません。「お金は減っているのに利益は出ている」というずれに備えるには、納税資金の取り分けと控除の活用が鍵です。返済と税金の関係、資金繰りと節税を両立させる打ち手を整理します。
返済の年に苦しくなるのは、税金の計算のもとになる「利益」と、自由に使える「手元のお金」がずれるためです。このずれの仕組みと、先回りの資金の備え方を知っておけば、申告直前に予想外の納税額であわてずに済みます。まずは返済と税金の関係から確認しましょう。
☑ 借入金をまとめて返した年なのに、思ったより税金が減らず戸惑っている
☑ 手元のお金は減っているのに利益が出ていることになり、資金繰りが苦しい
☑ 返済がある年こそ節税したいが、何から手をつければよいかわからない
事業のために借りたお金をまとまった額で返した年は、実際に通帳からは大きな金額が出ていきます。ところが確定申告をしてみると、思ったほど税金が減っていない、むしろ利益が出ていて納税額が大きい、と驚かれる個人事業主やフリーランスの方は少なくありません。「これだけ返したのに、なぜ経費にならないのだろう」という感覚は、多くの方が抱くものです。
以下では、借入金の返済と税金の関係を整理したうえで、返済が重い年に資金繰りと節税を両立させるための考え方と具体的な打ち手を確認します。返済の年に何を意識して動けばよいかを、順を追って見ていきましょう。
借入の返済と税金の関係を正しく理解する
返済した元本は経費にならない
まず押さえておきたいのが、借りたお金を返す「元本」の返済は、経費にはならないという点です。借入をしたときにその全額が収入(売上)になるわけではないのと同じように、返済したときも元本部分は経費として利益から差し引けません。あくまで「借りたお金を返しているだけ」という扱いになるためです。
ここが、返済の年に多くの方が戸惑う一番のポイントです。通帳からは毎月あるいはまとめて大きな金額が出ていくのに、その大部分(元本)は税金の計算に影響しません。だから「お金は減っているのに利益は出ている」という、実感とずれた状態が起きるのです。
経費になるのは利息部分だけ
一方で、返済額のうち利息(支払利子)の部分は経費になります。事業のための借入であれば、支払った利息は「利子割引料」として必要経費に計上できます。金融機関から届く返済予定表や返済のお知らせには、毎回の返済額が「元本部分」と「利息部分」に分かれて記載されていることがほとんどです。
まとめて繰上返済をした場合でも、経費にできるのはその中の利息相当額に限られます。元本を多く返したからといって、その分だけ税金が減るわけではない、という点を最初に理解しておくと、返済の年の見通しが立てやすくなります。
「利益」と「手元のお金」はずれるもの
返済の年に苦しさを感じるのは、税金の計算の対象である「利益(所得)」と、実際に自由に使える「手元のお金(キャッシュ)」が一致しないからです。利益が出ていれば税金はかかりますが、その利益の一部はすでに借入の返済に消えているため、納税資金が残っていない、という事態が起こり得ます。
利益(所得)…売上から経費を引いたもの。税金の計算のもと
手元のお金…実際に通帳に残っている使える資金
元本返済は手元のお金は減らすが、利益は減らさない
この「ずれ」を意識できるかどうかが、返済の重い年を乗り切れるかの分かれ目になります。
返済の年に資金繰りが苦しくなる仕組み
納税は返済とは別に必要になる
借入をまとめて返した年でも、利益が出ていれば所得税や住民税、国民健康保険料の負担はかかります。しかも住民税や国民健康保険料は前年の所得をもとに翌年に請求されるため、返済で手元が薄くなった翌年にこれらの支払いが重なることもあります。返済のことだけを見ていると、あとから来る納税や社会保険料の負担で資金繰りがさらに厳しくなることがあるのです。従業員や専従者への給与から源泉所得税を納めている事業者なら、納期の特例で資金繰りと節税を両立する方法で納付のタイミングを調整できます。
繰上返済でお金を使いすぎない
手元に余裕ができたときに、利息を減らそうとまとめて繰上返済をするのは、考え方としては悪いことではありません。ただし前述のとおり、元本の繰上返済は節税にはつながらず、手元のお金だけが減ります。返済を優先しすぎて納税資金まで使ってしまうと、いざ申告の時期にお金が足りない、という状況に陥りかねません。
繰上返済をする前に、その年の利益の見込みと、そこから発生する納税額のおよその金額を先に把握しておくことが大切です。「返済に回せるお金」と「納税のために取っておくお金」を分けて考える習慣をつけましょう。
納税資金は先に別に確保しておく
資金繰りを安定させるうえで有効なのが、利益が出ている月のうちに、納税用のお金をあらかじめ別の口座などに取り分けておく方法です。売上の入金があるたびに、その一部を「納税・社会保険料用」として避けておくと、返済で手元が薄くなっても、いざというときの支払いに慌てずに済みます。返済の年こそ、この「先取り」の発想が効いてきます。納税用の口座を分けて資金の動きを見える化する記帳は、ネット銀行・決済代行の入出金を記帳する実務でも紹介しています。
返済の重い年にできる節税の考え方
経費にできる利息を漏れなく計上する
まず基本として、支払った利息を経費として漏れなく計上することが大切です。返済予定表や金融機関からの通知で、その年に支払った利息の合計額を確認し、「利子割引料」として計上します。自宅兼事務所のように事業とプライベートが混ざっている借入の場合は、事業に使っている割合に応じて按分して経費にします。細かい金額に見えても、積み重なれば所得を押し下げる要素になります。
使える控除を取りこぼさない
返済で手元が苦しい年こそ、使える所得控除を取りこぼさないことが節税の近道です。代表的なものとして、次のような制度があります。
小規模企業共済…掛金の全額が所得控除になり、将来の退職金・廃業時の備えにもなる
iDeCo(個人型確定拠出年金)…掛金が全額所得控除になり、老後資金づくりにつながる
国民年金基金や付加年金…将来の年金を上乗せしつつ控除を受けられる
ただし、これらはいずれも実際にお金を払い込む制度です。返済で手元が薄いのに無理に大きな掛金を設定すると、かえって資金繰りを圧迫します。手元資金と相談しながら、無理のない範囲で活用するのが基本です。手元のお金を減らさずに効く節税から優先したいときは、節税策の費用対効果を見極める考え方で優先順位の付け方を整理しています。
青色申告のメリットを最大限に生かす
青色申告をしている方であれば、青色申告特別控除(最大65万円)を確実に受けることが、返済の年でも有効な節税策です。複式簿記で記帳し、e-Taxによる申告か電子帳簿保存の要件を満たすことで、65万円の控除が受けられます。お金の追加負担なしで所得を減らせる貴重な制度なので、要件を満たすように日々の記帳を整えておきましょう。控除額の要件は国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
また、青色申告には赤字を翌年以降(最長3年)に繰り越せる「純損失の繰越控除」もあります。設備投資などで一時的に赤字になった年があれば、翌年以降の黒字と相殺して税負担をならすことができます。青色申告制度の全体像は国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。
翌年以降を見据えた借入と申告の付き合い方
返済計画と利益の見通しをセットで持つ
借入とうまく付き合うコツは、返済のスケジュールと事業の利益の見通しを、いつもセットで考えることです。返済がいつ、いくらあるのかを把握し、その年にどれくらいの利益と納税が見込まれるかを大まかにでも見ておくと、資金がショートするリスクを早めに察知できます。金融機関からの返済予定表を手元に置き、年間の返済額と利息額を確認しておきましょう。返済と利益の見通しを早めにつかむには記帳がリアルタイムに近いことが前提で、ここを外注したい方は日々の記帳をプロに任せる記帳代行という方法もあります。
設備投資と減価償却をうまく使う
借入をして機械や車、設備などを購入した場合、その支出は購入した年に一度に経費になるのではなく、減価償却という形で複数年に分けて経費化されます。つまり、借入で買った資産の経費計上のタイミングと、実際の返済のタイミングはずれます。このずれを理解しておくと、「返済しているのに経費が少ない」という状況の背景が見えてきます。設備投資を検討する際は、減価償却で毎年どれくらい経費になるのかも合わせて確認しておくと、資金繰りの計画が立てやすくなります。
記帳を整えておくことが最大の備えになる
返済と納税、そして節税を両立させるための土台は、日々の記帳が正確に整っていることです。帳簿がリアルタイムに近い形で更新されていれば、今どれくらい利益が出ていて、納税がどの程度になりそうかを早めに見通せます。逆に、記帳が申告直前まで手つかずだと、返済で手元が薄い状態で予想外の納税額に直面し、慌てることになりかねません。返済の重い年こそ、こまめな記帳が資金繰りの安心につながります。帳簿を正確に保つことは、個人事業主の税務調査ガイドで解説する調査対応の面でも安心材料になります。
よくある質問
Q. 借入金をまとめて返済したのに税金が減らないのはなぜですか?
返済した金額のうち、経費になるのは利息部分だけで、元本部分は経費にならないためです。元本の返済は「借りたお金を返しているだけ」という扱いになり、利益(所得)の計算には影響しません。そのため、手元のお金は大きく減っても、税金はそれに比例して減るわけではないのです。
Q. 節税のために年末にまとめて繰上返済をするのは有効ですか?
節税という観点では、あまり効果はありません。繰上返済で減らせるのは主に元本で、元本は経費にならないためです。将来の利息負担を軽くする意味はありますが、税金を減らす目的で無理に繰上返済をすると、納税資金まで使ってしまう恐れがあります。節税をしたい場合は、小規模企業共済やiDeCo、各種控除の活用など、別の方法を検討するのが現実的です。
Q. 返済で手元にお金がなく、納税が難しいときはどうすればよいですか?
まずは慌てず、税務署に早めに相談することが大切です。事情によっては、納税を分割で行う制度や、納付の猶予といった仕組みを利用できる場合があります。放置すると延滞税が加算されていくため、支払いが難しいと感じた時点で早めに動くことが、結果的に負担を小さく抑えることにつながります。
結論:返済の年は「利益とお金のずれ」を意識して備える
まとまった借入を返済する年は、通帳からは大きな金額が出ていくのに、経費になるのは利息部分だけで元本は経費にならないため、「お金は減っているのに利益は出ている」という状態が起こりがちです。この利益と手元のお金のずれを理解し、納税資金を先に取り分けておくこと、そして使える控除や青色申告特別控除を取りこぼさないことが、資金繰りと節税を両立させるうえでの基本になります。
とはいえ、返済のスケジュールを見ながら利益と納税を見通し、日々の記帳まで正確に続けていくのは、本業が忙しい中では大きな負担です。数字が見えないまま申告直前を迎えて、予想外の納税額に慌ててしまう、というのは避けたいところです。
「返済の年で資金繰りが読みにくい」「利益と手元のお金のずれをきちんと把握したい」なら、記帳を任せて数字を見える化するのが近道です。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送・スマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から確定申告書類の作成までをトータルでサポートします。契約縛りはありません。まずは返済の年の資金繰りを記帳から見える化できるか相談する(無料)ところから。開始までの段取りはご利用の流れを確認すると分かります。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








