納期の特例で資金繰りと節税を両立する方法|源泉所得税の納付タイミングを解説
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税金

源泉所得税の納期の特例を使うと、毎月10日の納付を年2回にまとめられます。給与の支給人員が常時10人未満の事業者が対象で、事務負担が減り資金繰りにも余裕が生まれます。対象者・手続き・預かり金の管理までを順に整理します。
この特例は毎月12回の納付を年2回にまとめられる制度で、事務作業を大きく減らせます。ただし対象になる支払いは給与や一部の報酬に限られ、預かったお金を計画的に残しておく管理とセットで初めて安心して活かせます。仕組みと手続きを順に見ていきましょう。
☑ 従業員やフリーランスに支払う報酬から天引きした源泉所得税を、毎月納付するのが手間に感じる
☑ 「納期の特例」という制度を聞いたことはあるが、自分が使えるのかよくわからない
☑ まとまった納付額が一度に出ていくと資金繰りが苦しくなりそうで不安だ
人を雇ったり、専門家に報酬を支払ったりすると、その支払いから源泉所得税を天引きして国に納める義務が発生します。ところが原則どおりだと毎月10日が納付期限となり、少人数の個人事業主にとっては毎月の手続きが地味に大きな負担になりがちです。
その負担を年2回にまとめられる源泉所得税の納期の特例について、対象となる人、手続きの方法、そして資金繰りとの上手な付き合い方まで、順を追って確認します。自分が特例を使うべきかどうかを判断できるようになることを目指します。
源泉所得税と「納期の特例」の基本を知りましょう
そもそも源泉所得税とは
源泉所得税とは、給与や一定の報酬などを支払う側が、支払額からあらかじめ所得税を差し引いて、本人に代わって国に納める仕組みです。たとえば従業員に給与を払うとき、税理士やデザイナーなどに報酬を払うときに、支払者が天引きして納める形になります。差し引かれた人は、確定申告や年末調整でその分が精算されます。
大切なのは、天引きした源泉所得税は支払者が一時的に預かっているお金だという点です。自分の利益ではなく、期日までに国へ納めるべきものなので、納付を忘れると延滞税などのペナルティの対象になります。源泉徴収した税額を支払時にどう管理するかは源泉徴収と支払時の実務も参考になります。
原則は「翌月10日まで」の毎月納付
源泉所得税の原則的な納付期限は、給与や報酬を支払った月の翌月10日までです。たとえば1月に支払った分は2月10日まで、2月分は3月10日まで、というように毎月納付の手続きが必要になります。納付額が少額であっても、月ごとに納付書を作って金融機関などへ持っていく作業は、続けると意外に手間がかかります。
納期の特例とは「年2回」にまとめられる制度
源泉所得税の納期の特例は、この毎月の納付を年2回にまとめてよいとする制度です。具体的には、1月から6月までに天引きした分を7月10日まで、7月から12月までに天引きした分を翌年1月20日までに、それぞれまとめて納めます。毎月12回の手続きが年2回で済むため、事務作業がぐっと軽くなります。
納期の特例を使えるのはどんな人?
給与の支給人員が常時10人未満であること
納期の特例を利用できるのは、給与を支払う相手が常時10人未満の事業者です。ここでいう「人員」は、繁忙期に一時的に増える臨時の人を除いた、いつも雇っているおおよその人数で判断します。個人事業主やフリーランスで、家族や少人数のスタッフに給与を払っている方の多くは、この条件に当てはまります。
対象になるのは給与と一部の報酬
納期の特例で年2回納付にできるのは、すべての源泉所得税ではなく、対象が決まっています。主なものは次のとおりです。
従業員や専従者などに支払う給与・賞与から天引きした分
退職金から天引きした分
税理士・弁護士・司法書士などの士業への報酬から天引きした分
一方で、デザイナーやライターなどへの原稿料・デザイン料といった給与・退職金・士業報酬以外の報酬は、特例の対象外で原則どおり翌月10日納付となる点に注意が必要です。自分が天引きしている源泉所得税が、どの区分にあたるのかを整理しておきましょう。家族に支払う専従者給与の考え方は専従者給与とは何かで確認できます。
従業員がいなくても関係する場合がある
「従業員はいないから自分には関係ない」と思いがちですが、一人で事業をしている方でも、税理士など士業に報酬を払えば源泉徴収の義務が生じることがあります。継続して人に給与や対象報酬を支払う立場になったら、納期の特例を検討する価値があります。
納期の特例の申請手続きとタイミング
申請書を税務署に提出する
納期の特例を使うには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、事業所を管轄する税務署に提出します。書面のほか、e-Taxを利用して電子的に提出することもできます。申請書には、給与の支給人員や直近の支給額などを記入する欄があるので、給与台帳などを手元に用意しておくとスムーズです。電子申告はe-Tax(国税電子申告・納税システム)から行えます。納期の特例そのものの取り扱いは、国税庁のタックスアンサーでも確認できます。
適用が始まるタイミングに注意
申請書を出すと、原則として却下の通知がない限り、提出した月の翌月末日に承認があったものとして扱われます。そのため、特例による年2回納付が実際に始まるのは、提出した月の翌々月の納付分からとなるのが一般的です。提出した月の分や翌月分は、まだ原則どおりの納付が必要になることがあるため、申請直後の納付スケジュールは特に注意して確認しましょう。
一度申請すれば翌年以降も継続される
納期の特例は、いったん承認されれば、条件を満たし続ける限り翌年以降も自動的に継続します。毎年申請し直す必要はありません。ただし、給与の支給人員が常時10人以上になったときなど、要件を満たさなくなった場合には、その旨を税務署に届け出る必要があります。事業の規模が変わったときは、特例を続けてよいかを見直しましょう。
資金繰りと節税の両面でのメリット・注意点
メリット1:事務負担が大きく減る
最大のメリットは、納付の手続きが年12回から年2回に減ることです。毎月納付書を作成し、金融機関やe-Taxで手続きする時間が省けるため、本業に集中しやすくなります。少人数で事業を回している方ほど、この事務軽減の効果は大きく感じられるはずです。
メリット2:資金を手元に置く期間が長くなる
納付が年2回にまとまるということは、天引きした源泉所得税を国に納めるまで、その資金を一定期間手元に置けるということです。これにより、月々の支払いと納税のタイミングのズレを調整しやすくなり、資金繰りに余裕を持たせやすくなります。なお、ここでいう節税は税額そのものが減るわけではなく、納付の時期を後ろにずらすことでキャッシュフローを楽にする効果だと理解しておくと正確です。手元資金の流れを見える化する方法は資金繰り表の作り方にまとめています。
注意点:まとめ払いで一度の負担が大きくなる
裏を返せば、半年分が一度にまとまって出ていくため、納付月の負担は大きくなります。手元にお金があるからと使ってしまうと、いざ7月や1月の納付期限に資金が足りないという事態になりかねません。預かっている源泉所得税は、納付専用に分けて管理する意識が大切です。
天引きした源泉所得税を、別口座やメモで分けて把握しておく
7月10日・翌年1月20日の納付額を、毎月のうちから少しずつ意識して残しておく
納付期限をカレンダーや会計ソフトに登録し、うっかり忘れを防ぐ
納期の特例は便利な制度ですが、「預かったお金を計画的に残しておく」ことができて初めて、資金繰りのメリットを安心して活かせます。源泉徴収の計算や納付管理に加えて記帳・申告まで一人で抱えるのが難しいときは、申告まで通して任せる方法もあります。
納付を忘れないための実務のコツ
2つの納付期限を最初に押さえる
納期の特例を使う場合の納付期限は、1月〜6月分が7月10日、7月〜12月分が翌年1月20日の2回です。特に翌年1月20日の期限は、原則の毎月納付の「翌月10日」とは日付が異なるので、混同しないよう最初にしっかり覚えておきましょう。期限が土日祝にあたる場合は、翌平日にずれます。
給与台帳と納付書の金額を突き合わせる
納付額を間違えないためには、半年分の給与・賞与・対象報酬から天引きした源泉所得税を、給与台帳や帳簿で正確に集計することが欠かせません。月ごとの天引き額を記録しておけば、納付のタイミングで合計するだけで済みます。会計ソフトを使っている場合は、源泉所得税の集計機能を活用すると計算ミスを防ぎやすくなります。賞与や給与からの天引きの実務は賞与・給与の源泉徴収の実務が参考になります。
期限を過ぎたときのリスク
納付が期限に遅れると、不納付加算税や延滞税が課される場合があります。預かっているお金を期日までに納めなかったことに対するペナルティなので、できる限り避けたいところです。年2回しか機会がないぶん、一度忘れると影響が大きくなりがちです。期限が近づいたら早めに準備を始めましょう。
よくある質問
Q. 納期の特例を申請した後で、原則の毎月納付に戻すことはできますか?
はい、できます。納期の特例の適用を取りやめたい場合は、その旨を記載した届出書を税務署に提出することで、原則の毎月納付に戻すことができます。また、給与の支給人員が常時10人以上になった場合には、要件を満たさなくなるため届け出が必要です。事業の状況に合わせて見直しましょう。
Q. デザイナーやライターへの報酬も年2回にまとめてよいですか?
いいえ。納期の特例の対象になるのは、給与・退職金、および税理士や弁護士など一部の士業への報酬から天引きした分です。デザイン料や原稿料といったそれ以外の報酬から天引きした源泉所得税は、原則どおり翌月10日までの納付が必要です。同じ「報酬」でも区分によって扱いが違う点に注意してください。
Q. 半年間まったく支払いがなく、天引きした税額がゼロの場合はどうすればよいですか?
納付すべき税額がゼロであっても、納付額がない旨を記載した納付書(いわゆる「ゼロ納付」)を税務署に提出するのが基本的な取り扱いです。提出を省いてよいかどうか迷う場合は、税務署や専門家に確認すると安心です。何も手続きをしないと、納付漏れと誤解されることを防ぐ意味でも、対応を確認しておきましょう。
納期の特例で迷ったときの結論
源泉所得税の納期の特例は、毎月の納付を年2回にまとめられる制度で、給与の支給人員が常時10人未満の事業者が対象です。事務負担を減らせるうえ、資金を手元に置く期間が長くなるため資金繰りにも余裕が生まれますが、その効果は「預かったお金を計画的に残しておく」ことができて初めて安心して活かせます。申請のタイミングや2つの納付期限を押さえ、半年分をまとめて納める準備を計画的に進めることが、トラブルを防ぐ一番のポイントです。
それでも、源泉徴収の計算や納付スケジュールの管理に加えて、本業が忙しい中で日々の記帳から確定申告までを一人で行うのは、決して小さくない負担です。数字の集計や期限の管理に追われて、肝心の事業がおろそかになっては本末転倒です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








