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短期前払費用と決算賞与で利益を調整する節...

2026/9/8

短期前払費用と決算賞与で利益を調整する節税テクニックを解説

  • 税金

短期前払費用は1年分を前払いして当期の費用に、決算賞与は従業員への還元で当期の利益を圧縮する手法です。いずれも実際の支出を伴うため、節税効果だけでなく資金繰り・継続性・自社に合った要件をセットで考えることが失敗しないコツです。

事業が順調に伸びてくると、うれしい反面、決算が近づくにつれて「思ったより利益が出ている=税金が増える」という現実に頭を悩ませる方は少なくありません。できるだけ無駄なく税負担を抑えたいと感じるのは自然なことです。

☑ 今期は予想以上に利益が出てしまい、このままでは税金が高くなりそうで困っている

☑ 「短期前払費用」や「決算賞与」が節税になると聞いたが、仕組みや要件がよくわからない

☑ 決算間際でもできる、無理のない利益調整の方法を知りたい

ここでは、決算前の利益調整に使える代表的な手法である「短期前払費用」と「決算賞与」について、その仕組みと要件、注意点を整理します。自分の事業で使えそうかどうかを判断する手がかりがつかめるはずです。

そもそも「利益を調整する節税」とは何か

節税と利益の関係をおさえる

所得税や法人税は、おおまかにいえば「利益(所得)」に税率を掛けて計算します。つまり、その年の利益が大きければ税金も増え、利益が小さくなれば税金も減るという関係です。利益調整の節税とは、このうち本来その期に支払う予定だった費用を前倒しで計上したり、賞与として従業員に還元したりすることで、課税対象となる利益を適正に圧縮する考え方を指します。必要経費の基本的な考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」で確認できます。

大切なのは、これは「お金を使わずに税金だけを減らす魔法」ではないという点です。あくまで実際の支出やお金の動きを伴うものであり、無計画に使えば資金繰りを悪化させてしまいます。あくまで「どうせ近いうちに支払う費用」「従業員に報いたい利益」がある場合に、そのタイミングを工夫する手法だと理解しておきましょう。

「課税の繰り延べ」と「純粋な節税」の違い

節税を考えるうえで知っておきたいのが、「課税の繰り延べ」と「純粋な節税」の違いです。短期前払費用のように費用を前倒しする手法は、その期の税金は減りますが、翌期以降に計上できた費用を先に使ってしまう側面があり、トータルで見ると税金の支払い時期を後ろにずらす「繰り延べ」の性格が強いものです。

一方、決算賞与のように従業員へ実際に支払われ、社内に利益が戻らない支出は、その分が純粋に費用として残ります。どちらが良い悪いではなく、自分の目的が「今期の納税額を抑えたい」のか「長期的な手取りを増やしたい」のかを意識して使い分けることが、賢い利益調整の第一歩になります。

短期前払費用とは|1年分を前払いして当期の費用にする

原則と特例の関係

前払費用とは、家賃や保険料、サブスクリプション料金のように、契約に基づいて継続的にサービスを受けるために前もって支払う費用のことです。会計の原則では、前払いした費用は「サービスを受けた期間に対応する分だけ」その期の費用にできるのがルールです。たとえば3月決算の事業者が、翌期分まで含めた1年分の家賃を当期末にまとめて払っても、原則として当期の費用にできるのは当期に対応する部分だけです。

ところが、一定の要件を満たす「短期前払費用」については、支払った全額を支払った年(期)の費用として処理してよいという特例が認められています。これを使うと、本来は翌期の費用になるはずだった金額を当期に前倒しでき、その分だけ当期の利益を圧縮できるわけです。

短期前払費用として認められる主な要件

この特例を使うには、いくつかの条件を満たす必要があります。代表的なポイントは次のとおりです。

  • 一定の契約に従って継続的にサービスの提供を受けるための費用であること(家賃、保険料、リース料、顧問料、サブスク料金など)

  • 支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものであること

  • 実際にその費用を支払っていること(未払いのままではなく、現実に支出していること)

  • 毎期継続して同じ会計処理を行うこと(その年だけ都合よく使い、翌年は元に戻すような処理は認められません)

逆に、「収益と対応させる必要がある費用」や、サービスの提供がまだ等質・等量に行われていないものなどは、この特例の対象になりにくいとされています。判断に迷うものは、安易に当期費用にせず専門家に確認すると安心です。

具体的な使い方のイメージ

たとえば、毎月10万円の事務所家賃を支払っている事業者が、決算月に大家さんと合意のうえで翌期1年分(120万円)をまとめて前払いしたとします。要件を満たせば、この120万円を当期の費用に計上でき、当期の利益をその分圧縮できます。年払い契約に切り替えられる顧問料や保険料、ソフトウェアの利用料なども同様に検討の余地があります。年払い契約の前払費用の試算は、短期前払費用と年払いの試算で扱っています。

ただし注意したいのは、前倒しできるのは原則として「1年分」が上限のイメージである点です。「2年分」「3年分」をまとめて払っても、1年を超える部分はこの特例の対象になりません。また、一度この処理を始めたら毎期続ける必要があるため、初年度だけ大きく払って翌年は減らす、といった使い方はできないと考えておきましょう。

決算賞与とは|従業員への賞与で利益を還元する

決算賞与の基本的な考え方

決算賞与とは、その期の業績に応じて決算前後に従業員へ支給する賞与のことです。利益が出た分を従業員に還元することで、課税対象の利益を圧縮しつつ、従業員のモチベーション向上にもつなげられる点が大きな特徴です。短期前払費用が「時期の繰り延べ」に近いのに対し、決算賞与は実際に社外へ支払われるため、純粋に費用として残る支出になります。決算賞与や在庫を使った決算期の節税は、決算賞与・在庫の節税でくわしく解説しています。

従業員を雇っている事業者にとっては、「税金として納めるくらいなら、頑張ってくれた従業員に還元したい」という思いを形にできる、前向きな利益調整の手段といえます。

未払いでも当期の費用にできる「未払計上」の要件

決算賞与のメリットの一つは、決算日までに実際に支払っていなくても、一定の要件を満たせば当期の費用(未払金)として計上できる場合がある点です。一般に、次のような条件をすべて満たすことが求められます。

  • 決算日までに、支給額を各従業員ごとに個別に通知していること

  • その通知した金額を、原則として決算日の翌日から1か月以内に実際に支払っていること

  • その支給額を、通知した期の費用として経理処理していること

つまり「誰にいくら払うかを決算までに本人へ伝え、決算後すぐに実際に支払う」という流れを、書面などの記録を残しながら確実に行うことがポイントです。口頭で伝えただけで証拠が残っていないと、税務調査の際に当期の費用と認められないおそれがあります。

支給時に忘れてはいけない社会保険・源泉徴収

決算賞与を支給する際は、税金だけでなく、社会保険料や源泉所得税の取り扱いにも注意が必要です。賞与にも社会保険料がかかり、事業主負担分が発生します。また、支給時には源泉所得税を差し引いて納付する義務があります。賞与の源泉徴収や社会保険の実務は、賞与・給与の源泉徴収の実務が参考になります。賞与額そのものに加えてこれらの負担も発生することを見込んだうえで、無理のない金額を設定しましょう。資金繰りと手続きの両面から、支給前に全体像を確認しておくことが大切です。

節税を実行する前に確認したい注意点

「資金繰り」を最優先で考える

短期前払費用も決算賞与も、税金を減らす効果がある一方で、実際にお金が出ていくという共通点があります。たとえば、税率がかりに30%程度だとすると、100万円の費用を前倒ししても、減る税金はそのうちの一部にとどまり、残りは純粋に手元から出ていく支出です。「税金を10万円減らすために100万円使う」ことになっては本末転倒です。節税のために資金繰りを苦しくしてしまっては意味がありません。手元資金に余裕があるかを必ず先に確認しましょう。決算前の節税判断の前提になる帳簿づくりや申告を任せたいときは、確定申告の代行を利用する手もあります。

毎期の継続と一貫性を意識する

特に短期前払費用は、いったん採用したら毎期同じ処理を続ける必要があります。「利益が出た年だけ前払いし、出なかった年は元に戻す」という使い方は認められません。一時的なその場しのぎではなく、自社の支払いサイクルとして無理なく続けられるかを考えてから取り入れるのが安全です。

個人事業主と法人で扱いが異なる場合がある

これらの手法は法人だけでなく個人事業主でも活用できますが、細かな取り扱いが異なる場合があります。たとえば決算賞与に近い考え方でも、個人事業主が「生計を一にする家族(専従者)」へ支払う賞与については、事前の届出など別のルールが関わってきます。自分が個人事業主なのか法人なのか、また家族へ支払うのか第三者の従業員へ支払うのかによって、満たすべき要件が変わる点に注意しましょう。判断に迷ったら、自己流で処理する前に専門家へ相談することをおすすめします。

よくある質問

Q. 短期前払費用は、どんな費用でも前払いすれば認められますか?

いいえ、すべての費用が対象になるわけではありません。家賃・保険料・顧問料・サブスク料金のように「契約に基づき継続的にサービスを受ける費用」で、支払日から1年以内にサービスを受けるものが基本です。一方、商品の仕入れ代金や、収益と対応させる必要がある費用などは対象になりにくいとされています。また「1年を超える分の前払い」は特例の対象外です。迷ったときは個別に確認するのが安全です。

Q. 決算賞与は決算日までに必ず支払わないといけませんか?

必ずしも決算日までに支払う必要はありません。決算日までに各従業員へ支給額を個別に通知し、決算日の翌日から原則1か月以内に実際に支払い、当期の費用として経理処理する、という要件を満たせば、未払いの状態でも当期の費用に計上できる場合があります。ただし、通知の記録を残すなど、後から証明できる形にしておくことが重要です。

Q. 利益が出たら、とにかく経費を使えば節税になりますか?

「経費を使えば使うほど得」という考え方は危険です。費用を増やせば税金は減りますが、減るのはあくまで税率分にとどまり、残りは実際に出ていくお金です。本当に必要な支出や、将来の投資につながる支出かどうかを見極めることが大切です。節税はあくまで手段であり、事業の成長と資金の健全さを損なわない範囲で行うのが基本です。

結論:節税は「使うべきお金を、正しいタイミングで」

短期前払費用は当期に費用を前倒しして利益を圧縮する手法、決算賞与は従業員への還元を通じて利益を圧縮する手法です。いずれも実際の支出を伴うため、節税効果だけに目を向けるのではなく、資金繰り・継続性・自社に合った要件を満たせるかをセットで考えることが、失敗しない利益調整のコツです。

とはいえ、これらの判断には日々の帳簿が正確に整っていることが大前提です。決算が近づいてから慌てて数字をかき集めるようでは、前払いの要件確認や賞与の通知・支払いまで手が回らず、せっかくの節税のチャンスを逃しかねません。普段から記帳が追いついている状態をつくっておくことが、結果として最良の節税対策につながります。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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