期末の経費前倒しで節税する方法と翌期への影響を見極めるコツを解説
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税金

利益が大きく出た年の経費前倒しは、税負担をならせる有効な節税策です。ただし本質は税金の繰り延べで、出ていくお金は実際の支出です。前倒しできる経費の具体例と、翌期への影響を見極めるコツまで、具体例をまじえて整理します。
12月(個人事業主の場合は12月31日が期末)が近づき、想定より利益が出ていることに気づくと、「このまま申告すると税金が高くなりそうだ」と焦ってしまう方は少なくありません。そんなとき真っ先に思い浮かぶのが、期末までに使えるお金を経費として支払っておく「経費の前倒し」ではないでしょうか。
☑ 今期は利益が大きく出そうなので、期末までに経費を前倒しして税金を抑えたい
☑ 「経費の前倒し」と聞くけれど、具体的に何をどこまでやってよいのかわからない
☑ 今年だけ得をしても、翌年に反動が来てかえって損をしないか不安だ
利益が出た年にできる経費前倒しの具体策と、その効果を正しく見積もる考え方、見落としがちな翌期への影響までを順に整理します。無理のない範囲でできる節税策と、やってはいけないラインの両方が見えてきます。
期末の経費前倒しが節税になる仕組み
そもそも「経費を前倒しする」とはどういうこと?
個人事業主の税金は、1年間(1月1日〜12月31日)の所得(もうけ)に対してかかります。所得は「売上などの収入から必要経費を差し引いた金額」なので、同じ売上でも経費が増えれば所得は小さくなり、その分だけ所得税や住民税、国民健康保険料の負担が軽くなります。
「経費の前倒し」とは、本来であれば翌年に支払う予定だった費用のうち、今年中に支払っても問題ないものを今年のうちに支払い、今年の経費として計上することを指します。利益が大きく出た年に経費を厚くすることで、その年の税負担をならす効果が期待できます。
節税効果は「税率」で決まる
前倒しした経費がどれくらい税金を減らすかは、その年の所得にかかる税率しだいです。所得税は所得が大きいほど税率が高くなる累進課税のため、利益がよく出た年ほど、追加した経費1万円あたりの節税効果も大きくなります。所得に応じた税率の刻みは、国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」で確認できます。
たとえば、所得税と住民税を合わせた実効的な税率がおおよそ3割前後の人であれば、10万円の経費を前倒しすると、ざっくり3万円前後の税金を抑えられる計算になります。ただし、これはあくまで目安です。実際の効果は所得金額や各種控除によって変わるため、「使った金額がそのまま戻ってくる」わけではない点には注意が必要です。
「お金は出ていく」ことを忘れない
ここで大切なのは、節税のために前倒しした経費はあくまで実際に支払ったお金だということです。10万円の経費で3万円の税金が減ったとしても、手元からは差し引き7万円が出ていきます。本当に必要な支出を前倒しするなら問題ありませんが、「税金を減らすためだけに不要なものを買う」のは、かえって資金を減らす行為になりかねません。節税は手段であって、目的ではないことを意識しておきましょう。
どの支出を今年の経費に入れてよいかを一つずつ確認していくのは、本業のかたわらでは骨の折れる作業です。前倒しの判断ごと記帳を任せたいときは、何枚でも定額の記帳代行の料金を確認しておくと選びやすくなります。
期末に前倒ししやすい経費の具体例
消耗品・備品のまとめ買い
事業で日常的に使う消耗品は、前倒ししやすい代表例です。文房具、梱包資材、コピー用紙、インクなど、近いうちに必ず使うものを期末までに購入しておけば、その年の経費に計上できます。
翌年も確実に使う消耗品を、無理のない量だけまとめ買いする
パソコン周辺機器など、買い替え時期が近い備品を前倒しで購入する
仕事用のソフトやサブスクの年払いを、期末までに済ませる
なお、原則として「実際に使った分」が経費になりますが、毎年おおむね一定量を消費する事務用消耗品などについては、買った年に経費として処理することが認められる扱いもあります。大量に買い込んで翌年以降に持ち越すような買い方は、税務上も指摘を受けやすいため避けましょう。
修繕やメンテナンスを早める
店舗や事務所、仕事用の車両などで、近いうちに予定している修繕やメンテナンスを期末までに実施しておくのも一つの方法です。壊れた箇所の修理や、機能を元に戻すためのメンテナンスにかかる費用は「修繕費」として経費にできます。
ただし、価値を高めたり耐用年数を延ばしたりするような大がかりな工事は、修繕費ではなく「資本的支出」として扱われ、その年に全額を経費にできず減価償却で数年に分けて費用化するケースがあります。単なる原状回復なのか、グレードアップなのかで取り扱いが変わる点に注意しましょう。
広告宣伝や研修への投資
翌年の売上につなげるための広告出稿や、スキルアップのための研修・書籍購入なども、期末に前倒しできる支出です。これらは単なる節税ではなく、翌年以降の事業成長への投資にもなります。利益が出た年に、将来のための支出を厚めに行うという考え方は、資金繰りの面でも合理的です。
「短期前払費用」を使った前倒しの注意点
家賃などの年払いで使える特例
本来、前払いした費用は「サービスを受けた期間」に対応させて経費にするのが原則です。たとえば家賃を1年分まとめて前払いしても、原則は当年分だけが今年の経費になります。
ただし、一定の条件を満たす継続的なサービスについては、支払った全額をその年の経費にできる「短期前払費用」という特例があります。地代家賃、保険料、サブスク料金などで、支払日から1年以内にサービスの提供を受けるものが対象になり得ます。適用の要件と年払いの効果は、短期前払費用の使い方と年払いの試算で具体的に確認できます。
使うための主な条件
毎月や毎年といった、継続的・等質のサービスであること
支払った日から1年以内に提供を受けるものであること
いったんこの処理を始めたら、毎年同じ方法で続けること
注意したいのは、収益と直接ひもづくような費用(仕入れに近いものなど)には使えないことや、「今年だけ前払いして来年はやめる」といった都合のよい使い分けが認められない点です。一度この方法を採用したら継続が前提になるため、来年以降も同じ資金繰りが続けられるかを考えてから始めましょう。
「30万円未満」の少額減価償却資産の特例
高額な備品は、本来であれば減価償却で数年かけて経費にしますが、青色申告をしている個人事業主であれば、1個(1組)あたり30万円未満の資産を、その年に一括で経費に計上できる特例があります(年間の合計額に上限あり)。減価償却の基本的な仕組みは、国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」で確認できます。運用のこまかな管理は少額減価償却資産の特例(30万円未満)の管理が参考になります。期末に仕事用のパソコンや機材を購入する際は、この特例を活用すると、その年の経費を大きくできます。利益が出た年の設備投資と相性のよい制度です。
翌期への影響を見極めるコツ
「前倒し」は税金の繰り延べでもある
経費の前倒しは、多くの場合「今年払うはずだった税金を来年以降に先送りする」性質を持っています。今年経費にした分は、翌年の経費としては使えません。つまり、翌年の利益が今年と同じくらい出るなら、今年下げた税金の一部は翌年に戻ってくる、というイメージです。
そのため、前倒しが本当に得になるのは、今年だけ特別に利益が大きく、来年は落ち着く見込みがあるようなケースです。毎年同じくらいの利益が続くのであれば、効果は薄まりやすいことを理解しておきましょう。
翌期の資金繰りを先にシミュレーションする
期末にまとめて支出すると、その分だけ手元の現金は減ります。年明けには国民健康保険料や住民税、所得税の納付も控えています。節税に気を取られて手元資金が不足し、翌期のはじめに資金繰りが苦しくなっては本末転倒です。前倒しを検討するときは、次のような点を先に確認しておきましょう。
来年の税金・社会保険料の納付見込み額を払えるだけの現金が残るか
売上の入金が遅れても、数か月は事業を回せる余裕があるか
前倒しした支出が、翌年の経費の「空白」を生まないか
無理に経費を作らないという選択
利益が出ているのは、本来は事業が順調だという良いサインです。税金を払うことは、それだけもうけが出た証でもあります。手元資金を厚く残して翌年の投資や不測の事態に備えることも、立派な経営判断です。「節税できる」ことと「節税すべき」ことは必ずしも一致しないと心得て、自分の事業の状況に合った判断をしましょう。
前倒しと合わせて検討したい制度
小規模企業共済や倒産防止共済
支払ったお金が手元から完全に消えてしまう経費とは違い、将来戻ってくる可能性のある制度を使った節税もあります。代表的なのが、廃業や引退に備える小規模企業共済と、取引先の倒産に備える経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。掛金が所得控除や経費になりつつ、将来的に受け取れる仕組みのため、利益が出た年の選択肢として検討する価値があります。掛金の水準ごとの効果は、小規模企業共済で節税する場合のシミュレーションや経営セーフティ共済の掛金と節税シミュレーションが参考になります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
老後の資金づくりをしながら、支払った掛金が全額所得控除になるのがiDeCoです。経費の前倒しと違って事業のお金が出ていくわけではなく、自分の将来の資産として積み立てられます。ただし原則60歳まで引き出せないため、当面の資金繰りに余裕があるかを踏まえて検討しましょう。
よくある質問
Q. 12月に注文した備品が、届くのが翌年になりそうです。今年の経費にできますか?
経費は原則として「その年に使えるようになった(引き渡しを受けた)」かどうかで判断します。注文や支払いを今年中に済ませても、実際に納品されるのが翌年になる場合は、今年の経費にならないことがあります。期末ぎりぎりの購入は、年内に納品・利用開始まで間に合うかを確認しておくと安心です。
Q. 前倒しでクレジットカード払いにした場合、引き落としは翌年でも今年の経費になりますか?
事業用の支払いをクレジットカードで行った場合、原則としてカードを使って商品やサービスの提供を受けた日が基準になります。引き落とし日が翌年であっても、年内に利用していれば今年の経費として計上できるのが一般的です。利用日がわかる明細を必ず保管しておきましょう。
Q. 節税のために決算前にとにかく経費を増やせばよいのでしょうか?
必ずしもそうとは言えません。前倒ししても出ていくお金は実際の支出であり、戻ってくるのは税率分だけです。本当に必要な支出を前倒しするのは合理的ですが、不要なものを買うのは資金を減らすだけになりがちです。手元資金とのバランスを見ながら、必要な範囲で行うことが大切です。
まとめ|前倒しは「必要な支出を、得なタイミングに」
期末の経費前倒しは、利益が大きく出た年に税負担をならすための有効な手段です。ただし、その本質は税金の繰り延べであり、出ていくお金は実際の支出だという点を忘れてはいけません。消耗品のまとめ買いや短期前払費用、少額減価償却資産の特例などをうまく使いつつ、翌期の資金繰りまで見据えて「必要な支出を、得なタイミングで行う」のが賢い進め方です。
とはいえ、どの支出が今年の経費になるのか、特例の条件を満たしているのかを一つずつ確認しながら帳簿に反映し、申告書まで仕上げるのは、本業が忙しい中では大きな手間になりがちです。判断に迷ったまま処理を進めて、後から修正に追われるケースも少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








