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2026/8/11

小規模企業共済の増額・減額を使った所得の年度間調整術を解説

  • 税金

小規模企業共済の掛金は全額所得控除になり、年の途中でも増額・減額や前納ができます。利益が大きい年は控除を厚くし、少ない年は負担を軽くすることで、上下しやすい個人事業の所得を年度ごとにならす方法を整理します。

個人事業主やフリーランスの方にとって、小規模企業共済は「掛金がまるごと所得控除になる」という大きな節税メリットを持つ制度です。すでに加入している方も多い一方で、いったん決めた掛金をそのままにしている方が少なくありません。実は、この掛金は年の途中でも増やしたり減らしたりでき、その仕組みを上手に使うと、利益のブレが大きい個人事業の所得を年度ごとにならして調整できます。

☑ 小規模企業共済に入っているが、掛金を毎年同じ額のままにしている

☑ 利益が大きく出た年と少ない年で、掛金を調整できると聞いたが方法がわからない

☑ 増額や減額の手続きをすると、何か損をしないか不安だ

小規模企業共済の増額・減額の基本ルールと、所得が多い年・少ない年でどう掛金を動かすと節税につながるのかを整理しました。自分の事業の状況に合わせた掛金の調整イメージがつかめるよう、順に見ていきます。

小規模企業共済の基本と節税の仕組み

そもそも小規模企業共済とは

小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社の役員が、廃業や引退に備えて積み立てておくための制度です。国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、いわば「事業主のための退職金制度」と考えるとわかりやすいでしょう。毎月一定額を積み立て、廃業や65歳以降の老齢給付などのタイミングで共済金として受け取る形になります。

掛金が全額所得控除になるのが最大の特徴

この制度の最大の魅力は、支払った掛金がその年の全額、所得控除の対象になる点です。生命保険料控除のように上限で頭打ちになることがなく、支払った分がそのまま「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。所得が減れば所得税も住民税も少なくなるため、掛金を支払いながら税負担を軽くできる、という二重のメリットがあります。掛金による節税額の試算は小規模企業共済の節税シミュレーションで具体的に確認できます。

掛金の範囲と払い方

掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲で、500円きざみで自由に設定できます。年間にすると最大で84万円を所得から差し引ける計算です。納付方法は月払い・半年払い・年払いから選べ、口座振替で支払うのが一般的です。

  • 掛金は月1,000円〜70,000円(500円単位)で設定できる

  • 支払った掛金は全額が所得控除になる

  • 月払い・半年払い・年払いから納付方法を選べる

掛金は年の途中で増額・減額できる

増額・減額はいつでも申し込める

小規模企業共済の掛金は、加入したときの金額に固定されるわけではありません。年の途中であっても、所定の手続きをすれば増額も減額も可能です。事業が好調で利益が大きく出そうな年は増額し、反対に売上が落ち込んだ年や資金繰りが厳しい年は減額する、といった調整が認められています。これが、所得を年度ごとにならすうえでの鍵になります。

増額・減額の手続きの流れ

掛金を変更したいときは、中小機構所定の「掛金月額変更申込書」を提出します。多くの場合、加入時に窓口となった金融機関や委託団体を通じて手続きします。変更が反映されるまでには一定の期間がかかるため、年内の所得に反映させたい場合は、年末ぎりぎりではなく余裕をもって動くことが大切です。具体的な締め日や反映時期は変わり得るので、手続き前に中小機構や窓口に確認しておくと安心です。

前納(まとめ払い)という方法もある

掛金には「前納」という仕組みもあります。これは翌年以降の掛金を前もってまとめて支払う方法で、前納した分も支払った年の所得控除に含めることができます。たとえば年末に翌年分を前納すれば、その年に控除できる金額を上乗せできます。利益が多く出た年に控除額を増やしたいときの選択肢として覚えておくとよいでしょう。なお、前納には一定のルールがあるため、利用する際は事前に内容を確認しておきましょう。

所得の多い年・少ない年での使い分け

利益が大きく出た年は「増額・前納」で控除を厚く

個人事業の所得税は、所得が増えるほど税率も上がる累進課税の仕組みです。所得税の税率の刻みは国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」(国税庁)で確認できます。そのため、利益が大きく出た年ほど、同じ金額を控除したときの節税効果も大きくなります。好調な年には掛金を増額したり、翌年分を前納したりして、その年の所得控除を厚くするのが基本の考え方です。これにより、課税される所得を抑えながら、将来の資金を積み立てることができます。

利益が少ない年・赤字の年は無理をしない

反対に、売上が落ち込んだ年や資金繰りが苦しい年は、掛金を減額して負担を軽くするのも有効です。注意したいのは、所得控除は所得があってこそ効果を発揮するという点です。もともと課税される所得が小さい年や赤字の年は、掛金を支払っても節税効果は限定的になります。そうした年に無理に高い掛金を払い続けると、手元の資金を圧迫するだけになりかねません。利益の状況に応じて柔軟に増減させる、という発想が大切です。

年度間で所得をならすイメージ

個人事業は、年によって利益が大きく上下することが珍しくありません。掛金の増額・減額を組み合わせると、利益が多い年は控除を増やして所得を抑え、少ない年は掛金を抑えて手元資金を確保する、というように所得の波をならすことができます。

  • 利益が多い年 … 増額や前納で控除を厚くし、高い税率がかかる所得を圧縮する

  • 利益が少ない年 … 減額して負担を抑え、手元の資金を確保する

  • 赤字が見込まれる年 … 控除のメリットが小さいため、掛金は最小限にとどめる選択肢もある

調整するときの注意点

減額にはデメリットもある

掛金の減額は資金繰りの面では助けになりますが、注意すべき点もあります。減額した場合、減額前の掛金で積み立てていた一部の金額は、その後運用されずに据え置かれる扱いになることがあります。つまり、安易な減額を繰り返すと、将来受け取る共済金が思ったより増えにくくなる可能性があります。減額は「どうしても負担が重い年」に限るなど、計画的に行うのが望ましいでしょう。

解約・受け取り時の税金も意識する

掛金を支払う段階では全額が所得控除になりますが、共済金を受け取る段階では課税の対象になります。ただし、廃業や引退にともなって一括で受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得として扱われ、いずれも税制上の優遇が用意されています。「支払うときに控除し、受け取るときは優遇された区分で課税される」という全体像を知っておくと、増額・減額の判断もしやすくなります。

納付期間が短いうちの任意解約は不利

事業を続けているのに自己都合で任意解約する場合、納付した期間が短いと、受け取れる解約手当金が支払った掛金の合計を下回ることがあります。短期的な節税だけを目的に加入と解約を繰り返すような使い方には向いていません。あくまで長期で積み立てる制度であることを前提に、その中で増額・減額をうまく活用する、と考えるのが基本です。

ほかの制度との組み合わせ

iDeCo(個人型確定拠出年金)との違い

掛金が所得控除になる似た制度に、iDeCoがあります。どちらも将来に備えながら節税できる点は共通していますが、小規模企業共済は廃業や引退に備える「事業主の退職金」、iDeCoは老後資金を運用しながら準備する制度、という性格の違いがあります。両方に加入して、それぞれの控除を活用することも可能です。iDeCoの掛金と節税の関係はiDeCoの掛金と所得控除で確認できます。掛金の上限や受け取り方が異なるため、自分の事業や老後設計に合わせて使い分けるとよいでしょう。

青色申告とあわせて全体で考える

所得を抑える方法は、小規模企業共済の掛金だけではありません。青色申告特別控除(最大65万円)や、経費の適切な計上などとあわせて、年間の所得を全体として組み立てる視点が大切です。共済の掛金はその中でも調整の自由度が高い項目なので、ほかの控除や経費の見込みを踏まえて、最後に増額・減額で微調整する、という順番で考えると整理しやすくなります。控除を効かせる順番の考え方は手取りを最大化する控除の順番が参考になります。こうした年間の所得の見通しを立てる前提として、日々の記帳を任せたいときは記帳代行のしくみも選択肢になります。

よくある質問

Q. 増額や減額に手数料はかかりますか?

掛金の増額・減額そのものに手数料はかからないのが一般的です。所定の申込書を提出すれば変更でき、回数の制限も基本的にはありません。ただし、変更が反映されるまでには時間がかかるため、その年の所得に反映させたい場合は早めに手続きをしておきましょう。

Q. 年末に「今年は利益が多い」と気づいたら、まだ控除を増やせますか?

年内の納付に間に合えば、増額や前納によってその年の控除額を増やせる可能性があります。ただし、手続きから反映までに一定の期間が必要なため、年末ぎりぎりだと間に合わないこともあります。利益の見通しは早めに立て、余裕をもって動くことをおすすめします。締め日などの詳しい条件は中小機構や窓口にご確認ください。

Q. いったん減額した掛金を、また増額し直すことはできますか?

はい、可能です。減額した後、事業が回復した年に再び増額する、といった調整もできます。ただし、減額していた期間の積み立てが将来の受取額に影響することもあるため、頻繁に上げ下げするより、事業の見通しに応じて計画的に変更するのが望ましいでしょう。

まとめ|掛金の増減で所得の波をならす

小規模企業共済は、掛金が全額所得控除になるうえ、年の途中でも増額・減額や前納ができる柔軟な制度です。利益が大きい年は控除を厚くして高い税率がかかる所得を抑え、少ない年は負担を軽くするという使い分けによって、上下しやすい個人事業の所得を年度ごとにならすことができます。ただし減額のデメリットや受け取り時の税金もあるため、短期の節税だけでなく長期の視点で計画的に活用することが大切です。

その年の利益がどれくらいになるかを正確に見積もるには、日々の帳簿が整理されていることが前提になります。本業が忙しい中で、記帳から所得の見通し、申告書の作成までをすべて自分で行うのは、大きな負担になりがちです。領収書丸投げドットコムは、領収書・請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、記帳から確定申告書類の作成までを代行します。利益の見通しが立つ帳簿を、税理士監修のもとで整えます。掛金の調整に使える利益の見通しを手に入れる方法を相談する(相談は無料です)。申告そのものを任せたい方は確定申告代行の内容もご確認ください。

【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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