高額な機材を買うときの節税|減価償却と特例の選び方を解説
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税金

高額な機材は原則として買った年に全額を経費にできず、減価償却で数年に分けます。一方、10万円以上20万円未満なら3年均等の一括償却資産、青色申告なら30万円未満を一括経費にできる特例もあります。金額と利益で選び方を整理します。
仕事のために高性能なカメラや編集用パソコン、業務用工具などを買うのは珍しくありません。ところが確定申告で経費にしようとすると「これは一度に全部は落とせません」と言われ、戸惑うことも。機材を買うときに何を意識すればよいか、判断の軸を持っておきましょう。
☑ 高額なカメラやパソコンを買ったのに、全額を経費にできなくて驚いた
☑ 減価償却という言葉は聞くけれど、計算のしくみがよくわからない
☑ 特例で一括経費にできると聞いたが、自分が使えるのか自信がない
仕事のために高性能なカメラ、編集用のパソコン、撮影機材、業務用の工具など、まとまった金額の機材を買うことは個人事業主やフリーランスにとって珍しくありません。ところが、いざ確定申告で経費にしようとすると「これは一度に全部は落とせません」と言われ、戸惑った経験のある方も多いのではないでしょうか。せっかく事業のために投資したのに、思っていたほど節税にならない、と感じてしまう瞬間です。
「減価償却」のしくみから、個人事業主が使える一括経費化の特例、「いつ・どの方法を選ぶと有利か」という判断のポイントまでを順に確認していきます。固定資産台帳の管理や償却計算まで手が回らない場合は、記帳ごと外部に任せる方法もあり、費用の目安は記帳代行の料金プランで確認できます。
なぜ高額な機材は一度に経費にできないのか
「使い切るもの」と「長く使うもの」の違い
経費の考え方の出発点は、その支出が「すぐ使い切るもの」か「何年も使い続けるもの」かという違いです。消耗品の文房具や1回の打ち合わせの交通費は、買ったその年に使い切るので、その年の経費にまとめて計上します。一方、カメラやパソコンのように何年も使う機材は、買った年だけでなく、その後の数年間にわたって事業の売上に貢献します。
そのため税務のルールでは、長く使う高額な機材は「買った年に全額を経費にする」のではなく、使う年数に分けて少しずつ経費にしていくという考え方をとります。これが「減価償却」です(減価償却の基本は国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます)。買った金額を一気に費用にするのではなく、価値が少しずつ減っていくのに合わせて経費化していく、とイメージするとわかりやすいでしょう。
10万円という最初の境界線
では、どんな機材でも分割しなければならないのかというと、そうではありません。一般的な目安として、取得価額が10万円未満のものは、買った年に全額を経費(消耗品費など)として計上できます。1台8万円のパソコンなら、その年に8万円をまとめて落とせる、ということです。
問題になるのは10万円以上の機材です。ここからは原則として減価償却の対象となり、何年かに分けて経費にしていくことになります。ただし、後ほど説明する特例を使うと、この原則とは違う扱いができる場合があります。「10万円」がひとつの分かれ道だと覚えておくとよいでしょう。
減価償却の基本的なしくみ
耐用年数と定額法
減価償却では、機材ごとに「だいたい何年使うものか」という年数があらかじめ決められています。これを耐用年数といいます。たとえばパソコンやカメラなど、機材の種類ごとに法律で年数の目安が定められており、その年数に分けて経費にしていきます。
個人事業主の場合、計算方法は原則として定額法を使います。定額法は、買った金額を耐用年数で割り、毎年ほぼ同じ金額ずつ経費にしていくシンプルな方法です。たとえば耐用年数が5年の機材を買ったなら、おおまかにいうと購入額の5分の1ずつを、5年かけて経費にしていくイメージです。毎年同じくらいの額が経費になるので、計算も見通しが立てやすいのが特徴です。
年の途中で買ったときと「事業で使う割合」
注意したいのが、年の途中で買った場合です。減価償却は月割りで計算します。たとえば10月に買った機材なら、その年に経費にできるのは1年分まるごとではなく、使い始めた月から年末までの月数に応じた分だけです。「12月に買えば年内にたくさん経費にできる」とはならない点に気をつけましょう。
もうひとつ大切なのが、その機材を事業とプライベートの両方で使う場合です。たとえばカメラを仕事8割・趣味2割で使っているなら、経費にできるのは事業で使う割合に応じた部分だけになります。プライベートでも使うものは全額を経費にできるわけではない、という点は押さえておきましょう。
個人事業主が使える一括・短期経費化の特例
30万円未満なら一括経費にできる特例(少額減価償却資産)
原則では10万円以上の機材は減価償却が必要ですが、青色申告をしている個人事業主には、心強い特例があります。それが「少額減価償却資産の特例」です。これは、1点あたり30万円未満の機材であれば、買った年に全額を経費にできるというものです。
たとえば25万円のカメラを買った場合、原則どおりなら数年に分けて少しずつ経費にしますが、この特例を使えば、その年にまとめて25万円を経費にできます。利益が出ている年に高額な機材をそろえたいときには、節税効果の大きい選択肢です。ただし、この特例には年間で合計300万円までという上限があり、また使うには青色申告であることや申告書への必要な記載などの条件があります。誰でも無条件に使えるわけではない点に注意しましょう。特例の管理のしかたは、少額減価償却資産の特例(30万円未満)の管理で確認できます。
10万円以上20万円未満を3年で均等にする一括償却資産
もうひとつ知っておきたいのが「一括償却資産」という方法です。これは、取得価額が10万円以上20万円未満の機材について、耐用年数にかかわらず3年間で均等に経費にできるというものです。こちらは青色申告でなくても使えるのが特徴です。
たとえば18万円のモニターを買った場合、本来の耐用年数より短い3年で、毎年6万円ずつ経費にできます。耐用年数が長い機材ほど、3年で割り切れるこの方法のほうが早く経費化できることがあります。また、後で触れる固定資産税(償却資産)の面でも扱いに違いがあるため、20万円未満の機材を買うときは選択肢として覚えておくと役立ちます。少額・短期のリース資産の経理は、少額・短期リース資産の経理が参考になります。
方法を一覧で整理すると
10万円未満:買った年に全額を経費(消耗品費など)にできる
10万円以上20万円未満:通常の減価償却/一括償却資産(3年均等)/30万円未満の特例(青色)から選べる
20万円以上30万円未満:通常の減価償却/30万円未満の特例(青色)から選べる
30万円以上:原則として通常の減価償却で何年かに分けて経費にする
どの方法を選ぶと有利か
利益が出ている年は早く経費化する
選び方の基本は、その年の利益の状況です。利益がしっかり出ている年に高額な機材を買うなら、30万円未満の特例で一気に経費化したほうが、その年の税負担を抑えられる可能性が高くなります。所得税は利益が大きいほど税率も上がるしくみなので、利益が大きい年ほど経費を前倒しする効果が大きくなるからです。
反対に、まだ利益が少ない年や赤字に近い年であれば、無理に一括で経費化せず、減価償却で数年に分けたほうが、結果的に各年の節税につながることもあります。「早く落とすほど得」とは限らず、利益のある年にぶつけるという発想が大切です。
固定資産税(償却資産)も意識する
見落としがちなのが、機材を持っていることでかかる固定資産税(償却資産)です。一定額以上の事業用資産を保有していると、市区町村にその資産を申告し、所有していること自体に税金がかかる場合があります。所得税の節税ばかりに目を向けていると、こちらの負担を忘れてしまいがちです。
このとき、一括償却資産(3年均等)で処理したものは、この償却資産の対象から外れるという扱いがあります。一方、30万円未満の特例で一括経費にしたものは、所得税では一度に経費になっても、償却資産としては申告の対象になることがあります。20万円未満の機材なら、所得税と固定資産税の両方を見比べて方法を選ぶと、トータルで有利になることがあります。
買うタイミングも考える
前述のとおり、減価償却は月割りで計算されます。そのため、年末ぎりぎりに高額な機材を買っても、通常の減価償却ではその年に落とせる金額はわずかです。「今年の利益が出そうだから年末に駆け込みで買う」という場合は、一括で経費にできる特例が使えるかどうかが、節税効果を左右します。買う時期と使う方法はセットで考えるのがおすすめです。期末の経費計上のタイミングで節税する考え方は、期末の経費前倒しで節税する方法が参考になります。
また、機材は事業に本当に必要だから買うものです。節税のためだけに不要な高額機材を買えば、たとえ経費が増えても手元のお金は減ります。あくまで「事業に必要な投資をするなら、税制上どう扱うのが有利か」という順番で考えることが、健全な事業運営につながります。
機材を買ったときに残しておきたい記録
領収書と支払いの記録
どの方法を選ぶにしても、まず欠かせないのが購入を証明する領収書や請求書です。いつ、何を、いくらで、どこから買ったかがわかる書類は、必ず保管しておきましょう。クレジットカードや分割払いで買った場合も、明細などで支払いの事実がわかるようにしておくと安心です。
高額な機材は金額が大きいぶん、後から税務上の確認を受けたときに「事業に使っている機材です」と説明できることが大切です。購入時の書類だけでなく、何にどう使っているかがわかる状態にしておくと、いざというときに役立ちます。
固定資産台帳で機材を管理する
減価償却の対象になる機材は、固定資産台帳という一覧で管理します。これは、買った機材の名前・取得日・金額・耐用年数・選んだ経費化の方法・これまで経費にした金額などをまとめた帳簿です。複数の機材を持っていると、どれを何年で償却しているのかがわからなくなりがちなので、台帳でひとつずつ管理しておくことが重要になります。
毎年の確定申告では、この台帳をもとにその年の減価償却費を計算します。最初は手間に感じても、一度きちんと整えておけば、翌年以降の計算がぐっと楽になります。逆に管理があいまいだと、経費の計上もれや二重計上といったミスにつながりかねません。
よくある質問
Q. 中古の機材を買った場合も減価償却が必要ですか
はい、中古の機材でも金額が10万円以上であれば、原則として減価償却の対象になります。ただし中古品は、すでにある程度使われていることをふまえ、新品より短い年数で経費にできる場合があります。一括経費にできる特例の対象になるかどうかは新品と同じ基準(取得価額)で判断しますので、中古でも特例を活用できることがあります。
Q. セットで買った機材は合計金額で判断しますか
金額の判定は、原則として機材1点ごと(1つの単位ごと)に行います。たとえばカメラ本体とレンズを別々に買ったなら、それぞれの金額で判断するのが基本です。ただし、それ単体では機能せず、組み合わせて初めて使えるようなものは、ひとまとまりで判断することもあります。判断に迷う組み合わせは、専門家に確認すると安心です。
Q. 特例を使うかどうかは毎年自由に選べますか
その年に新しく買った機材について、どの方法で経費にするかは、要件を満たす範囲で選ぶことができます。ただし、いったんある機材を一括償却資産として処理したら、その後の年も同じ扱いを続けるなど、選んだ方法には一貫性が求められます。年ごとの利益を見ながら、新しく買う機材ごとに有利な方法を検討していくイメージを持つとよいでしょう。
高額な機材は「金額」と「利益」で経費化の方法を選ぶ
高額な機材は、原則として買った年に全額を経費にできず、減価償却で数年に分けて経費にしていきます。一方で、10万円以上20万円未満なら3年均等の一括償却資産、青色申告であれば30万円未満を一括経費にできる特例など、早く経費化できる選択肢もあります。どれを選ぶかは、機材の金額とその年の利益の状況、さらに固定資産税(償却資産)の扱いまで見比べて判断するのがポイントです。買うタイミングや事業で使う割合、領収書や固定資産台帳の管理も、節税と正しい申告の両方に欠かせません。
耐用年数の確認や特例の要件、月割り計算、固定資産台帳の作成を、本業をこなしながら正確に行うのは簡単ではありません。機材への投資が増えるほど管理も複雑になり、節税のチャンスを取りこぼしかねません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








