青色申告の貸倒引当金で売掛金の一部を先に経費化する節税のコツを解説
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税金

青色申告の貸倒引当金は、まだ入金されていない売掛金の一部を、貸し倒れに備える費用として先に経費化できる仕組みです。年末の対象債権に一定割合(一般の事業で原則5.5%)を掛けて計算し、その年の所得を無理なく抑えるコツを、対象になる債権や計算の流れとあわせて整理します。
取引先への請求は済んでいるのに入金はまだ先、それでも年末時点の売掛金には所得税がかかってしまう。掛け取引が多い個人事業主やフリーランスの方にとって、これはなかなか腑に落ちないところではないでしょうか。実際に手元に現金が入っていないのに、帳簿上の売上として税金の計算に含まれてしまうからです。
☑ 売掛金が多いのに、まだ回収していないお金にまで税金がかかるのが納得いかない
☑ 貸倒引当金という言葉は聞いたことがあるけれど、自分にも使えるのかわからない
☑ 経費を増やして節税したいが、これ以上使えそうな経費が見当たらない
このコラムでは、青色申告の方が使える「貸倒引当金」という仕組みを使って、回収前の売掛金の一部を先回りして経費に計上し、その年の所得を抑えるコツを整理します。自分の売掛金にこの制度が使えるのか、どのくらいの金額を経費にできるのかをつかんでいきましょう。
貸倒引当金とは?まず仕組みをつかみましょう
「貸し倒れに備えるお金」を先に経費にできる制度
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などの債権が将来回収できなくなる(貸し倒れる)リスクに備えて、あらかじめ見積もった損失額を経費として計上しておく仕組みです。実際にまだ貸し倒れていなくても、「回収できないかもしれない分」をあらかじめ費用にできる、という点がポイントです。
たとえば年末時点で売掛金が100万円あったとします。このうち一定割合を貸倒引当金として経費に計上できれば、その分だけその年の所得が小さくなり、結果として所得税や住民税の負担を抑えられます。まだ入金されていないお金に対して、先に経費を立てられるというイメージを持つと理解しやすくなります。
青色申告だからこそ使いやすい
個人事業主が使える貸倒引当金には、大きく分けて「一括評価」と「個別評価」の2種類があります。このうち、売掛金などの残高全体に対して一定割合を一律で見積もる一括評価による貸倒引当金は、青色申告を選んでいる方が利用できる仕組みです。青色申告特別控除などの特典もあわせて、青色申告のしくみは国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
白色申告の場合は、回収できないことがほぼ確実といった特定の債権に限って個別に引当てる方法が中心となり、残高全体に一律で引当てる一括評価は使えません。日々の帳簿づけが前提となる青色申告ならではのメリットのひとつといえます。
「繰入れ」と「戻入れ」の関係
貸倒引当金は、その年の年末に経費として計上することを「繰入れ」といいます。一方で、前の年に繰り入れた引当金は、翌年にいったん収入(戻入れ)として処理するのが基本です。
つまり、前年に計上した引当金は翌年に戻して利益に加え、その年末の売掛金残高をもとに改めて引当金を計上し直す、という流れを毎年くり返します。「一度経費にしたらそれっきり」ではなく、毎年見直して計上し直す制度だと覚えておきましょう。
どんな債権が対象になるのか
対象になる主な債権
一括評価の貸倒引当金の対象になるのは、事業から生じた売掛金や受取手形など、いわゆる「売上債権」が中心です。商品やサービスを提供して、まだ代金を受け取っていない状態の債権がこれにあたります。
取引先に請求済みで未入金の売掛金
受け取った手形のうち未決済のもの
事業の遂行上生じた未収入金 など
フリーランスのライターやデザイナー、エンジニアの方であれば、月末締め翌月末払いといった条件で発生する報酬の未入金分が、典型的な対象債権になります。実際に取引先が支払えなくなり貸し倒れが起きたときの記帳は貸倒れと売上の記帳で確認できます。
対象にならないもの・注意したいもの
一方で、事業と直接関係のない貸付金や、保証金・敷金のように性質が異なるものは、一括評価の対象に含めないのが原則です。また、同じ取引先に対して買掛金(支払うべきお金)がある場合は、相殺できる部分を差し引いて考える必要があるなど、細かな調整が求められる場面もあります。
どの債権を対象に含めてよいか判断に迷うときは、無理に範囲を広げず、明確に売上から生じた未回収分に絞って計上するのが安全です。対象を広げすぎると、後から否認されて修正が必要になるリスクがある点は意識しておきましょう。
年末時点の残高で考える
貸倒引当金の計算は、その年の12月31日時点で残っている対象債権の合計額をもとに行います。年の途中で入金されて消えた売掛金ではなく、あくまで年末に残っている分が基準です。そのため、12月末時点の売掛金台帳をきちんと整理しておくことが、正しい計算の出発点になります。
計上できる金額の目安と計算の考え方
一律の割合で見積もる「法定繰入率」の考え方
一括評価による貸倒引当金は、年末の対象債権の合計額に一定の割合を掛けて計算します。一般の事業の場合、この割合は原則として1000分の55(5.5%)とされています。たとえば年末の売掛金が100万円であれば、100万円×5.5%=5万5,000円程度を引当金として経費に計上できる、という計算になります。
金額としては大きくないと感じるかもしれませんが、売掛金の残高が大きい事業や、年によって所得が大きく変動する事業では、その年の税負担を平準化する効果が期待できます。なお、業種によって割合が異なる場合があるため、自分の事業がどの区分にあたるかは確認しておくと安心です。
計算と帳簿の流れ
計算の手順自体はシンプルです。年末の対象債権を集計し、そこに割合を掛けて引当金の金額を求めます。会計処理としては、その金額を「貸倒引当金繰入」として経費(費用)に計上し、貸借対照表側に「貸倒引当金」として記載します。
年末の売掛金などの対象債権を集計する
合計額に割合を掛けて繰入額を計算する
繰入額を経費として計上し、翌年に戻入れする
会計ソフトを使っている場合は、決算の機能のなかで貸倒引当金を入力する項目が用意されていることが多く、金額を入れれば自動で仕訳と決算書への反映までしてくれるケースが一般的です。
青色申告決算書への記載
貸倒引当金を計上した場合は、青色申告決算書のなかにある貸倒引当金繰入額の計算に関する欄に、対象となる債権の金額や繰入額を記載します。経費に計上しただけで決算書の所定の欄を埋め忘れると、計算の根拠が示せなくなってしまうため、記載漏れがないか必ず確認しましょう。
節税につなげるための実務のコツ
毎年こつこつ続けることで効果が安定する
貸倒引当金は、前年分を戻入れして当年分を繰り入れる仕組みのため、初年度は単純に繰入額がそのまま所得を圧縮する効果になります。2年目以降は「前年の戻入れ」と「当年の繰入れ」の差額が実質的な効果になります。
売掛金の残高が毎年おおむね一定であれば、効果は安定して続きます。逆に売掛金が年々増えていく事業であれば、繰入額も増えていくため、継続するほど積み上がる節税効果を取りこぼさずに済みます。一度始めたら毎年忘れずに計上することが、地味ですが大切なコツです。
売掛金の管理とセットで取り組む
貸倒引当金を正しく計上するには、年末時点の売掛金がいくら残っているかを正確に把握しておく必要があります。請求済みなのに帳簿に載っていない売上があったり、すでに入金済みなのに売掛金として残ったままだったりすると、引当金の金額もずれてしまいます。売掛金の消し込みと回収状況の管理は請求・回収と売掛金の締め・年齢表の実務が参考になります。
日ごろから請求と入金の消し込みをこまめに行い、売掛金台帳を最新の状態に保っておくことが、結果として正確な節税につながります。貸倒引当金の計算や戻入れまで含めた申告に不安があるときは、確定申告の丸投げ代行という方法もあります。貸倒引当金は、ふだんの帳簿づけの精度がそのまま反映される制度ともいえます。
ほかの青色申告の特典と組み合わせる
貸倒引当金は単独でも効果がありますが、青色申告には青色申告特別控除65万円や、赤字を翌年以降に繰り越せる純損失の繰越しなど、ほかにも所得を抑える仕組みが用意されています。控除額の水準は青色申告特別控除65万・55万・10万の試算にまとめています。貸倒引当金だけに頼るのではなく、これらの特典を合わせて活用することで、無理のない範囲で全体の税負担を整えていくことができます。
よくある質問
Q. 売掛金がほとんどない現金商売でも貸倒引当金は使えますか?
貸倒引当金は、年末時点で残っている売掛金などの債権を基準に計算する制度です。そのため、店頭でその場で代金を受け取る現金商売が中心で、年末に未回収の売掛金がほとんどない場合は、計上できる金額もごくわずか、あるいはゼロになります。掛け取引が多い事業ほど効果が出やすい仕組みだとお考えください。
Q. 経費が増えるなら、できるだけ多めに引き当てた方が得ですか?
引当金の金額は、年末の対象債権の残高と定められた割合をもとに計算するもので、自由に上乗せできるわけではありません。実態より多く引き当てると、過大計上として認められず、後から修正が必要になることもあります。あくまで決められた計算の範囲内で、正しく計上することが大切です。
Q. 翌年に戻入れすると、結局プラスマイナスゼロになってしまうのでは?
初年度は繰入額がそのまま所得を減らす効果になります。翌年以降は前年分を戻し入れて当年分を繰り入れるため、売掛金の残高が一定なら効果は横ばいで続き、残高が増えていけば差額分の節税効果が積み上がります。所得が大きく変動する年の負担を和らげる役割もあり、決して無意味な処理ではありません。
結論|回収前の売掛金にも節税の余地がある
青色申告の貸倒引当金は、まだ入金されていない売掛金の一部を、貸し倒れに備える費用として先に経費化できる仕組みです。年末の対象債権に一定割合を掛けて計算し、青色申告決算書の所定の欄に記載するだけで、その年の所得を無理なく抑えられます。毎年こつこつ続けること、そして売掛金台帳を正確に保つことが、効果を安定させる一番のコツです。
ただ、貸倒引当金の計算や戻入れの処理、対象になる債権の見極めまでを、本業の合間にすべて自分で正確に行うのは、決して軽い作業ではありません。売掛金の管理が甘いと、せっかくの制度も正しく使えなくなってしまいます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








