個人事業主の廃業手続きと最後の確定申告|必要な届出をやさしく解説
#
確定申告

個人事業主の廃業では、廃業届などの税務署への届出と、廃業した年の「最後の確定申告」の両方が必要です。必要な届出の種類と期限、そして最後の申告で使える経費の特例まで、全体像をつかめるように整理しました。
長く続けてきた事業に区切りをつけるとき、「廃業の手続きは何から始めればいいのだろう」と戸惑う方はとても多いものです。開業のときは届出ひとつで済んだのに、廃業となると税務署への届出や最後の確定申告など、やるべきことが意外と多く、不安になってしまいますよね。全体像をつかんで、安心して次のステップへ進みましょう。事業を縮小・撤退するときの税務の考え方は、事業の縮小・撤退と節税にもまとめています。
☑ 事業をやめたいけれど、どんな手続きが必要かわからない
☑ 廃業届をいつまでに、どこへ出せばいいのか不安
☑ 廃業した年の確定申告はどうなるのか知りたい
個人事業主の廃業で必要になる届出
個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)
廃業時の基本となる書類が「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる廃業届です。開業時に提出した書類と同じ様式で、廃業の欄に記入して提出します。提出先は納税地を管轄する税務署で、期限は原則として廃業日から1か月以内です。提出が遅れても罰則はありませんが、放置すると税務署からお尋ねが届くことがあるため、早めに済ませておきましょう。
青色申告の取りやめ届出書
青色申告をしていた方は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」もあわせて提出します。期限は、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までです。青色申告のあらましと取りやめの扱いは、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。出し忘れを防ぐためにも、廃業届と同時に提出してしまうのがスムーズです。
状況に応じて必要になるその他の届出
事業の内容によっては、次のような届出も必要になります。
消費税の課税事業者だった方:「事業廃止届出書」
従業員やご家族に給与を支払っていた方:「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」
都道府県税事務所への事業廃止の申告書(名称や様式は自治体により異なります)
インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていた場合は、その取消手続きも必要になります。手続きの流れは適格請求書発行事業者の登録の取消しが参考になります。ご自身がどの届出に該当するか不安な場合は、税務署や専門家に確認すると安心です。
廃業した年も「最後の確定申告」が必要
原則として翌年に確定申告を行います
廃業した年も、1月1日から廃業日までの間に事業の利益が出ていれば、原則として確定申告が必要です。申告の時期は通常と同じで、翌年の2月16日から3月15日までに行います。確定申告が必要かどうかの基本は、国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます。「廃業したからもう申告しなくていい」と思い込んでいると申告漏れになってしまうため、注意しましょう。廃業年の帳簿整理と最後の申告をまとめて任せたい場合は、最後の確定申告まで任せられる申告代行という方法もあります。
赤字や所得が少ない場合はどうなる?
廃業した年が赤字だった場合や、所得が各種控除の合計を下回る場合は、確定申告の義務がないこともあります。ただし、報酬から源泉徴収された税金がある方は、申告することで還付を受けられる可能性があります。また、国民健康保険料の計算などのために住民税の申告が必要になるケースもあるため、「申告しなくていいか」ではなく「申告したほうが得か」という視点で考えるのがおすすめです。
帳簿や領収書は廃業後も保存が必要です
廃業すると帳簿や領収書をすぐに処分したくなりますが、帳簿書類には法律で保存期間が定められています。青色申告の帳簿などは原則として7年間の保存が必要で、廃業した後もこの義務は続きます。段ボールなどにまとめて、必要なときに取り出せる状態で保管しておきましょう。
最後の確定申告で知っておきたい経費の特例
廃業後に支払った費用も経費にできる特例があります
事務所の原状回復費や設備の処分費など、廃業した後になってから支払いが発生することは少なくありません。所得税には「事業を廃止した場合の必要経費の特例」があり、廃業後に生じた費用でも、事業を続けていれば当然に経費となっていたものは、廃業した年の必要経費にできる場合があります。廃業後の領収書も捨てずに保管しておくことが大切です。
個人事業税の見込額も経費にできます
個人事業税は通常、納付した年の経費にしますが、廃業すると翌年以降に経費へ入れる機会がなくなってしまいます。そこで、廃業年の申告では個人事業税の課税見込額をあらかじめ必要経費に算入できる取り扱いがあります。個人事業税の減免や見込額の扱いは、個人事業税の減免と見込控除で確認できます。対象になる方は忘れずに活用しましょう。
在庫や固定資産の整理にも注意
売れ残った商品を自分用にしたり知人に譲ったりした場合は、収入として計上が必要になることがあります。また、事業用の車や設備を売却した場合は、事業所得ではなく譲渡所得として扱われるのが原則です。判断に迷いやすいポイントなので、処分の内容と金額の記録を残しておきましょう。
廃業後の住民税・保険・年金はどうなる?
住民税は翌年にも請求が届きます
住民税は前年の所得に対して課税されるため、廃業した翌年にも納付書が届きます。収入がなくなった後に支払いがやってくる形になるので、廃業前にある程度の納税資金を確保しておくと安心です。
国民健康保険・国民年金の手続き
廃業した後も、就職しない限り国民健康保険・国民年金への加入は続きます。所得が大きく減った場合は、保険料の軽減や免除の制度を利用できることがあるため、お住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。
再就職や法人化をする場合
廃業後に会社へ就職する場合は、勤務先の社会保険に切り替わります。また、事業を法人化する「法人成り」の場合も、個人事業としては廃業の手続きが必要です。同じ廃業でも次の進路によってやることが変わるため、スケジュールを整理しておきましょう。
廃業を決めたら早めに準備したいこと
廃業日から逆算してスケジュールを立てましょう
廃業の届出には期限があり、最後の確定申告には帳簿の整理が欠かせません。廃業日を決めたら、次のようなやることを書き出し、逆算でスケジュールを立てておくと慌てずに進められます。
最後の取引と、請求・代金回収の予定を決める
在庫や設備の処分方法を決める
税務署や都道府県税事務所への届出を提出する
帳簿を締めて、最後の確定申告に備える
取引先への連絡と契約の整理も忘れずに
税務署への手続きと並んで大切なのが、取引先やお客様への連絡です。継続中の契約やサブスクリプション、事業用の口座・クレジットカードなどをリストアップし、解約や精算のタイミングを決めておきましょう。事業のための解約費用は、内容によっては経費として扱える場合があるため、こちらも領収書を保管しておくと安心です。
よくある質問
Q. 廃業届を出し忘れるとどうなりますか?
罰則はありませんが、税務署では事業が続いているものとして扱われ、確定申告のお知らせが届き続けることがあります。気づいた時点で速やかに提出しましょう。実際の廃業日をさかのぼって記載し、提出することも可能です。
Q. 廃業日は自由に決められますか?
実際に事業をやめた日を基準にするのが原則ですが、厳密な決まりがあるわけではなく、最後の取引が終わった日や在庫処分が完了した日などを廃業日とするのが一般的です。年の途中よりも12月末を廃業日にすると、申告の区切りがわかりやすくなります。
Q. 廃業後に入金された売掛金はどう申告しますか?
事業を行っていた期間の売上は、入金が廃業後であっても、原則として売上が確定した時点の年の収入として計上します。最後の確定申告に含めるべきものが漏れないよう、未回収の売掛金を一覧にしておくと安心です。
廃業は「届出」と「最後の確定申告」をセットで考える
個人事業の廃業では、廃業届や青色申告の取りやめ届出書などの提出に加えて、廃業した年の所得についての最後の確定申告が必要です。廃業後に支払った費用の特例や、個人事業税の見込額の経費算入など、知っているかどうかで税額が変わるポイントもあります。
また、住民税の支払いが翌年に来ることや、帳簿の保存義務が廃業後も続くことなど、廃業のあとにも気を配ることは残ります。手続きの全体像を早めに把握し、余裕を持って準備を進めることが、円満な事業の締めくくりにつながります。
廃業年は届出・帳簿の締め・最後の申告が重なり、慣れない手続きに気力を使う時期です。だからこそ、記帳と申告は任せてしまうと、届出や身のまわりの整理に集中できます。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から廃業年の帳簿整理、最後の確定申告書類の作成までをトータルでサポートします。廃業年の申告を安心して終える相談をする(無料)ところから始めてみてください。料金の目安は料金プランのページで確認いただけます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








