退職して独立した年の確定申告|給与と事業所得が両方ある場合のやり方
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確定申告

退職して独立した1年目は、会社員時代の給与所得と独立後の事業所得を1枚の申告書に合算して精算します。年末調整を受けていない給与分は還付になることも多く、源泉徴収票・退職金・社会保険料控除など、この年ならではのポイントを押さえるのが近道です。
会社を退職して独立した1年目は、働き方だけでなく、税金の手続きも大きく変わる節目の年です。これまで年末調整で会社が済ませてくれていた税金の精算を、独立後は自分自身で行わなければなりません。しかも独立1年目は、会社員時代の「給与所得」と独立後の「事業所得」が1年の中に混在するため、通常の年よりも申告が複雑に感じられます。必要な書類と計算の流れを順に整理します。
☑ 今年会社を辞めてフリーランスになったが、確定申告で何をすればいいのか分からない
☑ 会社員時代の給与と独立後の売上、両方あるけれどどう申告すればいいのか不安
☑ 退職金や、独立後に払った国民年金・国民健康保険の扱いを知りたい
独立1年目の確定申告が「特別」な理由
退職した年は、1月から退職日までの給与所得と、独立後の事業所得を1枚の申告書に合算して申告します。年末調整を受けていないため税金が精算されておらず、確定申告で1年分を正しく精算する必要があります。
給与所得と事業所得の両方を申告する
退職した年の確定申告では、1月から退職日までの給与と、独立後の事業の儲けを、それぞれ「給与所得」「事業所得」として計算し、1枚の確定申告書にまとめて記載します。2つの所得は合算され、その合計に対して所得税が計算されます。どちらか一方だけを申告すればよいわけではない点に注意しましょう。たとえば3月末に退職して4月に開業した場合、1月から3月までの給与と、4月から12月までの事業の損益を、翌年の確定申告でまとめて申告するイメージです。複数の所得源を持つ場合の収支の分け方は、複数事業を営む個人事業主の確定申告も参考になります。
年末調整を受けていないため税金が精算されていない
年の途中で退職すると、その年の給与については年末調整が行われていません。給与から天引きされていた所得税は概算の金額なので、多くの場合は払いすぎの状態になっています。確定申告で1年分を正しく精算すると、税金が還付されるケースも少なくありません。還付申告の仕組みは国税庁タックスアンサーNo.2030「還付申告」で確認できます。「面倒な義務」ではなく「取り戻すチャンス」と捉えると、前向きに取り組めます。
会社員時代の給与は「源泉徴収票」で申告する
給与所得の申告には、退職した会社が発行する源泉徴収票が欠かせません。支払金額・源泉徴収税額・天引きされた社会保険料など、申告に必要な情報がすべて記載されています。手元にない場合は早めに再発行を依頼しましょう。
退職時に受け取る源泉徴収票が申告の土台
給与所得の申告に欠かせないのが、退職した会社が発行する源泉徴収票です。支払金額や源泉徴収税額、天引きされていた社会保険料など、申告書の作成に必要な情報がすべて記載されています。現在は申告書への添付は不要ですが、数字の転記に必ず使うので、大切に保管しておきましょう。退職金を受け取った場合は、給与分とは別に「退職所得の源泉徴収票」も交付されます。
手元にない場合は早めに再発行を依頼する
源泉徴収票は退職後1か月以内に交付されるのが原則ですが、受け取った記憶がない、紛失してしまったという方は、早めに元の勤務先へ再発行を依頼しましょう。申告期限の直前は依頼が混み合うこともあります。年内のうちに手元にそろえておくと、申告準備がぐっと楽になります。
退職金をもらった場合の取り扱い
退職金は「退職所得」として他の所得と分けて計算します。退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば原則申告不要ですが、出していない場合や赤字の年は、申告した方が有利になることもあります。
「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば原則申告不要
退職金は「退職所得」という独立した区分で、他の所得とは分けて税金を計算します。退職時に会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、適正な税額がすでに源泉徴収されているため、原則として確定申告は不要です。まずは退職時にこの書類を出したかどうかを確認しましょう。
申告した方が有利になるケースもある
一方、この申告書を提出していない場合は、退職金から一律20.42%の税率で源泉徴収されており、本来より多く納めている可能性があります。この場合は確定申告をすることで精算でき、還付を受けられることがあります。また、事業が赤字になった年などは、申告に退職所得を含めることで税負担が軽くなる場合もあります。
独立後の事業所得の計算と経費
事業所得は、独立後の売上から必要経費を差し引いて計算します。開業前に支出した準備費用は「開業費」にでき、自宅兼事務所の費用は家事按分で経費にできます。
売上から必要経費を差し引いて所得を計算する
事業所得は、独立後の売上から仕事にかかった必要経費を差し引いて計算します。仕事用のパソコンや通信費、打ち合わせの交通費、消耗品費などが代表例です。日々の取引を帳簿に記録し、領収書や請求書を保存しておくことが計算の土台になります。
開業前の準備費用は「開業費」にできる
意外と知られていないのが、開業前に支出した準備費用の扱いです。市場調査の費用、打ち合わせ代、名刺やホームページの作成費用などは「開業費」として計上でき、開業後の経費として柔軟に償却していくことができます。在職中に使った準備費用の領収書も、捨てずに残しておきましょう。
自宅兼事務所の費用は家事按分で経費にする
自宅で仕事をしている場合、家賃や電気代などのうち、仕事で使っている割合に応じた部分を経費にできます。これを家事按分といいます。作業スペースの面積や使用時間など、合理的な基準で割合を決め、説明できるようにしておくことがポイントです。たとえば自宅の床面積のうち3割を仕事部屋として使っているなら、家賃の3割を経費にする、といった考え方です。車を仕事とプライベートで兼用する場合の按分の考え方は、キャンピングカー・車中泊ビジネスの確定申告でも車両費と事業按分の切り口で解説しています。日々の記帳から申告書の作成までまとめて任せたい場合は、独立1年目の申告を任せる確定申告代行という選択肢もあります。
見落としやすい控除と独立1年目の手続き
退職後に自分で払った国民年金・国民健康保険は全額が社会保険料控除の対象です。青色申告を選ぶなら承認申請書の期限に注意し、翌年の住民税の負担も見据えて資金を確保しておきましょう。
国民年金・国民健康保険は社会保険料控除になる
退職後に自分で支払った国民年金や国民健康保険の保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。在職中に給与から天引きされていた社会保険料(源泉徴収票に記載)と合わせて、忘れずに申告しましょう。家族の分を支払った場合も対象になります。支払額は、国民年金なら控除証明書、国民健康保険なら市区町村からのお知らせや納付記録で確認できます。夫婦それぞれが働いている世帯で控除をどう申告するかは、夫婦ともに個人事業主の確定申告も参考になります。なお、雇用保険の失業給付(基本手当)は非課税のため、申告に含める必要はありません。
青色申告を選ぶなら承認申請書の期限に注意
独立1年目から青色申告をするには、原則として開業日から2か月以内(年の初めに開業した場合は3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。青色申告なら、要件を満たすことで最大65万円の青色申告特別控除や赤字の繰越控除が使えるため、独立したら早めに検討したい手続きです。控除額と要件は国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
住民税や翌年の税負担も見据えておく
住民税は前年の所得をもとに翌年に課税されるため、独立後しばらくして会社員時代の所得に対する納付書が届きます。収入が不安定になりがちな独立1年目こそ、税金の支払いを見越した資金の確保を心がけておくと安心です。
よくある質問
Q. 退職した年は必ず確定申告が必要ですか?
事業所得が一定額ある方は基本的に確定申告が必要です。また、申告義務がない場合でも、年末調整を受けていない給与がある方は、申告することで源泉徴収された税金の還付を受けられる可能性が高いため、申告するのがおすすめです。申告が必要かどうか判断に迷う場合は、税務署に確認すると確実です。
Q. 源泉徴収票は申告書に添付しなければいけませんか?
現在、源泉徴収票の添付は不要とされています。ただし、記載されている支払金額や源泉徴収税額を申告書に転記する必要があるため、書類そのものは必ず入手し、手元に保管しておきましょう。
Q. 独立1年目から青色申告はできますか?
できます。開業日から2か月以内(1月前半に開業した場合はその年の3月15日まで)に青色申告承認申請書を提出すれば、1年目から青色申告が可能です。期限を過ぎると初年度は白色申告になるため、開業届と一緒に早めに提出するのが安心です。
独立1年目の確定申告・要点整理
退職して独立した年の確定申告は、会社員時代の給与所得と独立後の事業所得を合算して申告する、少し特別な手続きです。源泉徴収票の入手、退職金の取り扱いの確認、国民年金・国民健康保険の控除、開業費の計上など、この年ならではのポイントを押さえれば、還付というかたちで報われることも多くあります。
一方で、初めての事業所得の計算や帳簿づけは、本業と並行して進めるには負担の大きい作業でもあります。独立1年目から記帳の習慣と申告の体制を整えておくことが、2年目以降の安心につながります。独立すると請求書や領収書など書類の量も一気に増えるため、早めに整理の仕組みをつくっておきましょう。
初めての事業所得の計算と帳簿づけを、本業と並行して進めるのは相当な負担です。会社員時代は会社任せだった税金の手続きを、独立後は一人で抱えることになります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








