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2026/7/19

個人事業主が暗号資産の含み損益を活用して税負担を抑える注意点を解説

  • 税金

個人事業主が保有する暗号資産の含み損益は、売却・交換・決済で「実現」して初めて所得税の課税対象になり、含み損を持っているだけでは節税にはなりません。だからこそ実現のタイミングを意識して工夫することが、税負担を抑えるうえで現実的な鍵になります。

暗号資産(仮想通貨)の価格は大きく上下するため、気づけば多額の含み益や含み損を抱えているという個人事業主の方は少なくありません。株式投資と同じ感覚で「損が出ているから税金を取り戻せる」と考えていると、暗号資産ならではの税金ルールによって思わぬ落とし穴にはまることがあります。

☑ 暗号資産に含み益・含み損があるが、確定申告でどう扱えばよいかわからない

☑ 「含み損を使って税金を減らせる」と聞いたが、本当にできるのか不安だ

☑ 売っていない暗号資産にも税金がかかるのか、損益通算はできるのか整理したい

ここでは「含み損益とは何か」という基本から、売却タイミングの工夫、やってはいけないことまでを順に整理します。自分のケースで何に気をつければよいかを見極める手がかりになるはずです。

暗号資産の含み損益と税金の基本を押さえましょう

そもそも「含み損益」とは何か

含み損益とは、保有している暗号資産の「今の評価額」と「買ったときの価格」の差のことです。たとえば30万円で買ったビットコインが今50万円になっていれば20万円の含み益、逆に20万円に下がっていれば10万円の含み損ということになります。

ここで大切なのは、含み損益はあくまで「まだ実現していない」損益だという点です。値上がりしていても、売ったり使ったりしていなければ、その時点では手元にお金が入っているわけではありません。この「実現しているかどうか」が、税金を考えるうえでの最初の分かれ目になります。

含み益・含み損だけでは課税も控除もされない

個人が暗号資産を保有しているだけの状態、つまり値上がりして含み益が出ているだけの段階では、所得税は課されません。これは多くの方が安心するポイントです。一方で、含み損が出ているからといって、その損を確定申告で差し引けるわけでもありません。

つまり、含み損益は売却などで「実現」して初めて税金の計算対象になるのが原則です。「持っているだけの損で節税できる」というイメージは、暗号資産には基本的に当てはまらないと考えておきましょう。節税を意識するなら、いつ・どのように実現させるかという視点が欠かせません。

暗号資産の利益は原則「雑所得」

個人が暗号資産の売買などで得た利益は、原則として雑所得に区分されます。雑所得は、給与所得や事業所得などと合算して税額を計算する「総合課税」の対象です。所得が多い人ほど税率が高くなる累進課税の仕組みのため、暗号資産の利益が大きいと、その分だけ全体の税負担も重くなりやすい点が特徴です。この超過累進の税率は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認でき、令和8年分(2026年分)も同じ考え方です。

これは、一律の税率で分けて計算される株式やFXとは大きく異なるところです。同じ「投資の利益」でも扱いがまったく違うため、株式の感覚をそのまま持ち込まないよう注意が必要です。株式を特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合の申告の要否は、特定口座(源泉徴収あり)と確定申告の判断で整理しています。

「利益が実現する」タイミングを正しく理解する

売ったときだけが課税対象ではない

暗号資産は、日本円に換金したときだけ利益が実現すると思われがちですが、実際にはそれ以外の場面でも損益が実現します。代表的なのは次のようなケースです。

  • 暗号資産を売却して日本円などに換えたとき

  • 暗号資産で商品やサービスを購入(決済)したとき

  • ある暗号資産を別の暗号資産に交換したとき

とくに見落とされやすいのが、暗号資産同士の交換です。ビットコインで別のコインを買った場合、いったんビットコインを時価で手放したものとみなされ、含み益があれば利益が実現したことになります。日本円を受け取っていなくても課税対象になり得る点は覚えておきましょう。日本円を介さずに損益が実現するという意味では、外貨預金の為替差益の申告とも共通する考え方です。

含み益のまま「持ち続ける」という選択

逆に言えば、売却や交換、決済をしなければ含み益は実現しません。そのため、その年の所得状況を見ながらあえて売らずに持ち続けるのも、税負担を平準化するひとつの考え方です。

たとえば、ほかの事業所得が大きく出ている年に暗号資産の含み益まで実現させてしまうと、合算されて高い税率がかかってしまうことがあります。事業の利益が比較的少ない年に少しずつ実現させるなど、年単位で全体のバランスを見る視点が役立ちます。ただし価格変動のリスクは常に伴うため、税金だけを理由に保有・売却を決めるのは避けたいところです。

取得価額の計算方法にも注意

利益を計算するには、売った暗号資産の「取得価額(買ったときの値段)」を正しく求める必要があります。同じ通貨を何度も買い増している場合、取得価額の計算には総平均法移動平均法という方法があり、どちらを使うかで一回ごとの損益額が変わってきます。

一度選んだ計算方法は継続して使うのが原則で、取引が多い方ほど自己流の集計はミスのもとになりがちです。取引履歴をこまめに保存し、年間取引報告書や損益計算ツールを活用して正確に把握しておくと、余計な税負担や申告ミスを防げます。

含み損を「活かす」ための考え方と限界

含み損は同じ年内の暗号資産の利益と相殺できる

含み損そのものは控除できませんが、同じ年の中で売却して損失を実現させれば、ほかの暗号資産の利益と相殺できる可能性があります。たとえば、ある通貨で50万円の利益が出ている年に、含み損を抱えた別の通貨を売って30万円の損を実現させれば、その年の雑所得(暗号資産分)は差し引き20万円に近づけられる、という考え方です。

利益が出ている年の年末に、含み損のある通貨を見直して損益を調整するのは、暗号資産で現実的に取り得る数少ない工夫のひとつです。いわゆる「損出し」に近い発想ですが、暗号資産では後述のとおり制約も多いため、過度な期待は禁物です。

給与所得や事業所得とは損益通算できない

ここが暗号資産でもっとも誤解されやすいポイントです。暗号資産の売却で損失が出ても、給与所得や事業所得など他の区分の所得とは損益通算できません。株式投資のように「損が出たから全体の税金が減る」という効果は、原則として期待できないのです。

相殺できるのは、あくまで雑所得の中での話が中心です。「暗号資産で大損したから今年の所得税が大きく戻る」と考えていると、想定と現実が食い違うことになりかねません。この点は最初に正しく理解しておきましょう。

損失の繰越しも原則できない

上場株式の譲渡損失は、一定の手続きをすれば翌年以降に繰り越して将来の利益と相殺できます。しかし、個人が雑所得として扱う暗号資産の損失には、こうした繰越控除の仕組みが原則ありません。その年に使い切れなかった損失は、翌年に持ち越せないのが基本です。株式側の具体的な繰越しの手順は、上場株式の譲渡損失の繰越控除で確認できます。

だからこそ、含み損を活かしたいのであれば、利益が出ている「その年のうちに」実現させて相殺するという発想が重要になります。年をまたいでしまうと、せっかくの損失を活かせなくなる可能性があるためです。

やってはいけない節税と、見落としやすい論点

無理な「経費化」や利益隠しは避ける

税負担を抑えたいあまり、暗号資産の利益を申告しない、取引をなかったことにする、といった対応は絶対に避けてください。暗号資産の取引は取引所などを通じて記録が残るため、無申告や過少申告は後から指摘されるリスクが高く、加算税や延滞税といった重い負担につながりかねません。

「節税」と「申告逃れ」はまったくの別物です。正しく申告したうえで、合法的に税負担を調整するという基本姿勢を崩さないことが、結局はいちばんの安全策になります。

事業との関係がある場合の取り扱い

暗号資産を事業の決済手段として日常的に使っている場合など、事業との結びつきが強いケースでは、利益が雑所得ではなく事業所得として扱われる余地が生じることもあります。ただし、どの所得区分になるかは事業の実態によって判断が分かれる難しい論点です。

所得区分が変われば、損益通算や経費の扱いも変わってきます。自分のケースがどちらに当たるか迷う場合は、自己判断で決めつけず、税務署や税理士など専門家に確認することをおすすめします。

記録の保存と申告漏れ防止

暗号資産の税金で多くの方がつまずくのは、節税テクニック以前に「正確な損益が把握できない」という点です。取引所が複数にまたがっていたり、過去の取引履歴が抜けていたりすると、正しい損益計算ができません。こうした集計や記帳を毎回抱え込むのが難しいときは、日々の帳簿づけごと任せられる記帳代行という選択肢もあります。

  • 各取引所の年間取引報告書や取引履歴を年ごとにダウンロードして保存する

  • 暗号資産同士の交換や決済も含め、すべての取引を記録に残す

  • 取得価額の計算方法を決め、毎年同じ方法で集計する

これらを地道に積み重ねておくことが、含み損益を活かした調整を行う前提になります。記録がそろっていなければ、相殺できる損も把握できず、結果として払いすぎ・申告漏れの両方が起こりやすくなります。

よくある質問

Q. 暗号資産を持っているだけで、含み益に税金がかかりますか?

個人が保有しているだけで、売却・交換・決済をしていない含み益の状態であれば、原則として所得税は課されません。税金がかかるのは、売却などで利益が実現したときです。ただし、暗号資産同士の交換や、暗号資産での買い物でも利益が実現する点には注意しましょう。日本円に換えていなくても課税対象になることがあります。

Q. 暗号資産で損が出たら、事業の利益と相殺できますか?

原則としてできません。個人の暗号資産の利益は雑所得に区分され、その損失は給与所得や事業所得とは損益通算できないのが基本です。相殺できるのは、同じ年の暗号資産などの利益との間が中心になります。また、使い切れなかった損失を翌年に繰り越すこともできないため、損を活かすなら利益の出ている同じ年のうちに実現させる工夫が必要です。

Q. 取引が多すぎて損益計算ができません。どうすればよいですか?

まずは各取引所から年間取引報告書や取引履歴をすべてダウンロードし、もれなくそろえることが第一歩です。そのうえで、損益計算ツールや専門家のサポートを活用すると、取得価額の計算方法も統一しやすくなります。自己流の集計はミスや申告漏れの原因になりやすいため、取引量が多い方ほど早めに記録を整える体制をつくっておくと安心です。

結論:暗号資産の含み損益は「実現のタイミング」で決まる

暗号資産の含み損益は、持っているだけでは課税も控除もされず、売却・交換・決済によって実現して初めて税金の計算対象になります。利益は原則として雑所得として総合課税され、損失は給与所得や事業所得とは通算できず、翌年への繰越しも原則できません。だからこそ、含み損を活かすには「利益の出ている同じ年のうちに損を実現させる」など、実現のタイミングを意識した工夫が現実的な選択肢になります。

とはいえ、暗号資産の損益計算は取引が増えるほど複雑になり、本業のかたわらで正確に把握するのは簡単ではありません。記録が不十分なままでは、使えるはずの損も活かせず、申告漏れのリスクも高まってしまいます。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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