養育費・婚姻費用を受け取る個人事業主の確定申告|課税の有無と扶養判定を解説
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確定申告

個人事業主が受け取る養育費・婚姻費用は、通常必要な範囲であれば原則として課税されません。確定申告で申告するのは事業所得などの課税所得だけです。課税の有無と、子どもを扶養に入れられるかの判定を整理して解説します。
離婚や別居をきっかけに、養育費や婚姻費用を受け取りながら個人事業を続けている方は少なくありません。毎月決まったお金が振り込まれていると、「これも事業の収入と同じように申告するのだろうか」「税金がかかるのでは」と心配になるのは自然なことです。一方で、子どもを扶養に入れられるかどうかは、ご自身の所得税にも直接関わってくる大切なポイントです。
☑ 元配偶者から受け取っている養育費は、確定申告で収入として申告する必要があるのか知りたい
☑ 婚姻費用や養育費を受け取っていると、子どもを扶養に入れられないのではと不安になる
☑ 個人事業の売上と養育費が頭の中で混ざってしまい、何を申告すればよいのか整理できていない
以下では、個人事業主が養育費・婚姻費用を受け取っている場合の確定申告について、課税されるのかどうか、子どもの扶養はどう判定するのかを中心に整理します。申告書に何を書き、何を書かなくてよいのかがはっきりします。
事業の数字と生活のお金を分けて正しく申告したいときは、記帳から申告まで任せられる確定申告の代行サービスもあります。まずは課税の考え方から確認しましょう。
養育費・婚姻費用は確定申告で収入になるのか
原則として養育費は課税されません
結論からお伝えすると、子どもの養育のために通常必要な範囲で受け取る養育費は、原則として所得税の課税対象になりません。養育費は、親が子どもを育てるために負担すべき費用を分担し合っているものであり、受け取った側の「もうけ(所得)」とは性質が異なるためです。事業の売上のように、確定申告書に収入金額として記載する必要は基本的にありません。
同じように、別居中の夫婦の間で生活費として支払われる婚姻費用も、日常の生活に通常必要な範囲のものであれば、原則として課税の対象にはなりません。いずれも「生活を支えるための分担金」という考え方が根底にあります。
事業収入とは性質がまったく違う
個人事業主の方が混乱しやすいのは、事業の売上も養育費も「毎月口座に入ってくるお金」という点で見た目が似ているからです。しかし両者の性質はまったく異なります。
事業収入:仕事の対価として受け取るお金で、必要経費を差し引いた所得に税金がかかる
養育費・婚姻費用:子どもや生活を支えるための分担金で、原則として課税されない
確定申告で集計するのは、あくまで事業によって得た売上や、その他の課税される所得です。養育費を事業の売上に含めてしまうと、本来納めなくてよい税金まで計算してしまうことになりますので、帳簿の段階できちんと区別しておくことが大切です。
例外的に課税されるケースに注意
養育費が原則非課税といっても、すべての受け取り方が無条件に非課税になるわけではありません。たとえば、本来は毎月分割で受け取るべき養育費を、将来の分まで含めて一括でまとまった金額として受け取り、それを生活費としてではなく預貯金や投資に回しているような場合などは、贈与とみなされて課税対象と判断される可能性があります。
受け取り方が通常と異なる場合や、金額が生活実態に比べて明らかに大きい場合は、自己判断せず税務署や税理士などの専門家に確認すると安心です。
受け取った側の確定申告で気をつけること
申告書に書くのは事業所得などの課税所得
養育費・婚姻費用が原則非課税である以上、個人事業主の方が確定申告で記載するのは、事業所得をはじめとする課税される所得です。1年間(1月1日〜12月31日)の売上から必要経費を差し引いて事業所得を計算し、そこに各種の所得控除を反映させて税額を求めていく、という通常の流れは、養育費を受け取っていても変わりません。
「養育費の分を申告に上乗せしなければ」と考える必要はありません。むしろ、養育費を収入に含めてしまう方が誤りになりますので、落ち着いて事業の数字だけを集計しましょう。
帳簿では生活用の口座と事業用を分ける
養育費と事業収入を取り違えないための一番の対策は、お金の入り口を分けておくことです。可能であれば、事業の入出金に使う口座と、養育費や生活費を受け取る口座を別々にしておくと、年末に集計するときに迷いません。
事業用口座:取引先からの売上、経費の引き落としなどに使う
生活用口座:養育費・婚姻費用の受け取り、家庭の生活費の支払いに使う
口座を完全に分けられない場合でも、通帳の摘要欄に「養育費」とメモを残す、養育費が振り込まれる金額や日付を一覧にしておくなど、後から見て事業収入でないと分かるようにしておくと、申告や問い合わせの際に説明しやすくなります。
支払った側の所得控除との関係
養育費を「受け取る側」ではなく「支払う側」の立場で気になる方もいるかもしれません。支払う側にとって養育費は、原則として必要経費にも所得控除にもならず、所得税を減らす効果は基本的にありません。受け取る側が非課税である一方、支払う側も税金面での控除はない、という整理になります。ご自身がどちらの立場かによって扱いが変わる点を押さえておきましょう。
子どもを扶養に入れられるかの判定
扶養控除の基本的な考え方
子どもを扶養親族として申告できれば、扶養控除によって課税される所得が減り、所得税や住民税の負担を軽くできます。扶養親族に該当するかどうかは、主に「生計を一にしているか」「その親族の年間の合計所得金額が一定額以下か」といった条件で判定します(生計を一にする・所得要件の考え方は国税庁タックスアンサーNo.1191「配偶者控除」の解説も参考になります)。年齢によって控除額が変わり、特に特定扶養親族にあたる年代の子どもは控除額が大きくなります。
離婚後に子どもと一緒に暮らし、生活の面倒をみている親が、子どもを扶養親族として申告するのが一般的なケースです。
受け取った養育費は子どもの所得には含めない
扶養判定でよく心配されるのが、「養育費をもらっていると、子どもの所得が増えて扶養から外れてしまうのでは」という点です。しかし、親が子どもの養育のために受け取る養育費は、子ども自身のもうけ(所得)ではありません。したがって、養育費を受け取っていることが、ただちに子どもの合計所得金額を押し上げ、扶養から外す原因になるわけではありません。
子どもがアルバイトなどで自分の収入を得ている場合は、その収入から計算される所得が扶養の判定に関わってきますが、これは養育費とは別の話として考えます。
父母どちらか一方でしか扶養にできない
注意したいのは、同じ子どもを父と母の双方が同時に扶養控除の対象にすることはできない、という点です。離婚後も両親がそれぞれ子どもの生活費を負担しているようなケースでは、どちらが扶養控除を受けるのかを当事者間で整理しておく必要があります(誰の扶養にするかの付け替えは扶養控除の付け替えや子の成長に伴う扶養の組み替えも参考になります)。
仮に父母の双方が同じ子どもを扶養親族として申告してしまうと、後から税務署の確認が入り、一方は扶養控除を取り消されることになります。誰が扶養に入れるのかをあらかじめ決めておくと、こうした行き違いを防げます。
ひとり親に関わる控除も確認しておく
ひとり親控除という仕組み
離婚や死別などにより、現在は配偶者がいない状態で子どもを育てている方には、ひとり親控除という所得控除が設けられています(要件の詳細は離婚・死別と寡婦・ひとり親控除で解説しています)。一定の要件を満たすと、課税される所得から決まった金額を差し引くことができ、所得税・住民税の負担を軽くできます。
養育費を受け取っている個人事業主の方でも、要件に当てはまればひとり親控除を受けられる場合があります。扶養控除と合わせて、自分が使える控除を取りこぼさないようにしましょう。
要件は所得や生計の状況で決まる
ひとり親控除には、生計を一にする子どもがいること、本人の合計所得金額が一定額以下であること、事実上婚姻関係と同様の事情にある相手がいないことなど、いくつかの要件があります。要件の細かい部分は状況によって判断が分かれることもあるため、自分が当てはまるか迷う場合は、確定申告の前に確認しておくと安心です。
個人事業主の場合、その年の事業の状況によって合計所得金額が変動します。前年は要件を満たしていても、今年は所得が増えて対象から外れる、あるいはその逆もあり得ますので、毎年改めてチェックする習慣をつけておきましょう。
申告前に整理しておきたい実務ポイント
受け取っているお金を一覧にする
確定申告の準備として、まずは1年間に受け取ったお金を「課税されるもの」と「課税されないもの」に仕分けしておくと整理が進みます。事業の売上は課税される収入、養育費・婚姻費用は原則として課税されない受け取り、という大きな区分を意識するだけでも、申告書に何を書くかがはっきりします。
扶養や控除の証拠書類をそろえる
子どもと生計を一にしていることが分かる住民票などの書類
養育費の取り決めや受け取り状況がわかるメモ・通帳の記録
社会保険料控除や生命保険料控除など、その他の控除証明書
これらをあらかじめ手元にそろえておくと、扶養控除やひとり親控除を申告する際にスムーズです。後から問い合わせを受けたときにも、根拠を示しやすくなります。
迷ったら自己判断で済ませない
養育費の受け取り方が一般的でない場合や、父母どちらが扶養に入れるかでもめている場合など、判断が難しいケースもあります。税金の取り扱いを誤ると、本来納めなくてよい税金を払ってしまったり、逆に申告漏れを指摘されたりすることにつながります。少しでも不安が残るときは、自己判断で終わらせず、税務署や税理士に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 毎月受け取っている養育費は、確定申告書のどこに書けばよいですか?
子どもの養育のために通常必要な範囲で受け取る養育費は、原則として所得税の課税対象にならないため、確定申告書に収入として記載する必要は基本的にありません。申告書に書くのは、事業所得などの課税される所得です。養育費を事業の売上に含めないよう、帳簿の段階で区別しておきましょう。
Q. 養育費をもらっていると、子どもを扶養に入れられなくなりますか?
養育費は子ども自身のもうけ(所得)ではないため、受け取っていること自体が扶養から外す原因になるわけではありません。扶養に入れられるかどうかは、生計を一にしているか、その子の合計所得金額が一定額以下かなどで判定します。子どもがアルバイト収入を得ている場合は、その所得が判定に関わる点だけ別に確認しましょう。
Q. 元配偶者も同じ子どもを扶養にしているようです。問題ありませんか?
同じ子どもを父と母の双方が同時に扶養控除の対象にすることはできません。双方が申告してしまうと、後から税務署の確認が入り、一方は扶養控除が取り消されます。どちらが扶養に入れるのかを当事者間であらかじめ決めておくことをおすすめします。
養育費は原則非課税|扶養と控除の整理がカギ
個人事業主が受け取る養育費・婚姻費用は、子どもや生活を支えるための分担金であり、通常必要な範囲のものであれば原則として課税されません。確定申告で集計するのはあくまで事業所得などの課税される所得であり、養育費を売上に含める必要はありません。一方で、子どもを扶養に入れられるかどうかや、ひとり親控除を使えるかどうかは、ご自身の税負担に直結する大切なポイントです。受け取ったお金を課税・非課税に仕分けし、扶養や控除の根拠書類をそろえておくことが、スムーズな申告への近道です。
とはいえ、本業が忙しい中で、養育費と事業収入の区別をつけながら帳簿づけを行い、扶養や控除まで漏れなく整理して申告まで仕上げるのは、大きな負担になりがちです。慣れない判断に時間を取られて、本来の仕事に集中できなくなってしまうこともあるでしょう。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








