質屋・質貸業の確定申告|質料収入と流質物の売上計上をやさしく解説
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確定申告

質屋・質貸業の確定申告では、質料(利息)収入と流質物の売却収入を分けて計上するのが基本です。請け戻しで受け取る元金は売上に含めず、流質物は売れて初めて売上になります。帳簿づけから消費税まで、迷いやすいところを順に整理します。
質屋は、品物を担保にお金を貸す貸金と、流れた品物を売る物販という二つの顔を持つため、収入の性質が入り混じります。質料と売上、在庫と原価、消費税の区分まで、まずは全体像をつかんでおくと、日々の記帳や決算で迷いにくくなります。
☑ 質料(利息)収入と、流質物を売ったときの売上をどう区別して計上すればいいかわからない
☑ お客さまから預かっている質草を、自分の在庫として帳簿に載せてよいのか迷っている
☑ 流れた品物を売ったときの「原価」が何になるのか、はっきりイメージできない
質屋・質貸業は、品物を担保にお金を貸して質料(利息)を受け取り、期限までに請け戻されなかった品物(流質物)を売って利益を得るという、二つの顔を持った商売です。この「貸金」と「物販」が混ざり合うところが、ほかの業種にはない確定申告の難しさになっています。質料は売上なのか利息なのか、預かり中の質草は在庫なのか、流れた品物を売ったときの原価はいくらなのか——考え出すと手が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
質料収入と流質物の売上計上を中心に、帳簿づけの考え方から経費、消費税の扱いまでを整理します。自分の商売のどのお金をどの欄に書けばよいのか、全体の流れをつかむ手がかりにしてください。
質屋・質貸業の収入は大きく二種類に分かれます
質料(利息)収入と流質物の売却収入
質屋の収入は、性質の異なる二つに分けて考えると整理しやすくなります。一つは、お金を貸している間に受け取る質料(質物利息)です。これは品物を担保にお金を貸し付けたことへの対価で、貸金業から生まれる収入にあたります。もう一つは、期限までに請け戻されず質流れになった品物(流質物)を販売して得る売却収入です。こちらは古物の物販から生まれる収入です。
どちらも事業所得の収入金額として申告しますが、原価や経費の考え方が違うため、帳簿の上では分けて記録しておくのが基本です。決算のときに内訳がわからなくなると、所得の計算が一気に難しくなります。中古品の買取と販売という点では、買取・リサイクル業の確定申告とも共通する部分があります。
請け戻し(受け戻し)は売上ではありません
お客さまが期限内に元金と質料を支払って品物を取り戻すことを「請け戻し」といいます。このとき受け取る元金部分は、もともと貸したお金が返ってきただけなので、収入(売上)にはなりません。収入として計上するのは、あくまで上乗せで受け取った質料の部分だけです。
たとえば3万円を貸して、後日3万円の元金と3千円の質料を受け取った場合、収入になるのは質料の3千円だけです。元金3万円を売上に含めてしまうと、所得が大きくふくらんでしまうので注意しましょう。
質料(利息)収入の計上のしかた
いつの収入として計上するか
質料は、契約や約定にもとづいて受け取る利息的な収入です。原則として、その質料が確定した時期、つまり請け戻しや質流れによって金額が定まったタイミングで、その年の収入として計上していきます。年をまたいで貸し付けが続いている取引については、どの時点で収入に計上したかを毎年同じルールで処理し、一度決めた基準をころころ変えないことが大切です。
少額の質料を毎日のように受け取る商売ですから、一件ずつの金額は小さくても、合計すると無視できない金額になります。日々の受取をこまめに記録し、月ごと・年ごとに集計できるようにしておきましょう。
帳簿への記録は「貸付」と「質料」を分ける
帳簿づけでは、お金の動きを次のように分けて考えると整理できます。
貸し付けたとき:手元の現金が減り、貸付金(債権)が増える。これは収入でも経費でもありません
請け戻されたとき:元金は貸付金の回収、上乗せ分の質料が収入
質流れになったとき:貸付金が「在庫としての商品」に振り替わる
このように、貸したお金そのものは収入に含めず、質料だけを収入として積み上げていくのが基本の形です。現金商売で取引件数が多い分、記録のルールを決めておくことが、正確な申告への近道になります。質料と物販の収入を毎回分けて集計する作業は、取引が多いほど手間がかかります。仕訳の切り分けに不安があれば、確定申告の代行に任せるやり方もあります。
流質物(質流れ品)の売上と原価の考え方
質流れになった時点では売上ではない
期限を過ぎて請け戻されなかった品物は、質流れとなって質屋のものになります。ただし、質流れになっただけでは売上は発生しません。この段階では、貸していたお金(貸付金)が「販売用の在庫(商品)」に姿を変えただけ、と考えます。実際に売れて初めて、その売却金額が収入として計上されます。
つまり質流れ品は、仕入れた商品と同じように、売れるまでは在庫として持っておき、売れたときに売上に計上するという物販と同じ流れになります。流質物をネット販売する場合の売上や決済手数料の記帳は、ネットショップ・ECの記帳が参考になります。
流質物の「原価」は貸し付けた元金が基本
流質物を売ったときの利益は、売却金額から原価を差し引いて計算します。ここで気になるのが「原価はいくらか」という点です。質屋の場合、品物を仕入れて代金を払ったわけではなく、お金を貸して流れてきたものなので、その品物を担保に貸し付けていた元金(貸付額)が、おおむね原価にあたると考えるのが基本です。
たとえば3万円を貸していた品物が流れ、後日5万円で売れたとします。このとき、売却収入は5万円、原価は貸していた元金3万円、差額の2万円がその品物から生まれた利益、というイメージです。実際の処理では、流質時に貸付金から商品(在庫)へ振り替えた金額が原価のもとになります。貴金属の質草が流れて売却したときの考え方は、金・地金を売却したときの確定申告もあわせて確認できます。
売れ残った流質物は棚卸資産になる
その年のうちに売れなかった流質物は、年末時点で在庫(棚卸資産)として残ります。確定申告では、年末に残っている在庫の金額(期末棚卸高)を正しく計算することが欠かせません。売上原価は「年初の在庫+その年に在庫へ振り替わった金額-年末の在庫」という形で計算されるため、棚卸を省くと所得が正しく出ません。
年末には実際に手元にある流質物を数え、いくらで在庫として評価するかを記録しておきましょう。在庫の評価方法は一度決めたら継続して使うのが原則です。
経費として計上できるもの
店舗運営に直接かかる費用
質屋・質貸業の経費は、ほかの店舗ビジネスと共通するものが多くあります。代表的なものを挙げます。
店舗の家賃、水道光熱費、火災保険料
質草を安全に保管するための金庫・保管設備の費用や減価償却費
従業員の給与、広告宣伝費、通信費
許可の維持や事務にかかる諸費用、消耗品費
預かった品物を傷めたり盗まれたりしないよう保管する設備や保険は、質屋ならではの重要な経費です。事業のために支出したものは、領収書や請求書を残して漏れなく計上しましょう。
売れ残りや価値の下がった在庫の扱い
流質物の中には、思ったより高く売れなかったり、流行が過ぎて価値が下がったりする品物も出てきます。在庫の評価方法によっては、期末に時価が下がっているものを評価減できる場合があります。ただし評価減はルールにもとづいた処理が必要で、自己判断で大きく減らすと指摘を受けることがあります。判断に迷う在庫がある場合は、専門家に確認すると安心です。
消費税や記録の保存で気をつけたいこと
質料と物販で消費税の扱いが異なる
消費税の面でも、質料収入と物販収入は性質が違います。一般に、お金の貸し付けにともなう利息的な収入は消費税のかからない取引とされ、物品の販売は消費税の課税対象となります。質屋は両方の収入を持つため、課税売上と非課税売上が混在することになります。自分が消費税の課税事業者にあたるかどうか、また売上をどのように区分して集計するかは、商売の規模によって扱いが変わるため、早めに整理しておくことが大切です。消費税の基本的なしくみは、国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」で確認できます。
区分の判断やインボイス制度への対応は専門的になりやすいところです。迷ったときは税務署や専門家に相談し、思い込みで処理しないようにしましょう。
古物営業ならではの記録の保存
質屋は古物を扱う事業として、品物の受け入れや販売に関する記録(帳簿)を一定期間保存することが求められます。これは確定申告のための帳簿とは別の目的のものですが、誰からいくらで預かり、いくらで売ったかという記録は、結果として売上や原価の根拠資料にもなります。日々の記録をきちんと残しておくことが、申告の手間とリスクの両方を減らしてくれます。
よくある質問
Q. 預かっている質草は、自分の在庫として帳簿に載せるべきですか?
請け戻しの期限が来る前の質草は、まだお客さまのもので、いつでも取り戻される可能性があります。そのため、預かっている段階では自分の在庫(商品)としては計上せず、貸し付けたお金を貸付金として記録しておくのが基本です。在庫(商品)に振り替えるのは、質流れになって品物が自分のものになったタイミングです。
Q. 質料を白色申告と青色申告で分ける必要はありますか?
白色か青色かは申告の方法の違いであって、収入の中身を分ける話とは別です。どちらの場合も、質料収入と流質物の売却収入は内容を分けて記録しておくのが望ましい点は変わりません。なお、きちんと帳簿をつけて青色申告を行えば、青色申告特別控除(最大65万円)など税制上の特典を受けられる可能性があり、現金商売で取引件数の多い質屋にとってメリットになりやすい仕組みです。青色申告特別控除の要件は、国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
Q. 流れた品物を自分用に使った場合はどうなりますか?
質流れ品を販売せず、自分や家族のために使ったり持ち帰ったりした場合は、原則としてその時点の価値相当を収入として扱う「自家消費」の考え方が関係してきます。在庫から抜けるのに売上が立たないままだと所得が正しく計算されないためです。件数が多い場合は記録が複雑になりやすいので、迷ったら専門家に確認することをおすすめします。
まとめ|質料は利息、流質物は物販と分けて考える
質屋・質貸業の確定申告は、「貸金から生まれる質料収入」と「質流れ品の販売から生まれる売却収入」を分けて考えることが、何よりの土台になります。請け戻しの元金は売上ではなく、流質物は売れて初めて売上になり、その原価のもとは貸していた元金、年末には在庫の棚卸が必要——この一連の流れさえつかめば、複雑に見える質屋の帳簿も筋道立てて整理できるようになります。
とはいえ、毎日たくさんの貸付や請け戻しが発生し、質料と物販が入り混じる質屋の経理を、本業のかたわら一人でこなすのは骨が折れます。取引件数が多いほど記録は煩雑になり、消費税の区分や棚卸の評価まで重なると、申告の時期に慌ててしまいがちです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








