個人事業主が使える設備投資の税制優遇と補助金の併用を解説
#
税金

設備投資の税制優遇(特別償却・税額控除)と補助金は、制度が異なるため多くの場合は併用できます。ただし補助金は交付決定後に発注する順序や後払い・課税といった特性があり、税制優遇にも青色申告などの前提があります。両者の基本と併用の注意点、圧縮記帳までを個人事業主向けに整理します。
設備投資の負担を軽くする制度は、順序と記帳の整え方さえ押さえれば、個人事業主でも十分に活用できます。制度ごとにバラバラに調べるのではなく、税制優遇と補助金をセットで見ていくのがコツです。まずは全体像から確認しましょう。
☑ 機械や設備を買いたいけれど、まとまった出費が経営に響かないか不安だ
☑ 設備投資に使える税制優遇と補助金があると聞いたが、両方使えるのか分からない
☑ 補助金をもらうと税金が増えると聞いて、結局得なのか損なのか整理できない
個人事業主にとって、機械・器具・ソフトウェアといった設備への投資は、事業を伸ばすための大切な一歩です。一方で、数十万円から数百万円という支出は資金繰りに直結するため、「税金や補助金で少しでも負担を軽くできないか」と考えるのは自然なことです。ところが、税制優遇と補助金はそれぞれ制度が複雑なうえ、「両方を同時に使えるのか」「補助金を受け取ると課税されるのか」といった疑問が重なり、なかなか踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
以下では、個人事業主が設備投資をする際に活用できる税制優遇と補助金の基本的な考え方、そして両者を併用するときの注意点を整理します。設備投資を検討する際にどの制度を確認すればよいか、判断の順序まで具体的に確認しましょう。
設備投資に使える税制優遇の基本
「特別償却」と「税額控除」という2つの考え方
個人事業主が設備投資をしたとき、税負担を軽くする仕組みには大きく分けて2つの方向性があります。ひとつは特別償却、もうひとつは税額控除です。
特別償却は、通常の減価償却に上乗せして、初年度などに多めに経費を計上できる仕組みです。早い段階で経費を多く計上できるぶん、その年の所得を圧縮し、納税のタイミングを後ろにずらす効果があります。一方の税額控除は、計算した所得税額そのものから一定額を直接差し引く仕組みで、こちらは納める税金の総額を減らす効果があります。減価償却の基本的な考え方は、国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」で確認できます。
ざっくり言えば、特別償却は「税金を払う時期を先送りする」、税額控除は「税金そのものを減らす」というイメージです。どちらが有利かは、その年の所得や資金繰りの状況によって変わります。
個人事業主が対象になる主な優遇制度
設備投資にかかわる税制優遇には、いくつかの代表的な制度があります。制度名や細かい要件は改正されることがありますが、考え方として次のようなものがあると押さえておきましょう。
中小企業者などが一定の機械・装置などを取得したときに、特別償却または税額控除を選べる制度
一定の少額な資産について、取得した年に全額を経費にできる特例(少額減価償却資産の特例)
生産性向上や賃上げなどに取り組む事業者を後押しする各種の優遇措置
個人事業主であっても、青色申告をしていることなどの条件を満たせば、これらの優遇を受けられる場合があります。逆に言えば、白色申告では使えない優遇も多いため、設備投資を計画しているなら青色申告を選んでおくことが前提になります。
少額減価償却資産の特例は使いやすい
数ある優遇のなかでも、個人事業主にとって特に身近なのが少額減価償却資産の特例です。これは、取得価額が一定額未満の資産について、本来は数年かけて減価償却するところを、取得した年に一括で経費にできる仕組みです。年間の合計額に上限があるものの、パソコンや小型の機材などをまとめて購入したいときに役立ちます。こちらも青色申告をしていることが利用の条件になります。
個人事業主が使える設備投資系の補助金
補助金は「もらう前提」では考えない
設備投資を後押しする補助金には、生産性向上や業務効率化、販路開拓などを目的としたものがあります。代表的なものとして、小規模事業者の販路開拓を支援する小規模事業者持続化補助金や、生産性向上のための設備・システム導入を支援する補助金などが知られています。使えそうな補助金は、中小企業庁のミラサポplusなどで探せます。
ただし、補助金は申請すれば必ずもらえるものではなく、審査を経て採択された場合に交付される点に注意が必要です。さらに、原則として「採択・交付決定の後に発注・契約・支払いをする」という順序が決められていることがほとんどです。補助金が出る前提で先に設備を買ってしまうと、その支出が補助の対象外になってしまう恐れがあります。設備投資の計画と補助金のスケジュールは、必ずセットで考えましょう。
補助金は原則「後払い」
多くの補助金は、先に自分で費用を支払い、後から補助金が振り込まれる精算払い(後払い)の形をとります。つまり、いったんは設備代金の全額を自己資金や融資でまかなう必要があるということです。「補助金があるから資金は心配ない」と考えていると、支払い時点で資金が足りなくなることがあります。補助金をあてにする場合でも、当面の支払いに耐えられる資金計画を立てておくことが欠かせません。
申請には事前準備と期限がある
補助金には公募期間が定められており、募集のたびに申請を受け付けます。申請には事業計画書などの書類づくりが必要で、準備にはそれなりの時間がかかります。また、補助金によってはGビズIDなどの事前登録が求められることもあります。気になる補助金を見つけたら、公募要領で対象経費・補助率・上限額・スケジュールを早めに確認し、余裕をもって準備を進めましょう。持続化補助金には通常枠のほかに複数の特別枠があるため、申請枠の選び方(通常枠と特別枠の違い)もあわせて確認しておくと、自分に合う枠を選びやすくなります。
税制優遇と補助金は併用できるのか
原則として「制度が違えば併用は可能」
多くのケースで、設備投資の税制優遇と補助金は、それぞれ別の制度であるため併用そのものは可能です。たとえば補助金を受けて設備を導入し、そのうえで税制優遇(特別償却や税額控除)を適用する、という組み合わせが考えられます。
ただし、これはあくまで一般論です。補助金の種類や税制優遇の制度によっては、「同じ支出について重ねて優遇を受けることに制限がある」「補助金で補填された部分は税制優遇の計算から除く」といった調整ルールが定められていることがあります。併用を前提に大きな投資を考えるときは、それぞれの公募要領や制度の要件、税務上の取扱いを事前に確認することが大切です。インボイス対応も兼ねて投資する場合は、持続化補助金のインボイス特例枠の上乗せ対象も確認しておくとよいでしょう。
「圧縮記帳」で補助金への課税をやわらげる考え方
補助金を受け取ると、その金額は原則として収入(事業所得など)として課税の対象になります。せっかく補助金をもらっても、その分の税金が増えてしまうと、手元に残るお金は目減りしてしまいます。
こうした負担をやわらげる仕組みとして圧縮記帳があります。これは、補助金で取得した資産の帳簿価額を補助金相当額だけ引き下げることで、補助金を受け取った年の課税所得を抑える処理です。課税が完全になくなるわけではなく、その後の減価償却費が減ることで税金が将来に繰り延べられる、というのが本質的な効果です。圧縮記帳には一定の要件や手続きがあるため、適用を考える場合は専門家に相談しながら進めると安心です。補助金の入金や圧縮記帳を含む記帳・申告まで手が回らない場合は、設備投資の申告まで任せる確定申告の代行という方法もあります。
補助金の対象経費の取り扱いに注意
補助金を受け取った場合、設備の取得価額のうち補助金でまかなわれた部分について、減価償却や税制優遇の計算上どう扱うかが論点になります。補助金で補填された部分まで含めて経費や優遇の計算をしてしまうと、結果的に重複した控除になってしまう可能性があるためです。記帳の段階で、補助金の入金・設備の取得・圧縮記帳の処理を正しく結びつけておくことが、後々のトラブルを防ぐポイントになります。
失敗しないための実務ステップ
1. 投資の目的と金額を先に固める
制度ありきで設備を選ぶのではなく、まずは「何のためにどんな設備が必要で、いくらかかるのか」をはっきりさせることが出発点です。投資の目的が明確であれば、それに合った補助金や税制優遇を探しやすくなりますし、補助金の申請に必要な事業計画書も書きやすくなります。
2. 補助金と税制優遇を並行して調べる
使えそうな補助金の公募期間・対象経費・補助率・上限額を確認する
対象となる設備に適用できる税制優遇(特別償却・税額控除など)があるか確認する
併用する場合の調整ルールや、青色申告などの前提条件を確認する
補助金と税制優遇は別々に検討しがちですが、両方を並行して調べておくと、トータルでもっとも有利な組み合わせを選べます。とくに補助金は「契約・支払いの前に交付決定が必要」という順序があるため、設備の発注時期は補助金のスケジュールに合わせて決めましょう。
3. 記帳と書類保存を丁寧に行う
設備投資をしたら、契約書・請求書・領収書・補助金の交付決定通知などの書類をきちんと保存し、帳簿にも正確に反映することが大切です。とくに補助金を受けた場合は、入金日や対象経費が後から確認できるよう整理しておきましょう。確定申告の際には、特別償却や税額控除の適用に必要な明細を申告書に添付することになります。日々の記帳が整っていれば、こうした処理もスムーズに進みます。
よくある質問
Q. 補助金をもらうと、結局は税金で取られて意味がないのでは?
補助金は原則として収入として課税の対象になりますが、補助金の全額がそのまま税金で消えるわけではありません。税率は所得に応じた割合であり、補助金額の一部が税負担になるイメージです。さらに圧縮記帳という処理を使えば、受け取った年の課税をやわらげることもできます。手元に残る金額で考えれば、要件に合う補助金を活用するメリットは十分にあるといえます。
Q. 特別償却と税額控除は、どちらを選べばよいですか?
どちらが有利かは、その年の所得の大きさや今後の見通し、資金繰りの状況によって変わります。所得が大きく出ている年に納税を先送りしたいなら特別償却、安定して利益が出ていて税額そのものを減らしたいなら税額控除が向いていることが多いです。選択できる場合は、両方で試算して比較するのがおすすめです。判断に迷うときは専門家に相談しましょう。
Q. 設備を買ってから補助金を申請してもよいですか?
多くの補助金では、原則として交付決定の後に発注・契約・支払いをする必要があり、先に買ってしまった設備は補助の対象外になることがあります。補助金の活用を考えているなら、設備を購入する前に必ず公募要領を確認し、申請から交付決定までの流れを踏まえて発注のタイミングを決めてください。
結論:設備投資は「制度の順序」と「正しい記帳」が鍵
個人事業主の設備投資では、特別償却や税額控除といった税制優遇と、設備導入を後押しする補助金を上手に組み合わせることで、負担を大きく軽くできる可能性があります。多くの場合これらは併用が可能ですが、補助金は「交付決定の後に支払う」という順序や、後払い・課税といった特性があり、税制優遇にも青色申告などの前提条件があります。制度の順序を守りながら、自分の事業に合った組み合わせを選ぶことが大切です。
とはいえ、補助金の申請書づくりや、圧縮記帳を含む正確な記帳・申告までを本業のかたわらでこなすのは、決して簡単ではありません。「制度は使いたいけれど、手続きや帳簿づけまで手が回らない」という声も多く聞かれます。
設備投資まわりの帳簿処理や、補助金・税制優遇をふまえた記帳に不安があるなら、記帳ごと外注してしまうのも一つの手です。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送・スマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から確定申告書類の作成までトータルでサポートします。初期費用は0円です。まずは設備投資まわりの記帳と申告を任せられるか無料で相談するところから。サービスの中身は記帳代行の仕組みを知ると確認できます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








