書道・茶道・華道など稽古事の師範の確定申告|月謝・許状料と道具代の処理を解説
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確定申告

稽古事の師範の確定申告は、月謝・許状料・入門料などの収入を種類ごとに整理し、預かり金と自分の収入を分けて記録することが第一歩です。そのうえで道具・材料・着物・研修費などの経費を教室用とプライベート用に分けて積み上げる方法を、書道・茶道・華道の実情に沿って整理します。
書道・茶道・華道といった稽古事の師範として教室を開いていると、収入の形が月謝だけでなく、許状(免状)の取り次ぎ料や入門料、出張稽古の謝礼など、いろいろな種類に分かれていきます。一方で、道具や着物、お花や和菓子といった支出も多く、「これは経費でいいのだろうか」と判断に迷う場面が次々と出てくるのではないでしょうか。
☑ 生徒さんからの月謝や、許状の取り次ぎでいただくお金をどう申告すればよいかわからない
☑ 筆・墨・茶碗・花器など、自分の稽古用と教室用の道具代をどこまで経費にできるか迷う
☑ 自宅の和室を稽古場にしているが、家賃や光熱費を経費に入れてよいのか不安だ
このコラムでは、お稽古事の師範の方が確定申告をするうえで知っておきたい、月謝や許状料といった収入の考え方と、道具代・教室費用などの経費の整理の仕方を整理します。自分の教室のお金の流れをどう帳簿に落とし込めばよいか、全体像をつかんでいきましょう。
師範の収入はどう扱われる?まず所得の種類を整理しましょう
教室を継続して開いていれば「事業所得」が基本
自宅やお稽古場で継続的に生徒さんを指導し、月謝などの形で収入を得ている場合、その収入は基本的に事業所得として扱われます。収入から必要経費を差し引いて所得を計算する所得税の基本は、国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」で確認できます。事業所得であれば、青色申告を選べば青色申告特別控除などのメリットも受けられます。
一方、たまに頼まれて単発で指導するだけ、あるいは会社員などの本業がありお稽古の指導はごく小規模、という場合は雑所得になることもあります。どちらに当たるかは、継続性や規模、生活の中での位置づけなどから総合的に判断されます。規模が大きくなり、教室運営が収入の柱の一つになっているなら、事業所得として青色申告の届出を検討するのがおすすめです。
家元・宗家との関係による収入のちがい
茶道や華道、書道の世界では、流派の家元・宗家のもとに師範が連なり、その下で生徒さんを指導するという仕組みが一般的です。この場合、師範自身が独立して教室を運営し、生徒さんから直接月謝を受け取っているのか、それとも組織の中で報酬を受け取る立場なのかによって、お金の流れが変わってきます。
自分の名前で教室を構え、生徒募集から月謝の受け取りまでを自分で行っているのであれば、独立した事業として申告するのが自然です。ご自身の立ち位置がどちらに近いのか、まず整理してみましょう。
申告が必要になる目安
事業所得や雑所得などの合計が一定額を超えると、確定申告が必要になります。専業で教室を営んでいる方はもちろん、会社員として給与をもらいながら週末に教室を開いているような方も、稽古事の所得が一定額を超えれば申告の対象です。「趣味の延長だから」と思っていても、継続して収入を得ているなら、一度きちんと申告の要否を確認しておきましょう。
月謝・許状料・入門料など、収入の種類ごとの考え方
月謝・稽古料は受け取った分が売上
毎月の月謝やお稽古料は、教室の中心となる収入です。現金で受け取る場合も、口座振込やキャッシュレスで受け取る場合も、受け取った金額はすべて売上として記録します。月ごとに「誰から・いくら受け取ったか」を出席簿や月謝袋の記録と突き合わせておくと、年末の集計がぐっと楽になります。
体験稽古の参加費や、季節の特別講座・お茶会・展覧会の参加費など、月謝以外に受け取るお金も、教室の活動から生じた収入であれば売上に含めて考えます。受け取ったお金を種類ごとにメモしておく習慣をつけましょう。
許状料・免状料は「取り次ぎ」かどうかがポイント
茶道・華道・書道では、段位や資格に応じて家元・宗家から許状(免状)が発行され、その際に許状料が動きます。師範が生徒さんと家元の間に立ってお金を取り次ぐケースが多く、ここは扱いが少し複雑になります。
生徒さんから預かった許状料をそのまま家元へ納める「取り次ぎ」の部分は、預かって右から左へ渡すだけのお金です
その取り次ぎに対して師範が受け取る手数料・取次料があれば、それは師範自身の収入になります
大切なのは、預かったお金と自分の収入を区別して記録しておくことです。すべてを一緒に管理してしまうと、何が自分の売上で何が単なる預かり金なのかがわからなくなります。許状にまつわるお金の流れは、流派ごとに慣習が異なる部分もあるため、不安な場合は所属する流派の事務局や税務署、専門家に確認しながら整理するのが安心です。
入門料・出張稽古・揮毫や生け込みの謝礼
新しい生徒さんを迎えるときの入門料や、企業・施設へ出向く出張稽古の謝礼も収入です。書道であれば看板や表彰状の揮毫を頼まれること、華道であればイベント会場の生け込みを依頼されることもあるでしょう。こうした単発の仕事で受け取る報酬も、教室の月謝とあわせて事業の収入として計上します。取引先によっては源泉徴収されたうえで支払われることもあるため、支払いの明細はきちんと保管しておきましょう。
道具代・材料費はどこまで経費にできる?
教室で使う道具・材料は経費の中心
師範のお仕事では、道具や材料の支出が大きな割合を占めます。教室の指導や運営のために使ったものは、必要経費として収入から差し引けます。代表的なものを挙げてみましょう。
書道:筆、墨、硯、半紙・画仙紙、文鎮、下敷き、生徒用に貸し出す道具一式
茶道:抹茶、和菓子、茶碗・茶筅・茶杓などの茶道具、炭、懐紙
華道:花材、花器、剣山、はさみ、保水や養生のための資材
これらのうち、教室の稽古で消費するもの・生徒さんに使ってもらうものは、教室運営のための支出として経費に計上できます。お花や和菓子、抹茶などその都度なくなる材料は、買ったレシートをこまめに残しておくことが大切です。華道のように花材を仕入れて扱う点では花屋・園芸業の確定申告も、材料費や在庫の考え方の参考になります。
高価な道具は「一括」か「分割」かを意識する
茶道の釜や立派な花器、書道の高級な硯など、一つで高額になる道具は、買った年に全額を経費にできるとは限りません。金額が一定以上のものは、使う年数に応じて少しずつ経費にしていく「減価償却」という考え方で処理することがあります。
逆に、比較的少額の道具であれば、買った年にまとめて経費にできる場合もあります。いくらから減価償却の対象になるかは取り扱いのルールがあるため、高価な道具を購入したときは、購入金額がわかる書類を残したうえで、処理の仕方を確認しておきましょう。
自分の稽古用と教室用は分けて考える
師範自身も日々お稽古を続け、自分の腕を磨いておられることと思います。ただ、確定申告の経費として認められるのは、あくまで教室の収入を得るために使った支出です。完全に個人の趣味・研鑽のための道具と、教室で生徒さんの指導に使う道具は、本来分けて考える必要があります。
とはいえ、師範の場合は自分の研鑽と教室の指導が地続きで、線引きが難しい場面も多いものです。一つの道具を両方に使っているようなときは、使っている割合などの合理的な基準で按分(割り振り)する考え方をとります。判断に迷うものは、なぜその割合にしたのかをメモに残しておくと、後から説明しやすくなります。
教室の運営費・着物・研修費などの経費
自宅を稽古場にしている場合の家事按分
自宅の和室や一室を稽古場として使っている場合、その部屋にかかる費用の一部を経費にできることがあります。これを家事按分といいます。家全体のうち稽古に使っている広さの割合や、使っている時間の割合などをもとに、家賃・電気代・水道代・通信費などを事業用とプライベート用に分けて計算します。
たとえば自宅の一室をほぼ稽古専用に使っているなら、その面積分の家賃や光熱費を合理的な割合で経費に計上する、といった考え方です。生活費とごちゃ混ぜにせず、「事業に使った分だけ」を切り出すのがポイントになります。
着物・帯・装いにかかる費用
茶道や華道、書道の師範は、稽古や茶会、式典の場で着物を着る機会が多くあります。教室の指導や行事のために必要な装いにかかる費用は、教室運営に関わる支出として扱える場合があります。ただし、日常でも着るような衣服との区別がつきにくいものは、プライベートとの線引きが問われやすい部分です。仕事のための衣装や装いの経費の考え方はスーツ・作業着など服飾費の経費で確認できます。何のための支出かをはっきりさせ、教室の活動に使ったことがわかる記録を残しておきましょう。
研修費・会費・その他の運営費
流派の研修会や講習会の参加費、師範としての資格を維持するための会費
生徒募集のためのチラシ・ホームページ・SNS広告などの費用
稽古場への交通費、お茶会や展覧会の会場費
教室の連絡に使う電話・通信費、月謝袋や案内状などの消耗品
これらも、教室の収入を得るために使った支出であれば経費になります。研修や講習は師範としての技量を保ち、教室を続けていくために欠かせないものですから、参加した記録と領収書をそろえておきましょう。
帳簿づけと申告で気をつけたいこと
現金のやり取りこそ記録を丁寧に
稽古事の世界では、月謝や許状料を現金でやり取りすることがまだ多く残っています。現金は記録が残りにくく、あとから「いつ・誰から・いくら」を思い出すのが難しくなりがちです。月謝袋の記録や出席簿、入金日のメモなどをこまめに残し、受け取った都度に帳簿へ反映する習慣をつけましょう。現金の記録から申告書の作成まで任せたいときは、確定申告の丸投げ代行という方法もあります。預かった許状料と自分の収入を分けて記録することも、ここで効いてきます。
領収書・レシートは捨てずに整理
道具や材料、着物、研修費など、経費にできる支出は、レシートや領収書が証拠になります。花材や和菓子のように日々こまかく買うものも、一枚一枚が積み重なれば大きな金額です。月ごとに封筒や袋に分けて入れておくだけでも、年末の集計と申告がずいぶん楽になります。レシートが出ない支払いは、日付・相手・金額・内容をメモで残しておきましょう。
青色申告も検討してみる
教室を本格的に営んでいるなら、青色申告を選ぶメリットは小さくありません。きちんと帳簿をつけて要件を満たせば、青色申告特別控除(最大65万円)を受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越せるといった利点もあります。青色申告をするには事前の届出が必要なので、検討する場合は早めに準備を進めましょう。自宅から申告まで済ませたい場合はスマホでの確定申告(マイナンバーカード方式)にまとめています。なお、確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までです。
よくある質問
Q. 生徒さんから預かった許状料は、私の売上に入れるのですか?
家元へそのまま納める「取り次ぎ」の部分は、預かって渡すだけのお金ですので、ご自身の売上とは区別して記録します。その取り次ぎに対して師範として手数料や取次料を受け取っている場合は、その手数料の部分がご自身の収入になります。流派ごとに慣習が異なる部分もあるため、不安なときは流派の事務局や税務署、専門家に確認すると安心です。
Q. 自分の研鑽のために買った道具も経費にできますか?
確定申告の経費は、教室の収入を得るために使った支出が対象です。完全に個人の趣味・研鑽のためだけの道具は、本来は経費にはなりません。ただ、師範の場合は自分の稽古と教室の指導が重なる道具も多いため、両方に使うものは使用割合などの合理的な基準で按分して考えます。判断の根拠をメモに残しておくとよいでしょう。
Q. 月謝が少額で、会社員をしながら教えています。申告は必要ですか?
給与をもらいながら教室を開いている場合でも、稽古事による所得が一定額を超えると確定申告が必要になります。少額だから不要と思い込まず、まずは一年分の収入と経費を集計し、申告が必要かどうかを確認しましょう。判断に迷う場合は税務署や専門家に相談するのが確実です。
まとめ|収入の種類と道具代の整理が申告の第一歩
稽古事の師範の確定申告では、月謝・許状料・入門料・出張稽古の謝礼など収入の種類を整理し、預かり金と自分の収入を分けて記録することがまず大切です。そのうえで、道具・材料・着物・研修費などの経費を、教室のために使った分とプライベートな分に分けて積み上げていけば、申告は決して特別に難しいものではありません。日々の現金のやり取りと領収書を丁寧に残すことが、何よりの近道になります。
ただ、生徒さんの指導やお茶会・展覧会の準備で忙しい中、現金の記録から道具代の按分、確定申告書の作成までをすべて自分で行うのは重くのしかかります。お稽古に集中したいのに、帳簿づけに追われて気が休まらない、という方も少なくないでしょう。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








