事業所得が増えた翌年に効く節税の前倒し|共済・小額減価償却の使い分けを解説
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税金

事業所得が増えた翌年は、住民税や国民健康保険料、予定納税がまとめて重くなります。だからこそ、利益が出た年のうちに小規模企業共済の前納と少額減価償却の特例を組み合わせ、負担をならすのが「節税の前倒し」の考え方です。どちらをどう使い分ければよいか、判断の軸を整理します。
事業が軌道に乗って所得が増えるのは嬉しいことですが、その翌年には所得税・住民税だけでなく、国民健康保険料や予定納税の負担までまとめて重くのしかかってきます。「思ったより手元に残らなかった」と感じる方が多いのは、利益が出た年の対策を後回しにしてしまうからです。
☑ 事業所得が前年より大きく増えて、来年の税金や保険料が一気に上がりそうで不安だ
☑ 小規模企業共済や30万円未満の備品の特例があると聞いたが、どう使い分ければよいかわからない
☑ いつ・何を・いくら支払えば節税につながるのか、タイミングがつかめない
所得が増えた年にこそ意識したい「節税の前倒し」の考え方を、小規模企業共済などの共済制度と、少額減価償却資産の特例を中心に整理します。自分のケースでどの制度をどう組み合わせればよいか、判断の軸を持てるようになります。
なぜ「所得が増えた翌年」が要注意なのか
税金と社会保険料は前年の所得で決まる
個人事業主の負担を考えるうえで大切なのは、多くの負担が「前年の所得」をもとに後から計算されるという点です。住民税は前年の所得に対して翌年に課税され、国民健康保険料も前年の所得を基準に決まります。つまり、利益がぐっと伸びた年の影響は、その年だけでなく翌年の負担としても表れてくるのです。
さらに、前年の所得税額が一定以上になると、翌年には「予定納税」といって、税額の一部を年の途中に前払いする仕組みも始まります。所得が増えた実感がないまま納付通知が届き、資金繰りに驚く方も少なくありません。
利益が出た年のうちに動くのが基本
節税の多くは、その年の12月31日までに支出や手続きを終えていることが前提になります。年が明けてから「去年の分を何とかしたい」と思っても、できることは大きく限られます。だからこそ、所得が増えそうだと感じた年のうちに、使える制度を前倒しで検討しておくことが重要です。
ここでいう「前倒し」とは、無理にお金を使うことではありません。将来必要になる支出や、いずれ積み立てるべき資金を、所得が高い年に寄せるという発想です。同じ金額を払うなら、税率が高い年に充てた方が節税効果は大きくなります。
共済制度を使った所得控除の前倒し
小規模企業共済は「将来の退職金」を積み立てる仕組み
小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社の経営者が、廃業や引退に備えて積み立てる制度です。最大の特徴は、支払った掛金の全額が所得控除になる点にあります。掛金は月額1,000円から7万円までの範囲で設定でき、年額に直すと最大で84万円分を所得から差し引ける計算です。
積み立てたお金は、将来廃業したときなどに受け取れます。受け取り時には退職所得や公的年金等として扱われ、税制上の優遇を受けられる仕組みになっています。「今の節税」と「将来の備え」を同時に進められるのが、この制度の大きな魅力です。
所得が増えた年に掛金を寄せる工夫
小規模企業共済には、掛金を前納できる仕組みがあります。これを使うと、本来は翌年に払う分をその年のうちに支払い、所得控除を前倒しで受けることが可能です。利益が大きく出た年に、向こう1年分をまとめて前納するといった使い方が考えられます。前払いで所得控除の時期を寄せる発想は、国民年金保険料の2年前納で節税する方法とも通じます。
所得が高い年に前納して、その年の控除額を厚くする
掛金は途中で増額・減額ができるため、所得の波に合わせて調整する
無理のない範囲で続けられる金額から始め、利益が出た年に上乗せを検討する
ただし、掛金を支払う余力があることが大前提です。手元資金を圧迫してまで前納すると、本末転倒になりかねません。あくまで「払えるお金の置き場所を、税率の高い年に寄せる」という感覚で考えましょう。
iDeCoや経営セーフティ共済との関係
所得控除を活用した備えとしては、小規模企業共済のほかにiDeCo(個人型確定拠出年金)もあります。iDeCoの掛金も全額が所得控除の対象で、老後資金の準備と節税を両立できます。両方を併用することも可能なので、目的に応じて組み合わせるとよいでしょう。所得が伸びて資産形成が進んだ個人事業主が知っておきたい制度としては、国外転出時課税(出国税)の対象資産と備えもあります。将来の選択肢として頭の片隅に置いておくと安心です。
また、取引先の倒産に備える「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」は、掛金が所得控除ではなく必要経費として扱われる点が特徴です。一定の要件を満たせば前納もでき、利益が出た年の経費を厚くする手段になります。それぞれ性格が異なるため、自分の事業の状況に合うものを見極めることが大切です。
少額減価償却資産の特例を使い分ける
10万円・20万円・30万円という3つの区切り
パソコンや机、機械などの備品は、本来は「減価償却」といって、使用できる年数に分けて少しずつ経費にしていくのが原則です。減価償却の基本的な扱いは、国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」で確認できます。ただし金額によっては、その年に一括で経費にできる特例が用意されています。覚えておきたいのが、おおまかに10万円・20万円・30万円という3つの区切りです。
取得価額が10万円未満のものは、原則としてその年に全額を経費にできます
10万円以上20万円未満のものは、3年間で均等に経費にする「一括償却資産」という方法も選べます
青色申告をしている中小事業者などは、30万円未満のものを一定額まで、その年に全額経費にできる特例があります
所得が増えた年は「一括経費」を意識する
30万円未満の備品をその年に全額経費にできる特例は、利益が出た年と特に相性が良い制度です。本来なら数年に分けて経費化する資産でも、所得が高い年にまとめて経費にできれば、その年の課税所得を効果的に圧縮できます。年間の合計額には上限があるため、上限の範囲内でどの資産を当てるかを考えるのがポイントです。
逆に、利益が少ない年であれば、無理に一括で経費化せず、通常の減価償却や3年均等の方法を選び、経費を将来に分散させた方が有利になることもあります。同じ買い物でも、どの年に・どの方法で経費にするかで効果が変わるという視点を持つと、判断がしやすくなります。
買うこと自体が目的にならないように
節税のためにと、必要のない備品まで買い込んでしまうのは避けたいところです。経費にできるとはいえ、支払ったお金が全額戻ってくるわけではありません。あくまで「いずれ買う予定だったもの」「事業に本当に必要なもの」を、利益の出た年に前倒しで購入する、という順番で考えましょう。年末の購入では、実際に使い始めた日が年内かどうかも確認しておくと安心です。そもそもその支出が事業の経費になるか迷うときは、化粧品・美容代が経費になるかの判断のように、費目ごとの考え方を先に押さえておくとよいでしょう。
共済と少額減価償却の組み合わせ方
「将来の積み立て」と「今年の経費」を両輪で考える
共済制度は将来に向けた積み立てをしながら所得控除を受ける仕組み、少額減価償却の特例は事業に必要な備品をその年の経費に落とす仕組みです。性格が違うからこそ、両方をバランスよく使うことで、利益が出た年の負担をならしやすくなります。
たとえば、利益が大きく伸びた年には、共済の掛金を前納して所得控除を厚くしつつ、買い替え予定だった備品を年内に購入して一括で経費にする、といった組み合わせが考えられます。一方に偏らせず、手元資金とのバランスを見ながら配分することが大切です。
無理のない金額設定が長続きのコツ
節税策は、一度きりではなく毎年続けてこそ効果が積み上がります。所得が増えた年だけ急に大きく動くのではなく、ふだんから少しずつ共済を積み立て、利益が出た年に上乗せや前納で調整する、という流れが理想的です。自分の事業の繁閑や所得の波を踏まえ、続けられる範囲の金額から始めましょう。
記帳がそろっていないと判断できない
どの制度をどれだけ使うべきかは、その年の所得の見込みがわからなければ判断できません。年末になって慌てて集計するのではなく、日々の記帳をこまめに行い、早い段階で利益の着地点を把握しておくことが、前倒し節税の土台になります。帳簿が整っていれば、12月の早い時期に「今年はこのくらい対策しておこう」と落ち着いて検討できます。記帳代行の現場でも、利益が伸びた年ほど「何をいつ払えばよかったのか」を年明けに悔やむご相談が増えます。その土台となる記帳に手が回らないなら、記帳を代行してもらう方法で数字の把握を前倒しする手もあります。
よくある質問
Q. 所得が増えた年に小規模企業共済を始めれば、その年から控除を受けられますか?
その年のうちに加入し、掛金を支払っていれば、支払った掛金はその年の所得控除の対象になります。前納の仕組みを使えば翌年分をその年に寄せることもできますが、まずは無理のない掛金から始め、余力に応じて上乗せを検討するのがよいでしょう。詳しい要件や上限は、制度を運営する機関の案内で最新の内容を確認してください。
Q. 30万円未満の特例は、何台でも好きなだけ使えますか?
いいえ、1年間に特例で経費にできる金額には合計の上限があります。1点あたりが30万円未満であっても、合計額が上限を超えた分は通常の減価償却の対象になります。複数の備品を購入する予定があるときは、どれを特例に充てるかを年内に整理しておくと安心です。なお、この特例は青色申告をしていることなど一定の要件が前提です。
Q. 利益が出た年に高額な機械を買えば、全額その年の経費になりますか?
金額が大きい資産は、原則として減価償却によって複数年に分けて経費にします。30万円未満の特例の範囲を超える機械などは、その年に全額を経費にすることはできません。高額な設備投資には別の優遇制度が用意されている場合もあるため、大きな買い物を考えているときは、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
利益が出た年こそ、落ち着いて前倒しを
所得が増えた翌年は、住民税や国民健康保険料、予定納税といった負担がまとめて重くなりがちです。だからこそ、利益が出た年のうちに、小規模企業共済などの共済制度で将来に向けた積み立てを前倒ししつつ、少額減価償却資産の特例で必要な備品を計画的に経費にしておくことが、負担をならす鍵になります。どちらも「いずれ必要になるお金を、税率の高い年に寄せる」という発想が共通点です。
どの制度をどれだけ使うべきかは、その年の所得の見込みが見えていなければ判断できません。本業をこなしながら、日々の記帳から申告、そして節税のタイミングの見極めまで一人で背負うと、気づけば年末で打てる手が限られていた、ということも起こりがちです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








