自家用の資産を事業に転用したときの節税|未償却残高の引き継ぎを解説
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税金

自家用の車やパソコンを事業に転用すると、減価償却を通じて経費に取り込め、新たな出費なしで節税につながります。その出発点となる「未償却残高」の考え方と計算の流れを、初心者にもわかるように整理して解説します。
個人事業主やフリーランスとして開業する前から、自家用車や自宅のパソコンなど、それなりに価値のあるものを持っていた方は多いはずです。いざ事業を始めてみると「このパソコン、仕事でも使っているのに経費にならないのはもったいないのでは?」と感じる場面が出てきます。けれども、買った当時のレシートはとっくに処分してしまい、何から手をつければよいのか戸惑ってしまうものです。
☑ もともと自分用に買った車やパソコンを、開業してから仕事でも使うようになった
☑ 事業用に転用した資産を経費にできるのか、できるとしていくらなのかがわからない
☑ 「未償却残高」という言葉を見かけたものの、自分の場合いくらで計算すればよいのか迷っている
以下では、自家用の資産を事業に転用したときに、どのように経費(減価償却費)として取り込めるのか、その出発点となる「未償却残高」の考え方と計算の流れを順に見ていきます。手元の資産を事業に活かして節税につなげるイメージがつかめるようになります。
取得価額の根拠集めや減価償却の計算まで任せたいときは、日々の記帳を支える記帳代行という方法もあります。まずは事業転用の考え方から確認しましょう。
自家用資産の「事業転用」とは何か
プライベートで使っていたものを事業用に切り替えること
事業転用とは、もともと自分用(家事用)として持っていた資産を、開業などをきっかけに事業でも使うようになり、税務上の扱いを事業用に切り替えることをいいます。たとえば、独立前に自分のお金で買った乗用車を、開業後は得意先回りに使うようになったケースが典型です。
このとき大切なのは、買ったときに払った金額そのものを、転用したその年に一括で経費にできるわけではないという点です。買ってから転用するまでの間に、その資産は少しずつ価値が目減りしている、と税務上は考えます。経費にできるのは、あくまで「事業で使い始めた時点で残っている価値」を出発点とした金額です。
なぜ転用が節税につながるのか
自家用資産を事業に転用すると、その資産は減価償却を通じて少しずつ経費に計上できるようになります。経費が増えれば、その分だけ事業所得が小さくなり、結果として所得税や住民税の負担を抑えることが期待できます。すでに自分の手元にあるものを活かせるので、新たな出費をせずに経費を作れる点が魅力です。
ただし、事業でもプライベートでも使う資産の場合は、使っている割合に応じて経費にできる部分が限られます。全額が経費になるとは限らない、という前提を最初に押さえておきましょう。
減価償却と「未償却残高」の基本
減価償却は価値の目減りを経費にする仕組み
車やパソコン、機械などのように、何年も使える高額なものは、買った年に全額を経費にするのではなく、使える年数(耐用年数)にわたって少しずつ経費にしていきます。この仕組みが減価償却です(減価償却の基本は国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます)。建物や車両など、資産の種類ごとに耐用年数が法律で定められています。
一方で、おおむね10万円未満のものや使用可能期間が1年未満のものは、減価償却の対象ではなく、買った年にそのまま経費にできます。まずは「高額で長く使うもの=減価償却の対象」というイメージを持っておくとわかりやすいです。
未償却残高とは「まだ経費にしていない残りの価値」
未償却残高とは、その資産の取得価額(買ったときの金額)から、これまでに減価償却で経費にしてきた分を差し引いた、まだ経費にしていない残りの価値のことです。帳簿の上での「今の価値」と考えるとイメージしやすいでしょう。
自家用資産を事業に転用する場合、この未償却残高が、事業用として減価償却を続けていくときの出発点(帳簿価額)になります。つまり、転用時点でいくら残っているのかを計算することが、節税額を左右する最初のステップになるのです。
事業に使っていなかった期間も価値は目減りする
ここで多くの方が疑問に思うのが、「事業で使っていなかった間も価値が減るのか」という点です。答えは、税務上は減るものとして扱います。プライベートで使っていた期間についても、価値の目減り分を計算したうえで、転用時点の未償却残高を求める決まりになっています。
この「使っていなかった期間の目減り」を計算するときの考え方が、後ほど説明する独特のルールです。事業用の通常の減価償却とは少し違う計算になる点が、つまずきやすいところです。
転用時の未償却残高の計算の流れ
ステップ1:取得価額と取得時期を確認する
まずは、その資産をいつ、いくらで買ったのかを確認します。取得価額には、本体価格だけでなく、購入のためにかかった付随費用も含めて考えるのが原則です。古い資産で正確な金額がわからない場合は、購入時の契約書や明細、メーカーの記録など、合理的に説明できる資料をできる限り探しましょう。
領収書が残っていなくても、ローンの契約書やクレジットカードの明細、通帳の記録などから取得価額をたどれることがあります。あいまいなまま金額を決めてしまうと、後から指摘を受けたときに説明できなくなるため、根拠となる資料をそろえておくことが大切です。
ステップ2:家事用だった期間の目減りを計算する
次に、買ってから事業に転用するまでの期間について、価値の目減り分を計算します。この家事用期間の計算では、その資産の本来の耐用年数の1.5倍にあたる年数を使い、定額法に近い考え方で目減り分を求めるという独特のルールがあります。事業用として毎年計上する通常の減価償却よりも、ゆっくり価値が減っていく形になるのが特徴です。
経過年数の数え方には端数の扱いなど細かな決まりがあり、ケースによって変わります。考え方としては「家事用だった期間が長いほど目減り分も大きくなり、その分だけ転用時に残っている価値(未償却残高)は小さくなる」と理解しておけば十分です。
ステップ3:転用時の未償却残高を確定する
取得価額から、家事用期間の目減り分を差し引いた金額が、転用時点の未償却残高です。この金額が、事業用資産として帳簿に載せる最初の価額になります。転用した年以降は、この未償却残高を出発点として、その資産の耐用年数に応じた通常の減価償却を行っていきます。
取得価額:買ったときの金額(付随費用を含む)
家事用期間の目減り:耐用年数の1.5倍を使って計算した価値の減少分
転用時の未償却残高:取得価額から目減り分を引いた残りの価値
計算式や端数処理は資産の種類や経過年数によって異なります。金額が大きい資産や、計算に自信が持てない場合は、税理士などの専門家に確認しながら進めると安心です。
家事按分と帳簿づけの注意点
事業とプライベート兼用なら「家事按分」が必要
転用した資産を事業だけに使うとは限りません。車やパソコンのように、仕事にもプライベートにも使う場合は、事業で使っている割合の分だけを経費にできます。これを家事按分といいます。たとえば、ある年の減価償却費が計算上10万円で、事業に使っている割合が6割であれば、経費にできるのはそのうちの6割分です。車を事業とプライベートで使う場合の按分や買い替えは車の事業按分と買い替えで詳しく解説しています。
按分の割合は、走行距離や使用日数、使用時間など、実態に合った合理的な基準で決めます(割合の決め方は家事按分の割合の決め方を参照)。なんとなくで決めるのではなく、「なぜその割合なのか」を後から説明できるようにしておくことが大切です。
帳簿には「事業に使い始めた日」を起点に記録する
事業用に転用した資産は、固定資産として帳簿(固定資産台帳など)に記録します。記録するのは、転用時の未償却残高、耐用年数、事業に使い始めた日などです。減価償却費は、原則として事業に使い始めた月から月割りで計算する点にも注意しましょう。資産を期間にわたって費用化する考え方は繰延資産の償却も参考になります。
青色申告で帳簿をきちんと整えておくことは、最大65万円の青色申告特別控除を受けるうえでも欠かせません。資産の転用にあわせて、固定資産台帳の整備も進めておくと、申告全体がスムーズになります。
少額の資産は減価償却が不要なこともある
転用しようとしている資産が、取得価額のおおむね10万円未満のものであれば、そもそも減価償却の対象ではありません。この場合は未償却残高という考え方自体が登場せず、別の扱いになります。手元の資産が高額なものなのか、少額なものなのかをまず見分けることが、計算の入り口になります。
よくある質問
Q. 買ったときの領収書を捨ててしまいました。経費にできませんか?
領収書がなくても、取得価額を合理的に説明できる資料があれば、減価償却を行える場合があります。ローンの契約書やクレジットカードの明細、通帳の出金記録、購入時のメールやメーカーの保証書など、金額と時期がわかるものを探してみましょう。どうしても根拠が見つからない場合は、自己判断で金額を決めず、専門家に相談することをおすすめします。
Q. 中古で買った資産を転用する場合も、同じ計算になりますか?
取得価額から家事用期間の目減りを差し引いて未償却残高を求める、という基本の流れは同じです。ただし、転用後の事業用の減価償却で使う耐用年数については、新品とは異なる中古資産特有の見積もり方があります。中古品を転用するケースは計算が複雑になりやすいので、慎重に確認しながら進めましょう。
Q. 何年も前に買った古いものでも、転用して経費にできますか?
古い資産でも、買ってからの期間が耐用年数の1.5倍を超えていなければ、転用時点で未償却残高が残っている可能性があります。一方で、相当な年数が経っている場合は、残っている価値がごくわずかになっていることもあります。まずは取得価額と取得時期を確認し、計算上いくら残るのかを見てから判断するとよいでしょう。
手元の資産を活かして無理なく節税|まとめ
自家用の資産を事業に転用する節税は、「取得価額を確認する」「家事用期間の目減りを計算して未償却残高を求める」「事業に使い始めた日を起点に減価償却し、必要なら家事按分する」という流れで進めます。すでに持っているものを活かせるため、新たな出費なしで経費を作れるのが大きな利点です。一方で、家事用期間の独特な計算や中古資産の耐用年数など、つまずきやすいポイントもあります。
とはいえ、本業が忙しい中で、取得価額の根拠を集め、減価償却を計算し、帳簿づけから確定申告書類の作成までをすべて自分で行うのは、大きな負担になりがちです。計算を一つ間違えると、節税できるはずの金額を取りこぼしたり、逆に過大な経費を計上してしまったりするおそれもあります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








