事業資金を家族から贈与で受けるときの贈与税と節税の注意点を解説
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税金

家族から事業資金をもらうと、年間110万円を超えた部分に贈与税がかかることがあります。贈与・借入・出資の違いと、借入として認めてもらう条件、そして合法的に税負担を抑えるための注意点を、記録の残し方まで含めて整理します。
個人事業を始めるとき、あるいは資金繰りが苦しくなったとき、親や配偶者など家族からまとまったお金を出してもらうことは珍しくありません。ところが、その「家族からのお金」が贈与とみなされると、思わぬ贈与税が発生したり、後から税務署に指摘されたりすることがあります。家族同士のやり取りだからこそ、書面も残さず曖昧なまま進めてしまいがちな点が落とし穴です。
☑ 親や配偶者から事業の元手を出してもらったが、贈与税がかかるのか不安だ
☑ 「もらった」のか「借りた」のか曖昧なまま、お金を事業用口座に入れてしまった
☑ 家族からの援助を上手に活かして、できるだけ税負担を抑える方法を知りたい
事業資金を家族から贈与で受けるときの贈与税の基本と、贈与・借入・出資の違い、そして合法的に税負担を抑えるための注意点を見ていきます。「もらう」「借りる」をどう整理し、どんな記録を残せばよいかがイメージできるようになります。
家族からの事業資金にかかる贈与税の基本
そもそも贈与税とは
贈与税は、個人から財産を無償でもらったときにかかる税金です。親や配偶者、祖父母といった家族からお金を受け取った場合でも、それが「無償でもらったもの」であれば原則として贈与税の対象になります。「家族間だから非課税」というわけではない、という点をまず押さえておきましょう。
事業資金として受け取ったお金であっても、返す約束のない援助であれば、税務上は生活費の援助などと同じく贈与として扱われます。「事業のためだから大丈夫」という理屈は通用しないため、後述する借入や出資との違いをしっかり区別することが大切です。
年間110万円の基礎控除(暦年課税)
贈与税には、受け取る側1人につき1年間で110万円までの基礎控除があります(暦年課税の場合)。1月1日から12月31日までの1年間に、すべての人から受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も原則不要です。
たとえば開業資金として親から100万円を受け取り、その年に他の贈与がなければ、基礎控除の範囲内なので贈与税は発生しません。一方、同じ年に親から80万円、祖父母から80万円を受け取った場合は、合計160万円のうち110万円を超えた部分が課税対象になります。「110万円は贈与する人ごとではなく、もらう人ごとの合計で判定する」という点を勘違いしないようにしましょう。
110万円を超えたら申告が必要
1年間に受け取った贈与の合計が110万円を超えた場合は、超えた部分に対して贈与税がかかり、贈与を受けた翌年に贈与税の申告と納税が必要になります。贈与税の申告期間は、原則として贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までで、所得税の確定申告の時期とおおむね重なります。
税率は金額が大きくなるほど高くなる仕組みで、親や祖父母などからの贈与と、それ以外からの贈与で適用される税率が異なります。具体的な税率は国税庁の速算表で確認できますが、まとまった金額を一度に受け取ると負担が重くなりやすい、という傾向をつかんでおきましょう。
「贈与」「借入」「出資」をきちんと区別する
もらうのか、借りるのかで税金が変わる
家族から受け取る事業資金は、大きく分けて贈与(もらう)と借入(借りる)の2つに整理できます。返す約束のないお金は贈与、返済する約束のあるお金は借入です。この違いによって、かかる税金がまったく変わってきます。
贈与の場合:年間110万円を超えた部分に贈与税がかかる可能性がある
借入の場合:借りたお金そのものには贈与税はかからない(返す前提のため)
つまり、同じ家族からの300万円でも、「もらった」と整理すれば贈与税の対象になり得るのに対し、「借りた」と整理すれば原則として贈与税はかかりません。ただし、借入として認めてもらうには後述する条件を満たす必要があります。
「ある時払い・出世払い」は贈与とみなされやすい
家族間の貸し借りでありがちなのが、「返せるときに返せばいい」「儲かったら返す」といった、返済の時期も金額も決めていないパターンです。こうした「ある時払いの催促なし」の貸し借りは、実態として返済の意思や予定がないと判断され、贈与とみなされやすくなります。
借入として扱ってもらうためには、いつ・いくらずつ・どのように返すのかを明確に決めておくことが欠かせません。口約束だけでは、後から税務署に「実質は贈与ではないか」と指摘されたときに反論しづらくなります。
事業用口座に入れる前に性格をはっきりさせる
受け取ったお金を深く考えずに事業用口座へ入金してしまうと、贈与なのか借入なのか性格が曖昧になり、帳簿上の処理にも迷いが生じます。遅くとも入金時点で「これは贈与なのか、借入なのか」をはっきりさせ、それに応じて記録を残すことが、後々のトラブルを防ぐ第一歩です。借入であれば帳簿上は負債(借入金)として、贈与であれば事業とは切り離した個人の資金として整理するのが基本です。
受け取ったお金が贈与か借入かで、帳簿上の処理は変わります。資金の記録から日々の記帳まで任せたいときは、資金の記録から任せられる記帳代行という手もあります。
借入として認めてもらうための注意点
金銭消費貸借契約書を作る
家族からの資金を借入として扱いたい場合は、たとえ親子・夫婦であっても金銭消費貸借契約書(借用書)を作成しておくのが基本です。第三者から借りるときと同じように、書面で条件を残すことで「返す約束のあるお金=借入」であることを客観的に示せます。契約書に盛り込みたい主な項目は次のとおりです。
貸主・借主の氏名と住所
借入金額と借入日
返済方法(毎月いくらずつ、いつまでに)
利息の有無と利率
契約日と署名・押印
契約書があるかないかで、税務署に対する説得力は大きく変わります。家族だから不要、と考えず、きちんと作っておきましょう。
実際に返済し、記録を残す
契約書を作っても、実際に返済が行われていなければ「形だけの契約ではないか」と疑われかねません。決めた返済予定に沿って、銀行振込など記録に残る方法で返済することが重要です。手渡しの現金返済は記録が残らず、返済の事実を証明しづらくなります。借入金額・返済額・残高がわかるように、通帳の履歴や帳簿で経緯を追えるようにしておきましょう。
利息をどう扱うか
家族からの借入では「無利息でいい」とすることも多いですが、本来かかるべき利息を免除してもらった分が利益とみなされる考え方もあります。とはいえ、少額・短期の借入であれば実務上問題になりにくいケースが大半です。金額が大きい場合や判断に迷う場合は、利息を付けるかどうかも含めて、早めに税理士などの専門家に相談すると安心です。
家族からの援助を活かした節税の考え方
暦年贈与を計画的に使う
年間110万円の基礎控除を活かし、複数年に分けて少しずつ援助を受ける方法は、贈与税を抑えながら家族の資金を事業に役立てる王道の考え方です。たとえば毎年の開業準備資金や運転資金を、無理のない範囲で計画的に受け取っていくイメージです。
ただし、「毎年110万円を10年間贈与する」とあらかじめ約束していたとみなされると、初年度にまとめて贈与する取り決めがあったと判断されるおそれがあります。毎年その都度の判断で贈与する形を取り、贈与の記録(贈与契約書や振込履歴)を年ごとに残しておくことが、余計な指摘を避けるポイントです。
受け取った資金を含めて手取り全体をどう最大化するかは、手取りを最大化する個人事業主の控除で控除の効く順番を整理できます。売上が落ち込む年に備えを崩さず節税する考え方は、売上が落ちた年に備えを崩さず節税する考え方も知っておくと安心です。
使える非課税制度を確認する
贈与税には、状況に応じて使える特例的な非課税制度や課税方式があります。代表的なものとして、一定の要件のもとで贈与時の税負担を抑えられる相続時精算課税制度や、住宅取得・教育・結婚子育てに関する贈与の非課税制度などが挙げられます。
これらは適用できる目的や金額、要件が細かく定められており、年度によって内容が見直されることもあります。事業資金にそのまま使えるとは限らないため、「自分のケースで使える制度があるか」を、最新の情報をもとに確認することが大切です。細かな数値や期限は変わり得るので、断定的に覚えるより、その都度調べる姿勢が安全です。支出のタイミングを工夫して税負担をならす方法としては、短期前払費用で節税する具体例のようなやり方もあります。
配偶者への支払いとの違いを理解する
家族からの援助とよく混同されるのが、家族に働いてもらってその対価を支払うケースです。たとえば配偶者や親族に事業を手伝ってもらい、青色事業専従者給与などの形で支払う場合は、贈与ではなく事業の必要経費として扱える可能性があります。「お金をもらう(贈与)」のか「働いてもらって対価を払う(経費)」のかは、税務上まったく別の話です。混同せず、それぞれの要件に沿って整理しましょう。
配偶者や親族に支払う青色事業専従者給与の要件は、国税庁タックスアンサー「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」で確認できます。
よくある質問
Q. 親から開業資金として100万円もらいました。申告は必要ですか?
その年に受け取った贈与が100万円のみで、他に贈与がなければ、年間110万円の基礎控除の範囲内なので贈与税はかからず、申告も原則として不要です。ただし、同じ年に別の人からも贈与を受けている場合は合計で判定するため、合算した金額が110万円を超えないかを確認してください。心配な場合は、いつ・誰から・いくら受け取ったかを記録しておくと安心です。
Q. 家族からの借入なら、いくら借りても贈与税はかからないのですか?
返済する約束が実態として存在し、契約書の作成や実際の返済など借入であることを示せる場合は、借りたお金そのものに贈与税はかかりません。一方で、返済の予定も実績もない「名ばかりの借入」は、金額にかかわらず贈与とみなされるおそれがあります。金額の大小よりも、「本当に返す前提のお金か」を客観的に示せるかどうかが分かれ目です。
Q. もらったお金を事業用口座に入れたら、事業の売上として扱うのですか?
いいえ。家族から無償でもらったお金は事業の売上(事業所得)ではなく、個人としての贈与です。事業用口座に入金した場合でも、帳簿上は売上ではなく事業主借などとして処理し、事業の利益とは区別します。借入の場合も売上ではなく借入金(負債)として記録します。いずれにせよ、事業の収入と混同しないことが大切です。
家族からのお金は「性格を決めて記録する」が鉄則
家族から事業資金を受け取るときは、まず「もらう(贈与)」のか「借りる(借入)」のかをはっきりさせ、それぞれに応じた記録を残すことが何より重要です。贈与なら年間110万円の基礎控除を意識し、借入なら契約書の作成と実際の返済を欠かさない。この基本を押さえておけば、後から税務署に指摘されるリスクを大きく減らせます。家族同士だからこそ曖昧にしがちな部分を、あえて書面と記録できちんと固めておくことが、安心して事業を続けるための土台になります。
贈与・借入・経費の線引きや、帳簿上どう処理するかの判断は、慣れていないと迷いやすいものです。本業に集中したい中で、こうした資金まわりの整理まで自分で抱え込むのは、思った以上に手間になります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








