現金主義と発生主義の違い|売上・経費の計上時期をやさしく解説
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税務

現金主義と発生主義の違いは、売上・経費を「お金が動いたとき」に記録するか、「取引が成立したとき」に記録するかの差です。年をまたぐ取引で差が出る理由と、個人事業主の使い分けを具体例で整理します。
「12月に仕事を納品したけれど、入金は翌年の1月だった」。このとき、この売上はどちらの年の収入になるのでしょうか。お金が入った1月だと思った方も多いかもしれません。実はこの判断のもとになっているのが、「現金主義」と「発生主義」という2つの考え方です。名前は少し難しそうですが、中身を知ればそれほど複雑ではなく、どちらの考え方で記帳するかによって確定申告で計上する金額や時期が変わってきます。
☑ 売上や経費を「お金が動いたとき」に記録すればいいと思っている
☑ 現金主義・発生主義という言葉を聞いたことはあるが、違いが分からない
☑ どちらのルールで記帳すればいいのか、自分のケースが判断できない
現金主義とは何か
現金主義とは、その名のとおり「実際にお金が動いたタイミング」で売上や経費を記録する考え方です。シンプルで直感的なため、お小遣い帳や家計簿に近い感覚といえます。
お金の出入りを基準にする
現金主義では、入金があった日に売上を計上し、支払いをした日に経費を計上します。たとえば商品を売って12月に納品しても、入金が1月なら、その売上は1月の収入として記録します。
メリットと向いている人
現金主義の良いところは、なんといってもわかりやすさです。通帳や現金の動きをそのまま記録すればよいため、簿記の知識が少ない方でも取り組みやすいといえます。一方で、後ほど触れますが、利用するには一定の条件があります。
現金主義の弱点
分かりやすい反面、現金主義には弱点もあります。入金や支払いの時期に売上・経費が左右されるため、「忙しく働いた月なのに、入金が翌月だから帳簿上は売上ゼロ」といったことが起こります。その期間に実際どれだけ稼いだのかが見えにくく、経営判断の材料としては物足りない面があるのです。
発生主義とは何か
発生主義とは、お金の動きではなく「取引が成立したタイミング」で売上や経費を記録する考え方です。会計のルールとしては、こちらが基本とされています。
取引が成立したときに記録する
発生主義では、実際の入金や支払いがまだでも、売上が確定した時点・費用が発生した時点で計上します。先ほどの例なら、12月に納品して売上が確定しているので、入金が1月でも12月の売上として記録します。
なぜ発生主義が基本なのか
発生主義のほうが、その期間に「実際にどれだけ稼ぎ、どれだけ費用がかかったか」を正確に表せるからです。お金の入金時期は取引先の都合などでずれることが多く、それに左右されると本当の業績が見えにくくなります。発生主義なら、売上と、それにかかった経費を同じ時期に対応させて把握できます。計上時期の取り違えは、帳簿づけでよくある間違い10選でも代表例として挙げられています。
2つの違いを具体例で比べる
言葉だけでは分かりにくいので、同じ取引を2つの考え方で並べてみましょう。違いがはっきり見えてきます。
売上のケース
12月に10万円分の仕事を納品し、入金が翌年1月だった場合を考えます。
現金主義 … 入金された1月に10万円を計上
発生主義 … 納品した12月に10万円を計上
経費のケース
12月に商品を仕入れ、その代金を翌年1月に支払った場合も同じように分かれます。
現金主義 … 支払った1月に経費を計上
発生主義 … 仕入れた12月に経費を計上
このように、年をまたぐ取引では、どちらの考え方を採るかで計上する年度が変わります。これが、確定申告での所得金額の違いにつながっていくのです。
年の途中では結果が変わらないことも
注意したいのは、年の途中で完結する取引であれば、どちらの考え方でも最終的な計上年は変わらないという点です。たとえば3月に納品して4月に入金された取引は、現金主義でも発生主義でも同じ年の売上になります。違いがはっきり出るのは、あくまで12月と1月のように年をまたぐ取引です。だからこそ、年末年始の処理は特に丁寧に確認する必要があります。
個人事業主はどちらを使うべきか
結論からいえば、原則は発生主義です。ただし、一定の条件を満たせば現金主義を選べる特例もあります。
原則は発生主義
個人事業主の確定申告では、発生主義による記帳が基本となります。とくに青色申告で65万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記による正確な帳簿が求められ、発生主義での記帳が前提になります。
現金主義が認められる場合
小規模な事業者については、事前に届け出を行うことで現金主義による記帳が認められる特例があります。ただし対象には所得金額などの条件があり、この特例を使う場合は青色申告特別控除の金額にも影響します。現金主義による記帳の特例や青色申告制度の内容は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。自分が条件に当てはまるか、特例を使うべきかどうかは、最新情報もあわせてご確認ください。
迷ったら発生主義で揃えておく
どちらにすべきか迷う場合は、原則どおり発生主義で記帳しておくのが無難です。会計ソフトの多くは発生主義を前提に作られており、控除の面でも有利になりやすいためです。計上時期の判断ごと任せたいときは、確定申告までまとめて任せる方法もあります。
発生主義で記帳するときのポイント
発生主義は「取引が起きたとき」に記録するため、入金や支払いのタイミングとは別に、未回収・未払いの金額を管理する必要があります。最初に仕組みを理解しておけば、難しくはありません。
売掛金・買掛金で「ツケ」を管理する
納品は済んだのにまだ入金されていない金額は「売掛金」、仕入れたのにまだ支払っていない金額は「買掛金」という科目で管理します。売上を計上したときにいったん売掛金として記録し、実際に入金されたら売掛金を消し込む、という流れです。これにより、「誰からいくら回収する予定か」も帳簿で把握できるようになります。もし記帳を間違えてしまったときは、帳簿の修正と訂正の基本で立て直せます。
年末時点の残高を確認する
発生主義では、年末の時点で未回収の売掛金や未払いの買掛金がいくら残っているかを確認しておくことが大切です。これらは取引としてはすでに発生しているため、入金・支払いがまだでもその年の売上・経費に含めます。年末にいったん残高を棚卸しするつもりで見直すと、計上漏れを防げます。
よくある質問
Q. 現金主義と発生主義を年ごとに変えてもいいですか?
基本的には、一度決めた記帳の方法を継続することが大切です。コロコロ変えると年度ごとの比較ができず、帳簿の信頼性も下がります。方法を変える場合は、必要な届け出や条件を確認したうえで行いましょう。
Q. クレジットカードで払った経費はいつ計上しますか?
発生主義では、カードを利用した日(取引が発生した日)に経費を計上するのが原則です。実際に口座から引き落とされる日ではない点に注意しましょう。現金主義の場合は引き落とし日が基準になります。カード払いの経費計上は、クレジットカード明細と領収書の関係でも解説しています。
Q. 簿記が苦手でも発生主義で記帳できますか?
会計ソフトを使えば、日付と内容を入力するだけで発生主義に沿った記帳がしやすくなっています。それでも難しいと感じる場合は、記帳代行を利用して正確な帳簿を整える方法もあります。
結論:基本は「取引が起きたとき」に計上する
現金主義はお金が動いたときに、発生主義は取引が成立したときに、それぞれ売上や経費を記録する考え方です。年をまたぐ取引では計上する年度が変わるため、どちらの考え方かをきちんと意識することが大切です。個人事業主の確定申告は発生主義が原則で、とくに65万円の控除を目指すなら発生主義での記帳が前提になります。最初は少し戸惑うかもしれませんが、ルールを一度理解してしまえば、迷う場面はぐっと減っていきます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








