複数事業をまたぐ共通経費の配賦方法|按分基準の決め方を解説
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税務

複数事業をまたぐ共通経費は、家賃なら使用面積、車なら走行距離、規模で分けるなら売上高というように、費用の使われ方に合った基準で按分するのが原則です。按分基準の決め方と費目別の計算の考え方、そして税務署に説明できる根拠の残し方までを整理していきます。
一人で複数の事業を手がけていると、家賃・水道光熱費・通信費・車両費といった「どの事業のためにも使っている費用」が必ず出てきます。なんとなくの感覚で振り分けてしまい、本当にこれでよいのか不安を感じている方は少なくありません。
☑ 物販と教室業など複数の事業をしているが、家賃や通信費をどう分ければよいかわからない
☑ どの事業の経費に入れるか毎回迷い、なんとなくの感覚で振り分けてしまっている
☑ 共通経費の按分基準を税務署に聞かれたとき、きちんと説明できる自信がない
このコラムでは、複数事業をまたぐ共通経費の配賦(はいふ)について、按分基準の決め方や具体的な計算の考え方、注意したいポイントを整理します。自分の費用をどの基準で、どう分ければよいのか、判断の軸をつかんでいきましょう。
共通経費とは?まず考え方を整理しましょう
「直接経費」と「共通経費」の違い
経費は大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。1つは特定の事業のためだけに使った直接経費、もう1つは複数の事業に共通して使った共通経費です。たとえば物販事業の仕入れは物販だけの直接経費ですが、自宅兼事務所の家賃や1本の携帯電話料金は、複数の事業のためにまたがって使っている共通経費にあたります。
直接経費は迷う余地がほとんどありません。問題になるのは、どの事業にもまたがって発生する共通経費を、どのように各事業へ割り振るかという点です。この割り振りの作業を「配賦」や「按分」と呼びます。
なぜ按分が必要なのか
個人事業主が複数の事業を営む場合、所得税の計算上は事業所得としてまとめて計算するケースが一般的です。それでも按分の考え方が大切なのは、事業に関係のない私的な部分を経費から除く必要があるためです。事業に必要な支出だけが経費になるという原則は、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」で確認できます。とくに自宅家賃や私用と兼用の車両などは、生活費と事業費が混ざりやすく、合理的な基準で事業使用分だけを取り出す作業が欠かせません。生活費と兼用する費用の分け方は家事按分の割合の決め方もあわせて確認しておくと迷いにくくなります。
また、事業ごとの採算を把握したい場合や、青色申告で正確な帳簿を残したい場合にも、共通経費を妥当な基準で分けておくことが役立ちます。「どんぶり勘定」を避けることが、後々の安心につながります。
按分基準の代表的な決め方
面積で分ける(家賃・水道光熱費など)
自宅の一部を事務所や作業場として使っている場合、もっともわかりやすいのが使用面積の割合で按分する方法です。たとえば総床面積のうち事業に使っているスペースが何平方メートルかを測り、その割合を家賃や火災保険料に掛けて事業使用分を計算します。
水道光熱費も、事業で使う部屋の面積割合をベースにすることが多いです。ただし、電気を多く使う作業をしている場合などは、面積だけでなく実態に合わせて調整する考え方もあります。大切なのは、その基準を選んだ理由を自分の言葉で説明できることです。
時間や使用割合で分ける(通信費・電気代など)
携帯電話やインターネットなどの通信費は、面積では分けにくい費用です。こうした費用は、事業で使っている時間や使用割合を基準にすると合理的です。たとえば1日のうち事業の連絡やリサーチに使う時間の割合をもとに、事業使用分の比率を決めます。
複数事業の間でさらに分ける場合も同じ考え方が使えます。たとえば通信費の事業使用分を、それぞれの事業にかけている作業時間の比で振り分けるといった方法です。
売上高や取引件数で分ける
事業ごとの規模に応じて共通経費を分けたいときは、売上高の比率を基準にする方法がよく使われます。たとえば共通の事務用品費や会計ソフト代を、A事業とB事業の売上比で按分するイメージです。売上が大きい事業ほど経費を多く負担する形になり、感覚的にも納得しやすい基準です。
このほか、取引件数や発送件数といった「業務量」を基準にする考え方もあります。物販と受託業のように業態が異なる事業を分ける場合は、売上比よりも業務量比のほうが実態に合うこともあります。
具体的にどう計算する?費目別の考え方
自宅兼事務所の家賃の例
家賃の按分は次の流れで考えます。まず自宅全体のうち事業に使う面積の割合を出し、家賃にその割合を掛けて「事業使用分」を求めます。複数事業を営んでいる場合は、その事業使用分をさらに各事業へ振り分けます。
ステップ1:総床面積に占める事業スペースの割合を計算する
ステップ2:家賃に事業使用割合を掛けて事業全体の家賃を出す
ステップ3:必要に応じて、各事業の使用実態に応じてさらに按分する
たとえば事業使用割合が30%で家賃が月10万円なら、事業使用分は月3万円です。物販と教室業で使うスペースがほぼ同じなら、3万円を均等に1.5万円ずつとする、といった分け方になります。
車両費・ガソリン代の例
1台の車を私用と事業の両方、さらに複数の事業で使っている場合は、走行距離の割合が分かりやすい基準です。事業のための走行距離を記録しておき、総走行距離に占める事業走行分の割合でガソリン代や自動車保険料、減価償却費などを按分します。記録のつけ方に迷うときは車の走行距離の記録と節税が参考になります。仕入れ用と納品用など、事業ごとの走行を区別して記録しておくと、各事業への配賦もしやすくなります。
会計ソフト代・事務用品費の例
会計ソフトや事務用品のように、どの事業にもうっすら関係する費用は、売上比や作業時間比でまとめて按分するのが現実的です。少額の費用を1円単位で厳密に分けることにこだわるより、合理的な基準を1つ決めて一貫して適用するほうが、帳簿全体の整合性を保ちやすくなります。事業ごとに帳簿を見やすくする工夫は勘定科目を事業別に設ける実務にまとめています。
按分で失敗しないための注意点
基準の根拠を残しておく
按分でもっとも大切なのは、その割合をどう決めたかの根拠を記録しておくことです。面積按分なら間取り図や使用スペースのメモ、時間按分なら使用時間の根拠メモ、走行距離按分なら運転記録などです。税務調査などで質問されたとき、「なぜこの割合なのか」を客観的に説明できれば安心です。按分の根拠づくりから記帳まで手が回らないときは、記帳代行に任せる選択肢もあります。
逆に、根拠がまったくなく感覚だけで決めた割合は、説明が難しくなります。計算過程を簡単にメモして保管しておくだけでも、大きな備えになります。
一度決めた基準は継続して使う
按分基準は、毎年コロコロ変えるのではなく、合理的な基準を決めたら継続して使うことが基本です。事業内容が大きく変わって基準が実態に合わなくなった場合は見直してかまいませんが、その際も変更した理由を残しておきましょう。一貫性のある処理は、帳簿の信頼性を高めます。
私的な部分を経費に入れない
共通経費の按分でとくに気をつけたいのが、生活費と事業費の区別です。プライベートでの使用分まで経費に含めてしまうと、後で否認されるリスクがあります。事業との関連性が説明できる範囲にとどめ、私的利用分はきちんと除く意識を持ちましょう。判断に迷う費用は、事業との関係性を一度立ち止まって確認することが大切です。
よくある質問
Q. 按分割合に「これが正解」という決まった数字はありますか?
すべての人に当てはまる決まった数字はありません。家賃なら面積、車なら走行距離というように、その費用の使われ方に最も近い基準を選び、実態に合った割合を自分で算定するのが原則です。大切なのは、誰が見ても納得できる合理的な根拠があることです。
Q. 複数事業の経費をまとめて1つの帳簿につけても問題ありませんか?
個人事業主が複数の事業を営む場合、事業所得としてまとめて計算するのが一般的です。ただし、事業ごとの採算を把握したり、共通経費を妥当に按分したりするためには、費用がどの事業に関係するかを区別して記録しておくと管理がしやすくなります。会計ソフトの補助科目やタグ機能を使って分けておくのもよい方法です。
Q. 按分の計算が複雑で、自分で正しくできているか不安です。
按分は、基準の選び方しだいで判断が難しく感じられる作業です。とくに複数事業をまたぐ共通経費は組み合わせが多く、迷いやすいところです。判断に自信が持てないときは、無理に一人で抱え込まず、記帳代行や税理士などの専門家に相談すると、根拠の整った処理にしやすくなります。
結論|共通経費は合理的な基準と根拠の記録がカギ
複数事業をまたぐ共通経費は、家賃なら面積、車なら走行距離、規模で分けるなら売上比というように、その費用の使われ方に合った基準を選ぶことが出発点です。そして、選んだ基準の根拠を記録し、一度決めたら継続して使うこと、私的利用分を除くことを守れば、按分は決して怖い作業ではありません。
ただ、本業で複数の事業を回しながら、共通経費の按分まで考え、記帳から確定申告まですべて自分で行うのは重くのしかかります。按分の根拠づくりや費目ごとの判断に時間を取られ、本業がおろそかになってしまっては本末転倒です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








