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個人事業主が亡くなったときの事業承継と準...

2026/6/18

個人事業主が亡くなったときの事業承継と準確定申告を解説

  • 確定申告

☑ 親が個人事業主で、亡くなったあとの確定申告をどうすればいいかわからない

☑ 「準確定申告」という言葉を初めて聞いたが、いつまでに何をすればいいのか不安

☑ 事業を引き継ぎたいが、屋号や青色申告、取引先との契約はどうなるのか知りたい

個人事業主の方が亡くなると、残された家族には深い悲しみと同時に、慣れない手続きが一気に押し寄せます。なかでも見落とされがちなのが、亡くなった方の最後の所得税を申告する「準確定申告」と、事業を引き継ぐための「事業承継」の手続きです。期限が短いものもあり、知らないうちに過ぎてしまうこともあります。

この記事では、個人事業主が亡くなったときに相続人がやるべきことを、準確定申告の中身と期限、事業を引き継ぐ場合の届出、引き継がない場合の対応まで、やさしく整理します。慌ただしい時期だからこそ、全体像をつかんで一つずつ進めていきましょう。

個人事業主が亡くなったときにまず確認すること

事業を「引き継ぐ」か「やめる」かを早めに決める

個人事業はあくまで「その人個人」の事業なので、亡くなった時点でいったん区切りがつきます。事業は自動的に相続人へ引き継がれるわけではなく、家族の誰かが新たに個人事業主として同じ事業を始めるのか、それとも事業をたたむのかを決める必要があります。

この判断は、その後に提出する届出の種類や、青色申告を続けられるかどうかにも関わります。取引先や従業員、店舗の賃貸契約などがある場合は影響も大きいため、できるだけ早い段階で方針を固めておきましょう。

確認しておきたい書類とデータ

手続きを進めるうえで、亡くなった方が事業に使っていた資料を集めることが第一歩です。具体的には次のようなものを探しておくと安心です。

  • 前年までの確定申告書の控えと、青色申告決算書や収支内訳書

  • 会計ソフトのデータや帳簿、現金出納帳、通帳

  • 請求書・領収書・契約書などの取引関係の書類

  • 売掛金・買掛金の一覧、未払いの経費がわかるもの

  • 事業用の資産(車両・パソコン・機械など)がわかる資料

これらは準確定申告の作成だけでなく、相続税の計算や事業の引き継ぎにも使います。一カ所にまとめておくと安心です。

準確定申告とは何か

亡くなった方の「最後の確定申告」

準確定申告とは、亡くなった方のその年の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです。通常の確定申告は1年分(1月1日〜12月31日)をまとめて行いますが、年の途中で亡くなった場合は、その年を締めくくる申告を相続人が引き継いで行う、というイメージです。

所得税は本来「本人」が申告するものですが、本人が亡くなっている以上、相続人がその義務を引き継ぎます。事業所得がある個人事業主なら、亡くなった日までの売上や経費を集計して所得を計算します。

前年分が未申告のまま亡くなったケース

たとえば確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)を迎える前、つまり前年分の申告がまだ済んでいない時期に亡くなることもあります。この場合は、前年分の確定申告と、亡くなった年の分の準確定申告の、二つを相続人が行う必要があります。前年分も準確定申告として扱われ、それぞれ期限の考え方が変わるため、どの年の分が残っているかをまず整理しましょう。

準確定申告の期限と手続きの流れ

期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」が原則

準確定申告には、通常の確定申告とは異なる期限があります。原則として、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、申告と納税を行います。通常の確定申告のように「翌年の3月15日まで」ではない点に注意が必要です。

4か月という期間は、各種手続きに追われる時期と重なるため、あっという間に過ぎてしまいます。早めに資料を集めて計算に取りかかり、納税が必要になる場合は資金もあわせて準備しておきましょう。

申告するのは「相続人全員」

準確定申告は、相続人が複数いる場合、原則として全員が連名で行います。実務上は、相続人が連署した付表を添えて提出する形が一般的です。誰か一人が代表して手続きを進めることも多いですが、その場合でも他の相続人の同意や署名が必要になるため、早めに連絡を取り合っておくと安心です。

提出先は、原則として亡くなった方の住所地を管轄する税務署です。

計算で迷いやすいポイント

準確定申告では、所得控除の扱いに通常の申告と違う点があります。たとえば医療費控除や社会保険料控除は、亡くなった日までに支払った分で考えます。配偶者控除や扶養控除などの判定も、亡くなった日の時点の状況で行うのが基本です。

事業所得については、亡くなった日までの売上を計上し、対応する経費を差し引いて計算します。売掛金や買掛金、未払いの経費など、年をまたぐお金の扱いを正しく区切ることがポイントになります。判断に迷う項目が多いので、不安な場合は専門家に相談するのが安心です。

事業を引き継ぐ場合に必要な届出

後継者は「新たな個人事業主」として届け出る

家族が事業を引き継ぐ場合でも、亡くなった方の事業をそのまま名義変更するわけではありません。引き継ぐ人が、新しく個人事業を始める扱いとして「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。あわせて、亡くなった方については廃業の届出が必要になります。つまり「一方で廃業、一方で開業」という形で整理するのが基本です。

屋号は引き継いで使うことができますが、取引先との契約や銀行口座、各種許認可は自動的に引き継がれないものも多くあります。事業の種類によっては許認可の取り直しが必要になることもあるため、業種ごとのルールを確認しておきましょう。

青色申告は引き継がれない点に注意

見落としやすいのが、青色申告の承認は相続では引き継がれないという点です。亡くなった方が青色申告をしていても、後継者がそのまま青色申告できるわけではなく、後継者自身が改めて「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

この申請には提出期限があり、相続によって事業を引き継いだ場合は、亡くなった時期に応じて期限の取り扱いが定められています。期限を過ぎると、その年は青色申告特別控除(最大65万円)などの特典を受けられず、白色申告になってしまうおそれがあります。事業を引き継ぐと決めたら、開業届とあわせて青色申告承認申請書の提出を早めに検討しましょう。

従業員や消費税の手続きも忘れずに

従業員を雇って引き継ぐ場合は、給与支払事務所等の開設届出書など、源泉徴収に関する手続きが必要になります。また、亡くなった方が消費税の課税事業者だった場合や、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていた場合も、その登録は後継者に自動では引き継がれません。引き続きインボイスを発行したいときは、後継者自身が登録の手続きを行う必要があります。

事業を引き継がない場合とその他の注意点

事業をたたむ場合の手続き

事業を引き継がず廃業する場合は、亡くなった方について「廃業届」を提出します。事業用の在庫や設備が残っているときは、その後の処分や売却の扱いも整理が必要です。リース契約や賃貸契約など、毎月発生していた支払いの解約も忘れずに進めましょう。

相続税は準確定申告とは別の手続き

ここまで説明した準確定申告は「亡くなった方の所得税」の話です。これとは別に、財産を相続したことにかかる「相続税」の問題があります。相続税には基礎控除があり、相続財産が一定額以下であれば申告が不要になることもありますが、申告が必要な場合の期限は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」とされています。準確定申告(4か月以内)とは期限が異なるため、混同しないよう整理しておきましょう。

支払った所得税・受け取る還付の扱い

準確定申告で納めた所得税は、相続税を計算するうえで債務として扱われ、逆に還付されるお金があれば相続財産に含めて考えます。このように準確定申告と相続税は内容がつながっているため、両方をあわせて把握しておくと、後の手続きで戸惑いにくくなります。

よくある質問

Q. 準確定申告は必ずしなければならないのですか?

亡くなった方に事業所得などがあり、本来であれば確定申告が必要だったケースでは、相続人が準確定申告を行う必要があります。一方で、もともと申告の必要がない状況だった場合は不要なこともあります。ただし、源泉徴収されていた税金や予定納税があると、準確定申告をすることで還付を受けられる場合もあるため、必要かどうか迷うときは一度確認することをおすすめします。

Q. 相続人が一人もすぐに動けない状況です。期限はどうなりますか?

準確定申告の期限は原則として「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」と決まっており、短いのが特徴です。事情があってすぐに動けない場合でも期限自体は進んでいくため、まずは資料集めだけでも早めに着手し、必要に応じて税務署や専門家に相談するのが安心です。

Q. 事業を引き継いだら、亡くなった親の帳簿はそのまま使えますか?

後継者はあくまで新しい個人事業主としてスタートするため、原則として帳簿は引き継いだ時点から新たに付け始める形になります。ただし、過去の帳簿や取引データは、準確定申告や引き継ぎ後の取引把握のために重要な資料となります。捨てずに保管し、必要に応じて参照できるようにしておきましょう。

まとめ:慌ただしい時期だからこそ手続きの全体像を

個人事業主が亡くなったときは、亡くなった日までの所得を申告する「準確定申告」(原則4か月以内)、事業を引き継ぐ場合の開業届と青色申告承認申請書、引き継がない場合の廃業届、そして別枠の相続税(原則10か月以内)と、期限も中身も異なる手続きが重なります。何から手をつければよいか迷ったら、まずは前年までの申告書や帳簿、通帳といった資料を一カ所に集めることから始めると、全体像が見えてきます。

とはいえ、大切な方を亡くした直後に、慣れない集計や届出を短い期限の中で正確に進めるのは、想像以上に大きな負担です。本業や日々の生活、ほかの相続手続きも並行しながら、亡くなった日までの売上や経費を一つずつ整理し、申告まで仕上げるのは簡単なことではありません。

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