セイノーHD——5年ぶり運賃引き上げ、「2024年問題」を追い風に変える物流大手
西濃運輸を中核とするセイノーホールディングスが、5年ぶりの運賃引き上げや日本郵便との共同運行で「2024年問題」に対応し、2025年3月期に営業利益35.8%増を達成しました。物流大手の戦略から、中小事業者が学べる「適正な価格転嫁」を解説します。
はじめに
トラックのドライバー不足が深刻になり、「荷物を運びたくても運べない」時代が近づいています。時間外労働の上限規制が強化された、いわゆる「2024年問題」は、物流業界に大きな試練をもたらしました。しかし、この逆風を「値上げの好機」ととらえ、しなやかに乗り越えようとしている会社があります。西濃運輸で知られるセイノーホールディングスです。
「カンガルー便」の愛称で親しまれる西濃運輸は、5年ぶりとなる運賃の引き上げに踏み切りました。人手不足という課題を、輸送力の価値を見直す転機に変えようとしているのです。本稿では、その戦略と決算を読み解きながら、あらゆる事業者に通じる「適正な価格転嫁」の考え方を掘り下げます。
1.セイノーHDとは——「特積み」で全国を結ぶ物流網
セイノーホールディングスは、西濃運輸を中核とする物流企業グループです。西濃運輸の主力は「特別積合せ(特積み)」と呼ばれる輸送で、複数の荷主の荷物を一台のトラックにまとめて運ぶ仕組みです。これにより、小口の荷物を効率よく、比較的安く全国へ届けることができます。
全国に張り巡らせた集配と幹線輸送のネットワークこそ、西濃運輸の強みです。この巨大な輸送網を維持するには、多くのドライバーと拠点が必要であり、人手不足の影響を最も受けやすい事業でもあります。だからこそ、輸送力そのものの価値をどう守るかが、経営の要になっています。
2.2025年3月期決算——営業利益35.8%増
2025年3月期の連結決算は、売上高が前の期比17.8%増の5541億円、営業利益が同35.8%増の207億円と、大幅な増益を達成しました。中核の西濃運輸単体でも、売上高3137億円、当期純利益60億円と堅調に推移したと報じられています。
コストが上昇するなかでの増益を支えたのが、後述する運賃改定と効率化の取り組みです。人件費や外注費が増える厳しい環境でも、運ぶことの対価を適正に見直すことで、しっかりと利益を確保しています。
3.5年ぶりの運賃引き上げ——価値に見合う対価を求める
セイノーの戦略の核心が、運賃の引き上げです。西濃運輸は2024年6月から特積み運賃を平均で10〜20%程度引き上げました。運賃改定は2019年以来、実に5年ぶりのことです。例えば名古屋〜福岡間で重量50キロの荷物なら、従来の5140円から15%上がって5920円になるといった具合です。
「2024年問題」でドライバーの労働時間に上限が課され、これまでどおりには運べなくなりました。裏を返せば、それだけ「運べること」の価値が高まったということです。セイノーは、この変化を的確にとらえ、輸送というサービスの価値に見合った価格へと転嫁しました。値上げは顧客離れを招くと敬遠されがちですが、提供する価値をきちんと説明すれば、適正な価格は受け入れられる——その好例といえます。
4.業界の垣根を越えた連携——日本郵便との共同運行
セイノーは、価格の見直しと並行して、輸送の効率化にも取り組んでいます。2024年5月には日本郵便と業務提携を結び、幹線輸送の共同運行を始めました。互いの輸送網を融通し合い、非効率な区間を補完することで、限られた輸送力を有効に使う狙いです。
かつては競合とも言える相手と手を組む——これは、業界全体で輸送力を守らなければ立ち行かないという危機感の表れでもあります。自社だけで抱え込まず、協力できるところは協力する。この柔軟さもまた、逆風を乗り越えるための知恵です。宅配便の分野で改革を進めるヤマトホールディングスの取り組みとあわせて見ると、業界の変化がより立体的に見えてきます。
おわりに——「適正な価格転嫁」は事業を守る力になる
セイノーホールディングスの取り組みが教えてくれるのは、「コストが上がったら、勇気を持って価格に反映する」ことの大切さです。人件費や仕入れ値が上がり続けるなか、値上げをためらって利益を削り続ければ、いずれ事業そのものが立ち行かなくなります。提供する価値を見つめ直し、それに見合った対価を求めることは、決してわがままではなく、事業を守る正当な経営判断です。
とはいえ、適正な価格を判断するには、自社のコストや利益の状態を数字で正確に把握しておく必要があります。日々の記帳が滞っていては、いくらで売れば利益が残るのかさえ見えません。「領収書丸投げドットコム」は、領収書や請求書をお送りいただくだけで記帳を代行し、価格を考えるための土台となる数字を整えます。記帳代行サービスの詳細を、ぜひご覧ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行の実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。




