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日本製紙——紙の需要減少時代に素材・包装...

2026/7/16

日本製紙——紙の需要減少時代に素材・包装へ広げる製紙大手の経営

    はじめに

    「製紙会社」と聞くと、新聞紙やコピー用紙、雑誌を刷るための紙をつくる会社、というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。たしかに日本製紙は、長らく日本の出版文化や情報流通を支えてきた紙の大手メーカーです。けれども、その紙そのものの需要が、いま大きく減り続けているという事実は、意外と知られていないかもしれません。

    スマートフォンの普及で新聞や雑誌を紙で読む人が減り、ペーパーレス化でオフィスから印刷用紙が消えていく。製紙会社にとって、これは事業の土台が静かに崩れていくような出来事です。そんな逆風のなかで、日本製紙は「紙をつくる会社」から「木という資源を使いこなす会社」へと、自らの姿を描き直そうとしています。

    本稿では、日本製紙がどのように歩んできたのか、なぜ転換を迫られたのか、そして紙以外の何に活路を見いだそうとしているのかを、わかりやすく解説していきます。規模の大小を問わず、需要そのものが縮んでいく市場でどう生き残るかという問いは、多くの事業者に通じる学びを含んでいます。

    1.歩み——統合を重ねて育った製紙大手

    日本製紙のルーツは古く、明治期に渋沢栄一らが関わって設立された製紙事業にまでさかのぼるといわれます。日本の近代化とともに、新聞や書籍、教科書を支える紙を供給し、文化と情報の基盤を縁の下で担ってきました。紙は、近代社会を動かす「目に見えないインフラ」のような存在だったのです。

    現在の日本製紙は、複数の製紙会社が統合を重ねて生まれた、国内有数の規模を持つグループです。製紙業は、巨大な工場と設備、そして大量の木材を扱う、いわゆる装置産業です。一つの製紙工場を動かすには莫大な投資が必要で、規模が大きいほど効率よく生産できるという特徴があります。だからこそ業界では再編・統合が繰り返され、日本製紙もその流れのなかで規模を拡大してきました。

    こうして築かれた強みは、大規模な生産設備と、原料となる木材を安定して調達する力です。同社は国内外に広大な社有林を持ち、植林から伐採、そして紙へと加工する一連の流れを自前で握ってきました。木を植え、育て、使い、また植える——この息の長いサイクルを回せることが、製紙大手ならではの底力だといえます。一方で、巨大な設備を抱えるということは、需要が減ったときにその設備が重荷に変わるという裏返しのリスクも、常に背負っているということでもありました。

    2.転機——「紙が売れなくなる」という構造変化

    日本製紙が直面した最大の転機は、特定の事件や不況というより、社会全体の構造変化でした。インターネットとスマートフォンの普及です。

    かつて情報といえば、新聞、雑誌、書籍、そしてオフィスで刷られる大量の書類が中心でした。それらはすべて紙を必要とします。ところが、ニュースはスマホで読むものになり、社内の資料はデータで共有され、契約書すら電子化が進みました。新聞の発行部数は長期的に減り続け、印刷・情報用紙の国内需要も縮小傾向が続いているといわれます。これは景気が回復すれば戻る種類の落ち込みではなく、人々の暮らし方そのものが変わったことによる、後戻りのない減少です。

    製紙会社にとって、これは深刻な問題です。巨大な工場は、フル稼働してこそ採算が合うように設計されています。需要が減れば、工場の一部を止めたり、生産能力そのものを削ったりしなければなりません。実際、製紙各社は採算の悪化した生産設備の停止や縮小に踏み切ってきたと報じられています。長年かけて築いた強みであったはずの「大規模生産」が、需要縮小の局面では、そのまま重い固定費としてのしかかってくる。これは、自社の得意分野が市場の変化で価値を失っていくという、経営にとって最も向き合いにくい種類の課題だといえるでしょう。

    3.強みの再定義——「紙の会社」から「木の会社」へ

    こうした逆風のなかで、日本製紙が取り組んでいるのが、自社の強みのとらえ直しです。同社は近年、自らを単なる製紙会社ではなく、「総合バイオマス企業」といった表現で語るようになってきました。要は、「紙をつくる会社」から「木という再生可能な資源を、紙以外にも幅広く活かす会社」へと、軸足を移そうとしているのです。

    ここで効いてくるのが、長年培ってきた資産です。同社が持つのは、紙を抄く技術だけではありません。木を育てる森林経営のノウハウ木材から繊維やパルプを取り出す技術、そして巨大な工場とそこで働く技術者たち。これらは紙が売れた時代に築いたものですが、視点を変えれば、まったく別の事業にも転用できる「資源を扱う総合力」でもあります。

    木という素材は、地球温暖化対策やプラスチック削減が叫ばれる時代において、むしろ価値が高まっている存在です。育てれば再び生えてくる再生可能な資源であり、燃やしても大気中の二酸化炭素を増やしにくいとされる。石油由来の素材を見直す流れのなかで、「木からつくれるもの」への期待が高まっているのです。日本製紙は、自社の核を「紙という製品」から「木という資源を扱う力」へと定義し直すことで、縮む市場の外側に新しい土俵を見つけようとしているといえます。強みを製品で語るか、能力で語るか——この発想の切り替えこそが、転換の出発点でした。

    4.戦略——素材・包装・エネルギーへの広がり

    では、具体的にどんな分野へ広げようとしているのでしょうか。大きく分けて、いくつかの方向があるといわれます。

    一つめは、包装やパッケージの分野です。脱プラスチックの流れを受けて、プラスチック容器に代わる紙の容器や包装材への注目が高まっています。飲料用の紙容器や、紙でできた包装資材など、「紙だからできること」を改めて掘り起こす動きです。情報を載せるための紙が減る一方で、ものを包み、運び、守るための紙にはまだ伸びる余地がある——そう見立てて、力を入れているわけです。

    二つめは、木材由来の新素材です。なかでも、木の繊維をきわめて細かくほぐした「セルロースナノファイバー」と呼ばれる素材は、軽くて強く、さまざまな用途が期待される次世代素材として研究開発が進められていると報じられています。ほかにも、紙おむつなどに使われる衛生用品分野や、化学品、機能性素材など、木を出発点とした多様な製品づくりに挑んでいます。

    三つめは、エネルギー分野です。製紙工場はもともと、製造工程で出る木くずや黒液(パルプを取り出す際に出る液体)を燃やして自前で電力をまかなってきました。この発電のノウハウと広大な土地を活かし、バイオマス発電などのエネルギー事業にも取り組んでいます。本業で当たり前にやってきたことが、エネルギーが注目される時代に新たな収益源へと姿を変えているのです。本業の周辺に眠っていた資産を、別の事業として立ち上げ直す——日本製紙の戦略は、まさにその積み重ねだといえるでしょう。

    5.課題とリスク——時間との競争

    もっとも、この転換は容易な道ではありません。最大の課題は、時間との競争です。主力である紙の需要は、これからも減り続けると見込まれています。一方で、新素材や新規事業が紙に代わる大きな柱に育つまでには、研究開発にも市場づくりにも長い時間がかかります。減っていく事業と、育っていく事業。その入れ替わりがうまくかみ合わなければ、収益の谷間に苦しむことになりかねません。

    また、製紙業は原材料やエネルギーの価格変動の影響を強く受けます。木材チップや燃料、電力のコストが上がれば、採算は一気に圧迫されます。巨大な装置産業であるがゆえに、コストの一部が動くだけで利益が大きく揺れる構造から、簡単には逃れられません。

    さらに、新たに挑む素材や包装の分野には、化学メーカーや海外勢など、すでに強い競合が数多く存在します。長年「紙の会社」であった日本製紙が、これらの新しい土俵でどこまで存在感を示せるかは、これからの実力次第です。一度きりの方向転換で安泰になるわけではなく、変化に合わせて事業の組み合わせを調整し続けなければならない——この終わりのない作業こそが、需要が縮む市場で戦う企業に課された宿題だといえます。

    おわりに——強みは「製品」ではなく「能力」で考える

    日本製紙の挑戦から、中小企業の経営者や個人事業主が学べることは少なくありません。なかでも大きいのは、自社の強みを「いま売っている製品」ではなく、「その背後にある能力」でとらえ直すという視点です。日本製紙は、紙の需要が減るなかで、自社を「紙の会社」と狭くとらえ続けるのではなく、「木という資源を扱う会社」へと定義を広げました。製品は時代とともに売れなくなることがありますが、その製品を生み出してきた技術や経験、設備や人材は、別の形で生かせる場合があるのです。

    これは、規模の小さな事業者にこそ通じる発想です。長く続けてきた商品やサービスが、市場の変化で売れにくくなることは、どんな業種にも起こり得ます。そのとき、「自分たちは本当は何ができるのか」「これまで培った力を、別の場面でどう生かせるか」を問い直せるかどうかが、次の一手の分かれ目になります。ところが、日々の経理や事務作業に追われていては、自社の強みをじっくり見つめ直し、新しい方向を考える時間など、なかなか取れないのが実情ではないでしょうか。「領収書丸投げドットコム」は、領収書や請求書をまとめてお送りいただくだけで、面倒な記帳作業を代行いたします。事務の負担を手放し、日本製紙が自らの「資源を扱う力」を見つめ直したように、あなたも本業と経営の未来を考える時間を取り戻してみませんか。

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