インボイス経過措置の記帳|免税事業者からの仕入れ8割控除の処理を解説
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税務
☑ インボイスのない免税事業者から仕入れたとき、帳簿にどう書けばよいかわからない
☑ 「8割控除」「経過措置」という言葉は聞くが、実際の仕訳のイメージが湧かない
☑ 経過措置の対象になる仕入れと、ならない仕入れの区別がつかず不安だ
インボイス制度が始まってから、取引先がインボイス(適格請求書)を発行できる事業者かどうかで、仕入れにかかる消費税の扱いが変わるようになりました。特に、登録していない免税事業者から仕入れたときの「経過措置による8割控除」は、言葉の意味はなんとなくわかっても、いざ帳簿に記録する段になると手が止まってしまう方が多いところです。
本記事では、インボイス制度の経過措置(8割控除)とは何かをやさしく整理したうえで、免税事業者からの仕入れを帳簿に記録するときの実務的なポイントを解説します。読み終えるころには、どの仕入れが経過措置の対象になり、帳簿や仕訳でどんな点に気をつければよいかが、ひととおりイメージできるようになります。
そもそも「経過措置の8割控除」とは何でしょうか
インボイスがないと仕入税額控除が原則できない
消費税を納める課税事業者は、売上にかかった消費税から、仕入れや経費にかかった消費税を差し引いて納税額を計算します。この差し引きを仕入税額控除といいます。インボイス制度では、原則としてインボイス(適格請求書)の保存がある仕入れだけが、この仕入税額控除の対象になります。
インボイスを発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」だけです。登録していない免税事業者からの仕入れは、本来であれば仕入税額控除ができなくなり、その分だけ買い手側の納税負担が増えることになります。
急な負担増をやわらげるための経過措置
とはいえ、制度開始と同時に免税事業者からの仕入れがいきなり全額控除できなくなると、買い手にとっても、取引先である免税事業者にとっても影響が大きすぎます。そこで設けられたのが経過措置です。インボイスのない免税事業者からの仕入れであっても、一定の割合までは仕入税額控除を認める、という緩和の仕組みです。
この経過措置には段階があり、制度開始から一定期間は仕入れにかかる消費税相当額の8割、その後の一定期間は5割まで控除できる、という形で割合が下がっていきます。本記事のテーマである「8割控除」は、この経過措置の最初の段階を指しています。
「8割控除」が意味すること
8割控除とは、免税事業者からの仕入れにかかる消費税相当額のうち、8割分を仕入税額控除できる、という意味です。たとえば消費税相当額が1,000円の仕入れであれば、そのうち800円分を控除でき、残りの200円分は控除できず買い手のコストになる、というイメージです。
登録済みの事業者からインボイスをもらった仕入れであれば全額(10割)控除できますので、それと比べると2割分だけ控除が少なくなる、と考えるとわかりやすいでしょう。
経過措置の対象になる仕入れ・ならない仕入れ
対象になるのは「インボイスのない課税仕入れ」
経過措置の対象になるのは、本来であればインボイスが必要なのに、それを受け取れない課税仕入れです。具体的には、登録していない免税事業者や、登録していない個人・事業者から、課税対象となる商品やサービスを仕入れたり経費として支払ったりしたケースが中心になります。
登録していない免税事業者からの商品の仕入れ
登録していない事業者への外注費・業務委託費の支払い
登録の有無が確認できない相手への課税対象の支払い
これらは、インボイスがそろっていれば全額控除できたはずの仕入れですから、経過措置によって8割分の控除が認められる対象となります。
そもそも消費税がかからない取引は対象外
一方で、もともと消費税がかからない取引は、経過措置の8割控除とは関係がありません。たとえば次のようなものです。
給与・賃金の支払い(消費税の課税対象ではありません)
土地の購入や賃料など、非課税とされている取引
海外との一定の取引など、課税対象にならないもの
これらはインボイスの有無を問う以前に消費税の控除対象ではないため、「8割控除をするかどうか」を考える場面ではありません。経過措置はあくまで課税仕入れについての話だと押さえておきましょう。
登録事業者からの仕入れと混同しない
登録済みの適格請求書発行事業者からインボイスをもらった仕入れは、当然ながら全額が控除対象です。経過措置の8割控除は、あくまで「インボイスを受け取れない相手からの課税仕入れ」に限った話です。同じ取引先でも、相手が途中で登録した場合などは扱いが変わりますので、請求書にインボイスの登録番号が記載されているかどうかを、取引のつど確認する習慣が大切になります。
帳簿への記録で押さえておきたいポイント
経過措置の適用には「帳簿の記載」と「請求書等の保存」が必要
経過措置による8割控除を受けるためには、単に仕訳を入れるだけでは足りません。原則として、一定の事項を記載した帳簿と、取引の事実を確認できる請求書や領収書などの書類の両方を保存しておく必要があります。インボイスがない相手からの仕入れだからといって、書類を残さなくてよいわけではない点に注意しましょう。
帳簿には「経過措置の適用である旨」を残す
経過措置を適用する仕入れについては、帳簿に通常の記載事項(取引の相手方、日付、内容、金額など)に加えて、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨がわかるようにしておくことが求められます。会計ソフトでは、税区分や摘要欄を使ってこれを表すのが一般的です。
税区分として「8割控除の経過措置対象」にあたる区分を選ぶ
摘要欄に「経過措置適用」「免税事業者からの仕入れ」などと補足する
取引先がインボイス未登録であることがわかるよう整理しておく
後から見返したときに「これは経過措置の対象だった」とすぐにわかる状態にしておくことが、申告時の集計をスムーズにするコツです。
仕訳のイメージをつかむ
仕訳そのものの形は、通常の仕入れと大きくは変わりません。ポイントは、消費税の扱いとして「8割控除の経過措置対象」という税区分を選ぶことです。たとえば、税込11,000円(うち消費税相当額1,000円)の商品を免税事業者から仕入れた場合、金額自体は11,000円の仕入れとして記録しますが、税区分の指定によって控除できるのは消費税相当額の8割(このケースでは800円相当)として集計される、というイメージです。
残りの2割分は控除できないため、結果として会社や事業のコストとして取り込まれます。会計ソフトの設定によって、この2割分を仕入れ本体に含めて処理するか、別に表示するかといった扱いが分かれますので、お使いのソフトの仕様に合わせて統一しておくと混乱を防げます。
実務でつまずきやすいところと対処法
取引先がインボイス登録しているかの確認漏れ
もっとも多いのが、取引先がインボイスを発行できる登録事業者かどうかを確認しないまま処理してしまうケースです。登録事業者なら全額控除、未登録なら経過措置の8割控除と、扱いが変わりますので、入口の確認がずれると集計全体がずれてしまいます。請求書に登録番号の記載があるかをまず確認し、不明な場合は取引先に確認するのが確実です。
税区分の選択ミス
会計ソフトには、通常の課税仕入れ、経過措置の8割控除対象、控除できない仕入れなど、複数の税区分が用意されています。免税事業者からの仕入れを誤って通常の課税仕入れとして入力してしまうと、本来控除できない2割分まで控除してしまい、消費税の納税額が正しく計算されません。免税事業者からの仕入れは「経過措置対象の区分で入力する」と決めておきましょう。
少額な取引や経費の扱い
日々発生する細かな経費の中にも、免税事業者への支払いが混ざっていることがあります。一件ずつは少額でも、年間で積み上がると消費税の計算に影響します。なお、一定規模以下の事業者については、少額な取引についてインボイスの保存を不要とする特例が設けられている場合がありますが、適用できるかどうかは自社の状況によって異なります。判断に迷うときは、自己流で処理せず専門家に確認するのが安心です。
よくある質問
Q. そもそも自分が消費税の免税事業者なら、8割控除を気にする必要はありますか?
ご自身が消費税を納めない免税事業者であれば、仕入税額控除の計算自体を行いません。そのため、仕入れ先がインボイスを発行できるかどうかや、経過措置の8割控除を意識する必要は基本的にありません。8割控除が問題になるのは、ご自身が消費税を納める課税事業者で、原則的な方法(本則課税)で計算している場合です。
Q. 簡易課税を選んでいる場合も8割控除の処理は必要ですか?
簡易課税は、売上にかかる消費税にあらかじめ決められた割合(みなし仕入率)を掛けて控除額を計算する方法です。実際の仕入れにかかった消費税をもとに計算しないため、仕入れ先がインボイスを発行できるかどうかや、経過措置の8割控除は計算結果に影響しません。どちらの計算方法を選んでいるかで、考え方が大きく変わる点に注意しましょう。
Q. 8割控除の経過措置はいつまで続くのですか?
経過措置は段階的に縮小される予定で、8割控除の期間が終わると、その後は控除できる割合がさらに下がっていくとされています。割合や期間の細かな条件は制度の運用によって変わり得るため、処理の前に最新の取り扱いを確認しておくと安心です。実際の判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:8割控除は「区分して記録する」ことが第一歩
インボイス制度の経過措置による8割控除は、登録していない免税事業者からの課税仕入れについて、消費税相当額の8割を控除できる緩和措置です。実務上は、取引先がインボイスを発行できるかをまず確認し、未登録の相手からの仕入れは経過措置対象の税区分で入力したうえで、帳簿と請求書等をきちんと保存しておくことが基本になります。区分さえ正しくできていれば、仕訳そのものは決して難しいものではありません。
とはいえ、取引先ごとに登録の有無を確認し、税区分を一件ずつ選び分けていく作業は、本業が忙しい個人事業主やフリーランスの方にとって大きな負担になりがちです。判断を誤れば消費税の納税額にも影響するため、神経を使う場面でもあります。記帳から消費税の集計、確定申告まですべてを自分で抱え込むと、肝心の本業に集中できなくなってしまうこともあるでしょう。
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